中国産有害原料問題、世界各地に波及

2007/05/15
更新: 2007/05/15

【大紀元日本5月15日】「世界の工場」となった中国からの輸出が拡大する中、一連の中国産有害原料問題も明るみに出た。これまでに、世界各地で中国産食品による中毒死などの事件が相次ぎ確認された。専門家は、「一連の事件は、国際社会に警鐘を鳴らしたが、状況を改善させなければ、ますます多くの消費者が被害を受ける」と話した。

米国ではこのほど、工業用物質メラミンが含まれていた中国産原料のペットフードを食べた犬や猫が8千匹以上死亡した。調査の結果、中国の業者2社がこの有毒原料を輸出したことが判明。

4月下旬から5月初めに、米国アラバマ州は20種類の中国産ナマズのサンプルを検査した結果、14種類から抗生物質を含有しているのが判明した。そのため、米国当局は販売禁止を命じた。米国大手スーパーのウォルマートのスポークスマンは、「全国のすべてのチェーン店で中国産ナマズを販売中止」と発表した。米国の一部の州は、関連の魚の輸入を禁止すると発令した。

これまでに、欧州連合や香港、日本などの各地においても、えびや、はちみつなどの食品から使用禁止の農薬や、その他の有害化学物質が検出されたために、関連の輸入禁止令が出されていた。

4月27日までに、パナマでは365人の患者が風邪薬を服用して死亡したが、うち100人の死因は、その風邪薬に含まれている偽物グリセリンの有毒化学原料ジグリコールであると確認された。後の調査で、その有毒原料を製造したのは中国企業であることが判明。

米国政府は5月上旬、国内の製薬業界に対し、中国産薬用グリセリンを使用しないよう勧告を出した。同じシロップ状で甘みがある格安の有毒化学原料のジグリコールが使われている恐れがあるためだ。

十年前にハイチではすでに同様の中毒事件が発生し、88人の児童が死亡した。米国食品と薬物管理局の調査員が追跡調査した末、中国東北部・大連市の企業に辿り着いたが、中国当局が米国による現地調査を再三に拒み、当局が1年後に調査を許可したときには、その会社はすでどこかに移転し、記録もすべて処分された。

中国国内においては、状況がさらに深刻である。偽造品や粗悪品による人命にかかわる事件はすでにニュースにはならない。昨年一年間だけでも同様の事件が頻発している。当局が情報を厳しく封鎖しているが、幾つかの事案がネットなどを通じて、暴露されている。

2004年には、安徽省の阜陽地区では数百人の赤ちゃんがまったく栄養成分のない粉ミルクを摂取した結果、頭が異様に大きくなり、極度の栄養失調に陥り、うち死亡が確認されたのが十数人に上る。問題の粉ミルクは、澱粉や、蔗糖などの格安の食品原料で作られていた。現地政府が調査した結果、市場流通されている55種類以上の粉ミルクが不合格で、40社以上の業者が関連しているという。

2006年には、東北部の斉斉哈尓(チチハル)市第二製薬工場が有毒化学物質ジグリコールを「誤用」し、多くの死者を出した事件が発生した。

また、同年、安徽省の華源生物薬業有限会社のブドウ糖注射液が11人以上を死亡させたことも伝えられていた。中国国家食品薬品監督管理局の鄭筱萸・元局長が汚職問題で懲戒免職された後、在任中に販売許可を出した多くの薬の品質には問題があることも判明した。

専門家は、「中国メーカーの食品安全問題は、経済利益を追求する貪欲と無知が結合した結果。中国の食品業者が経済のグローバル化発展の中、コストを最小限に抑えるため、衛生や、安全などの面において、最大限の『知恵』を発揮している。多くの業者が農産物の生産量を増やすことや、畜産物の成長を早めさせること、食品の見た目をよくすることしか考えずに、様々な有害化学物質や、使用禁止の農薬などを濫用している」と指摘した。

香港の生物学研究者、食品安全専門家委員会の委員長・関海山・教授は、中国当局が膨大な数の農家と食品製造業者を完全に監督するのは不可能と指摘し、「メーカーが利潤ばかりを追求し、効率よく金を儲けることしか念頭にない。食品安全への協力体制と知識が極めて乏しい」と分析した。

世界保健機構(WHO)の駐中国代表ベハンウェ氏は、短期間にこのような情況を改善するのが困難との見解を示し、その理由について、中国当局は、混乱に発展したのは、食品製造業と農業を監視・管理する術がないためと分析した。また、同代表は、中国当局の食品安全管理体制が極めて不健全である上、関連の法律も複数ありで、互いに内容が異なるため、食品安全管理を益々困難にさせたとも指摘している。

中国農業大学の教授、栄養と食品安全学部の主任・何継国氏は、「中国の貿易パートナーは、自分たちの食品供給業者は、発展途上国の水準であるのを徐々に気づき始めている。これから、その関連の課題は、中国と貿易パートナー間のもう一つの論争になるのは確実だ」と警鐘を鳴らし、中国産食品の安全水準が他の国との格差が引き続き生じ、摩擦は避けられないとの見方を示した。

その他の産業と同様に、中国の農民と食品メーカーが国外の格安商品への巨大な需要を満たしている。

中国当局の統計データによると、1980年から2005年までに、国内の食品と畜産物の輸出額が290億ドルから2240億ドルに激増した。同時に、中国の貿易パートナーは多くの犠牲を払ってようやく「品質は値段次第」という現実に気づき始めたようだ。