【大紀元日本5月16日】5月12日に放火された北京天安門城門の毛沢東肖像はすでに同日夜に取り替えられた。米中国問題研究学者・胡平氏は、中国が現在推進している政策は、毛沢東時代とかなりかけ離れているにも係わらず、当局は自らの衰弱した権力の合法性を維持するために、公に毛沢東を否定することを拒んでいると指摘した。一方、中国の労働者たちは毛沢東を偲ぶ形で現政権を批判するケースがあり、当局は正当性を認め取り締まることができないでいるという。
*放火された肖像
AFP通信によると、放火した新疆ウルムチ出身の顧海欧・容疑者(35)は現在失業中で、当日の昼に地元から北京に着いてから天安門広場へ向かったという。一方、新華社は、同容疑者は2006年に精神病院で治療を受けていたと報じた。
現場の目撃者によると、顧・容疑者は当日午後5時46分ごろに大勢の旅行者がいる中、毛沢東肖像の前をうろついていた。容疑者は、突然、物を燃やして肖像に向かって投げつけたという。肖像に火がついて煙が出たが、周辺にいた約100人の警察はすぐに消火に駆けつけたという。新華社によると、警戒にあたっていた警察は容疑者を現場逮捕し、事情聴取を行い、事件の究明を急いでいるという。
1989年の六四天安門事件発生後、中国当局は毎年6月4日前後に天安門広場の警戒を強化し、直訴やデモなどの発生を制御している。
*毛沢東を盾に、権利を主張
中国政治評論家で「北京之春」誌の胡平・総編集長は、中国上層部は何故未だに毛沢東を擁護しているのかについて、次のように分析した。
胡・編集長は「当局は毛沢東のイメージを維持していることは、自らの権力を維持する必要があるからだ。中国当局が今日行っていることは、毛沢東時代とは天地の差の違いがある。毛沢東の多くの主張は、今日の中国の現状からみると、まったく皮肉なものになっているといえよう」と指摘した。
胡・編集長は「しかし、当局は天安門事件後のやり方とは、言動は別々になっている。言論では、公の場での政治発表は、過去に触れないようにしている。なぜなら、中国当局は過去の政権についての合法性に触れれば、ほかの反応を引き起こす可能性があるからだ。当局は、民衆はすでに政府の言葉を信用していないことを知っているが、自らの役柄を演じ続けなければならない状況である」と分析した。
また、「今回のことからみると、当局は自らの政権の合法性に対して非常に敏感であることが分かるし、力がなくなっていることも分かっている。本来、毛沢東に対する批判は大したことではないし、大多数の中国人もそれを受け入れているが、当局上層部はまるで壊れ物を抱えているかように、極めて慎重に、注意深く現状を維持している」と強調した。
*二度目の毛沢東肖像毀損、
毛沢東の肖像は1989年5月23日にすでに毀損されたことがあった。当時は湖南省から来た3人の青年が天安門城門に「5千年専制はここで終止符を打つ。個人の崇拝は今日を持って終焉する」のスローガンを城門に貼り付け、ペンキを毛沢東肖像に目掛けて投げつけた。3人は逮捕され、反革命の罪でそれぞれ処罰され、最長16年の刑を言い渡された。
天安門広場は中国の心臓と呼ばれ、城門に掲げられている毛沢東の肖像は、中国十数億人の心の中の重要な代表像となっている。米ニューヨークに本拠を持つ「ワールド・ジャーナル」紙は、半世紀以来、毛沢東は中国の一部の民衆の中では、依然としてトップに立つ民族英雄であると報じた。
*毛沢東を借りて、現実を批判
前出の胡・編集長は、多くの中国民衆は毛沢東を借りて、当局高官らの腐敗、社会の不公平に対する不満を晴らしていると指摘した。
胡・編集長は「民衆は鐘●(ゾン・クィ)を使い鬼を退治する」。民衆は、毛沢東のイメージを維持し、毛沢東を偲ぶ形で、現政権に対する批判を行っている。中国当局は、このやり方に対して正当性があると見なすため、民衆の批判に対して、取り締まることはしない。当年、東北でリストラされた労働者たちが抗議デモを行ったときに、毛沢東の巨大な肖像画を掲げていたことから、労働者たちを反革命者として扱うことができなかった。一方、89年の民主運動において、天安門広場にいた学生たちは民主を表す女神を立てたから、容易に罪をなすり付けることができた」と分析した。(●=九偏に首)
「また、多くの労働者にとって、毛沢東時代に比べて、何か物足らなく喪失感が強くあり、相当の労働者の生活水準は毛沢東時代に比べよくなったが、相対的に精神的な落差が大きいことから、現在の社会現状に対して、非常に反感を覚えている。しかし、それは、毛沢東時代へ戻りたいことではない」と指摘した。
評論家たちは、天安門事件が発生して今年は18年目を迎えるが、毛沢東肖像放火事件の発生により、当局は天安門広場に対する監視と警戒は一層厳しくなるとみられる。