夏のボーナスシーズンが目前に迫り、外為市場では個人の外貨建て金融商品投資に伴う円売り圧力が意識され始めた。ドル/円相場は今年に入って2月の高値119円台半ばから一時は10円近く円高が進んだものの、個人投資家の間では、投資信託などを通じて金利差を狙った海外への投資意欲が依然として旺盛。
市場では先行き、米国の赤字問題や利上げ打ち止め観測などからドルの弱含みを予想する声も聞かれるが、対円では一方向的なドル安を緩和する需給要因として関心を集めている。
「6月はドル相場が下がりづらい――」。東京外為市場ではこの時期になると、ディーラー同士の会話にこんな言葉が入り始める。証券会社や銀行が夏のボーナスマネーを狙って手数料収入が厚い投資信託の販売に攻勢をかけ始め、投信を通じた円売り圧力が強まりやすくなるためだ。
民間シンクタンク各社によると、今夏のボーナス支給総額は17―18兆円程度。日本経団連の調べでは、大手企業113社で妥結したボーナス平均額は87万7191円と、1959年の集計開始以来、過去2番目の水準となった。同時期の集計としては過去最高を更新した昨年夏の水準を小幅に下回るが「好業績企業から回答が集まりきっていない」(経団連)といい、企業業績の堅調ぶりを背景に、今年も高い水準となる見込みだという。
外為市場では、円高地合いの強まりとともに、個人の外貨建て資産への投資意欲は減退するとの見方もあったが、いまのところは引き続きおう盛だ。投信評価会社リッパーによると、5月の投信新規設定額の約3795億円のうち、外貨建て資産に投資するファンドへの資金流入額は約1626億円と、5月単月としては統計を取り始めた2002年12月以来、過去最高を更新した。「個人に人気があるのは、国内外の株式や債券、REIT(不動産投信)に投資するバランス型ファンド」(投信会社の関係者)といい、6月も1日現在で設定が予定されている26本のうち、半分以上の15本が外貨建て資産を運用対象としている。
現在は世界的な金融引き締め局面にある。政策金利は米国で約5年ぶりに5.0%まで上昇し、現在2.5%のユーロ圏でも今後2―3回の利上げを予想する声が出ている。「日本は早くても利上げは7月。年内2回でも0.5%にとどまる。金利差に敏感な個人投資家のボーナス流出は今年も強まるのではないか」(外銀東京支店の関係者)との声が出ている。
過去10年間、6月月末のドル/円相場が月初より円安となったのは5回と、為替市場でのボーナスマネーの“戦績”はちょうど五分。圧倒的に取引量が多い米ドル相場のトレンドを覆すほどの力強さはないが、「少なくとも(円の取引が多い日本時間の日中にあたる)東京タイムはそうしたフローが出やすい。急速な円高が進みづらくなる一因にはなる」(都銀のシニア外為ディーラー)という。
[ロイター6月6日=東京]
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