【大紀元日本10月28日】中国最大の銀行・中国工商銀行(ICBC)は香港株式市場での新規株式公開(IPO)で、機関投資家向けの応募期間は10月中旬に終了し、10月末に上海および香港で同時に販売することによって、A+H株上場パターンを完成させる見込みである。今回の株式公開は反響がよく、210億米ドル(約249兆9000億円)の応募金額は史上最高記録であった。しかし、夢を見る投資家らは重要な事実を見落としている。それは、中国の多くの銀行が資金を濫用し、不良債権が山積みになっていることである。海外のアナリストらは、次に中国銀行の不良債権を処理する時は、外資系が担わざるを得ないと分析している。
インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙コラムニストのフィリップ・バウリング氏は、10月24日に発表した文章で、中国工商銀行の上場における新記録には幾つかの原因があると分析した。まずは、西側社会は中国に対する期待感を抱いていること。次いでは、米国の巨大な赤字による国際流動資産の増加に伴い、中国に対する信用度の増加。3つ目は、国際社会が中国企業における将来的営利に対して幻想を抱いていると指摘した。
しかし、一部の専門家も製品価格の停滞および労働工賃や原料費の高騰に直面している中国企業は、これまでの高利潤を保っていることに疑問を感じ始めた。中国に対する高い資本投資率(キャピタル・インベストメント)があるなら、唯一現状を説明できるのがこれらの資本は有効に利用されていないことである。これまでに中国と同様に高いGDP増加率を経験した日本、韓国および台湾が当時の投資率(インベストメント・レート)は現在の中国が持っているものに比べ相対的に低かった。
このことから、中国企業の成長はまちまちであると考えられ、一部の企業は需要および価格のバランスで高い利益を得ているが、反対に、生産およびコストの増加によって、競争に勝てなかった一部の企業はすでに倒産しているのである。
中国マクロ経済数値は当てにならないため、中国企業に対する研究はさらに難しくなっているが、諸説を総合すれば、銀行利潤および信用度の増加に結びつけることができるかも知れない。しかし、仮にこの説明が本当であっても、中国銀行の前期貸付期間で、発表された20%を超過している不良債権率について、現在の5%成長から2桁成長へ持っていける保障もないのである。また、過去2年間、中国の多くの銀行は憚るなく資本を濫用していたことが追い討ちをかけるとみられている。
このことから、中国国民の総生産の成長は国有銀行の利潤下降と必然的な関係にあると明らかで、国際社会は、中国銀行に対する評価を見直すべきである。
ニューヨーク・タイムズは10月12日に、中国工商銀行の香港上場に対して、一部の海外投資家は確かに熱を上げているが、シカゴ大学商学院エコノミストのアニル・カシャプ教授およびトロント大学経済学者ウェンディ・ドブソン氏の研究によると、中国銀行は一見銀行らしく堂々としているが、中身は旧態依然と指摘し、現在の中国銀行は90年代のインドネシアおよびタイのバブル経済に近いとみている。
両氏が発表した研究報告「中国銀行改革における矛盾」
(http://faculty.chicagogsb.edu/anil.kashyap/research/chinabanksoctfullpaper.pdf)で、中国四大国有銀行における重要問題について詳しく研究し討議した。報告では、もっとも根本的な問題は、これらの銀行は共産党が保有する国有企業であると指摘した。カシャプ教授は、「仮に共産党内の高官から電話一本で銀行に対して、ある国有企業へ融資するよう告げたら、銀行側はイヤとは言わない。ならば、不良債権は山積みになるはずだ」と分析した。
カシャプ教授はマイケンシ・コンサルティング社が中国のある銀行に対する地区調査結果を引用し、同銀行における60%に達する貸付金には担保記録皆無であることを明らかにした。