中国共産党と文化大革命

2007/01/03
更新: 2007/01/03

【大紀元日本1月3日】年末のNHK衛星テレビで中国の文化大革命の連続番組を視聴した。登場人物は何れも当時16百万人とも云われる、辺境の農村に下放された上海や北京の学生だった人達が当時を回顧する形式で放映され、所々にその頃の映像が鏤められたものである。登場人物は、その後、戸籍の問題も含め都市にもどれたのか映像の背景にも豊かな中流家庭と思しき室内が写っていた。多分,中国当局の厳しい検閲をパスしたものであろうし、ある程度はその辺の事情を推測しながら視聴したが、それでも文化大革命の実態を彷彿とさせるに十分な話でもあった。

当時の農村の貧困振りは残念ながら今も左程は改善出来てはいないのであろうが、延安地区の粗末なヤオトンに住み、貧しい農民の乏しい食料を更に窮乏させる事になった話、人民公社が悪平等に陥り,農業の生産性が落ちてしまった事、その癖、走資派とされる元の地主階級に対するいわれなき糾弾に毎夜のように駆り出された回顧談等である。文字通り燎原の火のように林立し粗悪な鉄を大量生産した愚行、あの土法と呼ばれた製鉄運動が華やかだった時代の前後の話である。

一方,都市部においては、高級官僚や工場の上級管理職に対する糾弾が続き、工場の生産性が悲惨なまでに低下し更には、夫々の単位で毛主席を守るためと称して人々が二つの派に分かれて争い,あの有名な名門重点大学である北京大学や精華大学においてすらその例外ではなく、夫々研究室や学部の建物を占拠し投石器まで作ってお互いにいがみ合った様子、兵器工場の労働者達が、最初は石や棒で争ったがやがては、兵器まで持ち出し発砲し悲惨な流血の惨事を起こしていた事実、あまつさえ個々の家庭においてすら親子や兄弟親戚の絆迄がズタズタにされ家庭が崩壊することも少なからずあったそうである。しかも恐ろしいことに個々の人民が夫々自分が批判の対象,或いは被害者にならぬよう他人を陥れるのを躊躇する余裕すら失っていった様子が控えめながら語られていた。これこそ恐怖政治であり、小説家であるウエルズが描いた世界ではなかったのか。あの頃、灰燼に帰した貴重な文物が果たしてどれほどあったのだろうか。中国は勿論,人類の誇るべき文化財が大量に破壊されてしまったのだ。それも中国共産党の名のもとに。アフガニスタンの破壊された世界最大級の仏教遺産と同じように。勿論、一級文物こそ保護されていたではあろうが、多くの寺院仏閣を始めとする庶民の周りの貴重な文物や歴史遺産がどれほど失われか。そのような愚行を推奨したのは誰だったのか。どのような組織だったのか。残念ながらそれが中国共産党であった。

一老人の誇大妄想や権力欲、或いは権力闘争がここまで人民大衆を巻き込み,中国の世情を乱し政治経済は勿論、個々の人民の生活や運命を弄び、有能な官僚や経営幹部を苦しめ,恐らくは数千万の中国人を死に至らしめながら、死してまでその遺骸を国家の玄関とも言うべきかの有名な人民広場の廟堂に展示し、紙幣に肖像を印刷し国父として渇仰させる中国共産党とは一体何なのであろうか。事が中国となると腰の引けることで定評のある日本のマスコミですら最早無視出来なくなってきた中国当局による組織的な凶悪犯罪即ち、法輪功の学習者である事を理由に無辜の民を拘束虐待するのみか、あろうことか生きている人間の内臓を抽出する悪行を行い、しかもそれが数万件に及ぶとすれば最早これは人類開闢以来の組織的凶悪犯罪である。年間8万件にも達するという強訴、抗議の類は正しく為政者に対する人民の止むにやまれぬ窮状の発露以外何物でもなかろう。SARSや鳥インフルエンザの情報を隠し、病原菌の拡大を招いたのみか、地大物博を自負して来た広大且つ豊穣な国土を公害や水不足に陥らせ、カンボジアのポルポト政権を援助し、國際社会から人権蹂躪で非難を浴びる北朝鮮政権の延命に寄与し、アフリカ諸国独裁政権への臆面も無い資源外交を推進する中国共産党とはいかなる組織なのか。勿論、国家と個々の人間を同じレベルで評価する愚は避けたいが、マキアベリズムにも程度があろうに。

共産党独裁を標榜した結果、建国後僅か半世紀の間に貪官汚吏をはびこらせ、貴重な国民の財産である国営企業を捨て値で売却し民営化の美名の下に中央、地方の各級官僚や関係者のみを富豪にさせたのは一体どういう組織なのか。おりしも上海閥の粛清に乗り出したとはいうものの、その実態は共産党の宿痾でもある権力闘争の一環、今回も江沢民氏を頂点とする上海閥と現政権の権力闘争に過ぎないのではないのか。中央政府の統制が地方に及ばず既に機能不全に陥っているのも明らかである。軍備の増強にも節度が必要ではないのか。9億の農民の民生福祉改善はこれからだと言うのに。脱党者の潜在的或いは実質的な数値は既に20百万人に達しているのではないのか。どのような組織でも20%を超えるメンバーが大なり小なり抵抗し始めると組織は崩壊に向かうものである。60百万人を超える強固な世界最大の政治組織が壊死し始めているのではなかろうか。それも中央と末端のみならず、その中間迄を含めた全ての段階で。

賞味期限の過ぎた中国共産党が百年一日の如く共産党独裁に固執すれば13億を超え辛抱強い事で定評のある中国人も最早座視しないであろう。過去とは異なり現在の中国では当局の妨害が続くものの次第にインターネットが普及し、中国人の得意とする伝統的な口コミによる情報伝達も健在である。あの悪名高い公安や武装警察隊ではとてもコントロール出来そうもない大河の流れが出来つつある。革命は文字通り「天命改まる」である。さりとて21世紀の現代においては最早革命が銃と血で行われるのは許されない。まして中国は小国ではない上、今や世界の工場でもある。中国発の世界不況を歓迎する国は無い。まして建国後築かれたインフラや資産を毀損するような行動は厳に慎むべきである。北京オリンピックも近い、国威昂揚も大切ではあろうが、何もドイツ第3帝国のベルリンオリンピックを真似る事もなかろう。中国共産党が生き残りたければ民主主義の導入しかない。それも中国式の民主主義という羊頭狗肉ではなくまともな民主主義しかない事は万人の認める事実ではないか。事態は切迫している、一刻の躊躇も許されまい。為政者として中国13億の民と共産党と何れが大切なのか。「共産党が無ければ中国はない」と言う歌があったが、共産党独裁が無ければ中国はより発展するのではなかろうか。為政者自らが現状をドグマという色眼鏡を通さず直視すれば、自ずから活路が開けるだろうに。ともあれ、文化大革命と言う人類未曾有の惨事であった10年間の愚行を隠し、恰も革命の避けて通れぬ課程であったかのごとく総括し、天安門事件を暴乱と規定する限り中国共産党の凋落は時間の問題であろう。