台湾大陸委員会:1-3月における中国大陸情勢観察報告

2006/05/24
更新: 2006/05/24

【大紀元日本5月24日】 台湾行政院大陸委員会は4月24日、第169回委員会議を開催し、中国大陸の内部情勢、経済、社会問題、雇用圧力や対外関係などについて、1月~3月における観察報告を提出した。報告の指摘によると、腐敗、権利の濫用、貧富格差の2極化が、中国大陸の民衆が注視する3大社会問題であった。また、中共政府の法制業務及び腐敗問題の解決に係る能力については、依然として、人民代表の期待とはギャップがあった。

報告の重要なポイントは、以下のとおりである。

(一)内部情勢:矛盾がなおも未解決であるほか、新たに5つの問題に直面

中共は、第10次全人代、全国政治協商会議第4次会議を開催し、第11次5ヵ年計画を決定した。温家宝・首相は、「政府活動報告」において、経済・社会の発展において長期にわたって累積した矛盾が未解決であるほか、現段階において、新たに五つの新問題(食糧の増産及び農民の増収が困難になっていること、固定資産投資の伸びが依然として高く、一部産業において、過剰投資の悪影響が現れ始めていること、民衆の切実な利益に関わる問題が未解決であること、生産の安全性が深刻であること、政府の職務遂行能力が停滞しており、政府職員の形式主義、腐敗の現象が深刻になっていること)が発生していると指摘した。

温家宝・首相は、民衆の生活に関わる問題の解決を強調し、中国大陸内部の安定及び調和を維持することが主要任務であるとした。しかし、「両院(最高人民法院、最高人民検察院)」の活動報告の全人代における賛成率は、それぞれ78.07%、81.67%であり、 他の活動報告よりも支持が少なかった(政府活動報告は、98.86%、第11次5ヵ年計画綱要は97.37%、社会経済発展報告は94.47%、予算執行状況報告は87.17%)。これは、中共政府の法制業務及び腐敗問題の解決能力の実態と、人民代表の期待との間になおも距離があることを示している。

中共政府は、「社会主義新農村の建設」を積極的に推進しており、連続3年(2004年~2006年)にわたり、「一号文件」を通じて農業政策を公表した。これらは、都市と農村のバランスある発展により、発展の不均衡、分配の不平等の問題を緩和することで、政情の安定を揺るがす可能性を除去することを意図したものである。

社会方面:抗争、犯罪が昨年より8万7000件、前年比6・6%増加

2005年において、中国大陸では、民衆の抗争や、公共の安全及び交通の安全を脅かす事件が頻発している。公安機関の調査によると、公務執行妨害、群衆による抗争事件、故意に引き起こされた騒動などで社会秩序を攪乱したとされる事件は8万7000件、1日あたり240件発生しており、前年比6・6%の増加となっている。炭鉱事故は1年で3300件発生し、5986人が死亡、郷・鎮における個人経営の炭鉱での死亡事故は2500件発生し、死亡者数は4500人近くとなっている。交通事故は1年で450万件発生し、9万8700人が死亡、財産の損失は、18億8000万元となっている。貧富の格差及び都市、農村の格差は引き続き増大しており、都市住民の収入の下位20%に属する人口の収入は、全体の2・75%を占めるに過ぎず、また、上位20%が擁する収入の4・6%を占めるに過ぎない。都市住民と農民の収入の比率は3・22:1である。農村の発展は停滞しており、郷、村の政府のみを見ても、各県の平均債務は2億5500万人民元に達し、県の数を2100として計算すると、中国大陸の各農村の債務規模は、5355億元に達しており、県レベルでの債務規模は、おそらく、この数字よりも更に大きくなる。

民衆が関心を持つ3大社会問題は、腐敗、権利の濫用及び貧富の格差

2005年において、雇用が必要な人数は約2500万人であったが、供給された雇用は1400万であった。2006年において、新たに増加する労働人口は1700万人余りで、うち、一般の大学卒業生が413万人、短大や高等職業学校卒業者の就職難は特に深刻になると予測されている。

治安は悪化しており、警察力の不足が目立っている。このうち、治安面において最も劣っているのが、深せんの宝安で、警備員一人あたり2700人余りを管理しなくてはならない。この数字は国際水準を大きく越えている。また、住民の治安に対する不安も高まっている。中国大陸住民の社会治安に対する安全感は3年連続して下落しており、2005年は3.53ポイントであった。民間調査によると、腐敗、権限の濫用及び貧富の二極化が、中国大陸住民が関心を持つ3大社会問題となっている。

経済方面:経済成長率は9・9%、依然として大きい都市-農村間の消費格差

中国大陸は、依然として高成長を維持している(2005年のGDPは18兆2321億元で、経済成長率は9・9%)が、都市-農村間の消費に係る景気格差は依然として大きく(2005年の都市における消費財小売総額は、2004年に比べて13・6%の伸び、県の伸び率は12・8%、県以下の地区の伸び率はわずか10・8%)、農村の消費能力が相対的に低くなっている。

2005年における固定資産投資は、前年比で27.2%成長した。投資の成長規模は、依然として相当に大きいが、成長のペースが緩和されれば、経済の健全な発展にとって不利となる。また、2005年における貿易総額は1兆4221.2億ドルで、前年比23.2%の伸びであった。貿易摩擦の激化が懸念されるところであるが、これが短期間で大幅に緩和されることはないであろう。中国大陸は、WTOへのコミットメントを実施しなければならないが、外資の進出が、中国大陸の長期的な経済成長の原動力となるか否かについては、状況を注視しなければならない。2005年における中国大陸の貿易赤字は1000億ドルを超え(1018.8億ドル)、また、外貨準備高も8000億ドルを超えており、人民元切り上げへの圧力が増している。

(二)対外関係:ロシア貿易において問題に直面、対日関係が低迷

米中関係について、米国は「4年期防衛評価報告」、「2005年世界各国人権記録報告」、「国家安全戦略報告」を相次いで発表したが、これが、双方の貿易、戦略、人権等のアジェンダについて、争議を引き起こしている。露中関係について、双方は、多くの協力文書にサインしたものの、極東石油パイプラインの敷設について、具体的な協議には到っていない。昨年、中国大陸吉林省に大量のベンゼンが流れ込んだ松花江事件の余波は大きく、プーチンは、露中工商フォーラムの開幕式において、両国間の貿易構造において、いくつかの深刻な問題に直面していることを明確に指摘した。

日中関係においては、小泉の靖国神社参拝、中国大陸の不透明な軍備増強に対する日本側の疑義、上海総領事館領事の自殺、安保理常任理事国の最低負担金に係る提案、日本文部科学省が発表した新版高等学校教科書の検定問題など、双方の関係は低迷している。

(看中国より)
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