【大紀元日本5月21日】米国財務長官であるジョン・スノー氏は17日、議会証言でドル安が続くが、急激に下落する可能性が小さいと述べた。米国政府のドル政策について、専門家はそれぞれの見解を示した。VOAが伝えた。
*専門家、ホワイトハウスはドル安を望んでいる*
スノー氏は米政府がドル高政策を擁護していると強調しているにもかかわらず、同時に、スノー氏と他の行政部門官員は、ドルの為替レートは市場に決めさせるべきだと表明した。
大幅に下落したドルについて、ますます多くのエコノミストは、貿易赤字を改善するために米政府はドル安の継続を望んでいると考える。しかも、エコノミストたちはドルの下落に非常に大きな警戒心を抱いている。
水曜日の東京為替市場では、ドル/円は一時109円20銭まで下落した。これは去年9月以来の最安値となった。
*ムディ氏: ドル安は続くだろう*
水曜日の議会証言において、ある議員はスノー財務長官に「もしドルが急激に下落するとしたら、財務部はどのような対策を用いるでしょうか」と質問した。スノー財務長官は「私はこのような可能性は極めて小さいと思います」と答えた。
PNCファイナンシャル・サービス社の副CEOであるリチャード・ムディ氏は、スノー氏の回答はドルの下落はこれからも続いていくかと言う重要な部分を避けたと指摘した。彼は、国際主要通貨としているドルが突然暴落するというのは確かに非現実的だ、しかし当面ドルが下落するトレンドはまだ続くだろうと認識している。
そして、ムディ氏は「暴落と、順当な下落とは意味が違うのです。われわれは、ドルの下落トレンドは続くと考えています。しかし、暴落することはないだろう。これからの9ヶ月から16ヶ月の間に、ドルは一段下落するのに違いないです。1ドルは100円になるでしょう。」と述べた。
上級エコノミストでもあるムデイ氏は、ドルを下落させた理由は二つがあると考える。一つは、アメリカの膨大な経常赤字。この膨大な経常赤字を改善するには、ドルを下落させるしかない。もう一つは、FRB(米連邦準備理事会)の利上げ休止。しかし一方で、FRBの利上げ休止の懸念が強まると同時に、欧州中央銀行や日本銀行は皆利上げを示唆した。したがって、昨年まで金利差によってドルは大量に買われたが、本年は金利差が縮小したことから市場ではドルは大量に売られたのだ。
*セイヤー氏、今年と来年にドル高トレンドが続く*
一方、A.G .エドワードズ証券会社の上級エコノミストであるゲイリー・セイヤー氏は、ドルの変動トレンドについてムディ氏と違う見解を示した。
セイヤー氏は「商品価格の急激な上昇によって、ドルには大きな圧力をかけられたのです。人々が一番心配しているのは、アメリカ経済にはインフレリスクがいつ現れるのかと言うことです。しかし、インフレリスクを抑制するために、FRBは16回も利上げを実施し、今月にも短期金利であるFF金利を5・00%に切り上げました。したがって、ドルのファンダメンタルズでのベースはかなり改善されているとわれわれが考えます。一旦、商品価格が下落し、インフレリスクが緩められれば、ドルが反発し、ドル高のトレンドに戻るだろう」と説明した。
またセイヤー氏は、「ドルの変動は、実に市場はどのようにアメリカ政府の予算政策と通貨政策を受け止めているのかを反映しているのです。短期金利が切り上げられたことによって、市場はアメリカの通貨政策への信頼感を強めたのです。また、政府予算の減少や税収の増加によって、人々の政府予算政策への信頼感も回復しつつあるのです。これらのファンダメンタルズ要因はドルの上昇に有利です」と述べた。
*政府の不透明な政策に不安*
専門家はドルの変動トレンドについて様々な予測をしているが、米政府の不透明な通貨政策に不安を感じる。
月曜日に発行されたウォール・ストリート・ジャーナル紙はある記事の中で、米政府は最近のドル安に黙認していると指摘した。消息筋によれば、スノー氏やブッシュ政権のシンクタンクたちは、他国経済景気が堅調であるとき、ドル安政策の実施は米国貿易赤字の一段の拡大を阻止するのに必要だと認識しているという。
同記事には、ホワイトハウスのこの戦略には大きなリスクが潜んでおり、もし市場投資家が米国の通貨政策はドル安政策であると確認すれば、ドルの緩やかな下落は一瞬に暴落に転じる可能性があるから、インフレリスクが一層増大させられるのではないか、と示した。