【大紀元日本12月23日】中国社会科学院は2001年に『当代中国社会階層研究』を発表し、本年7月に成都市において「和諧社会成都フォーラム」を開催、中国社会の「10の階層(玉ねぎ型構造とも称する)」について改めて問題提起した。学者中には、こうした区分は中国において現在存在する主要な社会矛盾を隠蔽することを意図したものであると考えているものもいる。しかし、これは著名な社会経済学者である何清漣氏が2000年に発表した《現在の中国社会における社会構造の変遷に関する総体的分析》がもたらした影響によるものと思われる。何氏の指摘によると、社会科学院の研究は、世論を醸成するための「概念先行」、つまり、結論ありき)であり、このために、職業の区分を利用して正常な階層区分をすりかえたものである。また、「観察」編集長である陳奎徳氏は、この研究は、権力への迎合、情報封殺、結論先行という大きな特徴を三つを具えていると指摘した。
清華大学の社会学教授・李強氏は、社会学研究2005年第2期において、「丁字型」社会構造と「構造的緊張」と題する研究論文を発表、2000年に実施された第5次人口調査の数字に基づき、サンプル60万人余について研究を行い、中国大陸の社会構造は逆丁字型、すなわち、非常に低位の区分に64・7%が属しており、他のグループとは明確な差異を呈していることを明らかにした。
大紀元:2001年に中共社会科学院が提出した「10の階層」の理論的根拠は何と考えるか?
何清漣:社会科学院によるこうした理論は、実際のところ「概念先行」である。彼らは、中国全体の社会階層の分布について、中下層が非常に大きく、上層及び最下層の部分が非常に小さいということを、世論として形成しようとしているのである。彼らは、概念を先行させて、その後に材料を探しているのであり、このために、職業の区分をもって正常な社会階層の区分に代替させたのである。当時、この研究が、非常に狙いを絞ったものであると指摘した人は既におり、ある学者に到っては、この報告の結論は、特に、2000年に私が書いた《現在の中国社会における社会構造の変遷に関する総体的分析》を標的にしたものであると私に語っていた。
陳奎徳:権力への迎合、情報封殺、結論先行という3つの大きな特徴
「観察」編集長の陳奎徳氏は、2001年に発表した論文『カンラン型か、それともピラミッド型か?―現在の中国社会構造を描く』において、最も基本的な学術的基準を用い、社会科学院が提出した「10の階層」の報告には3つの特徴が明確に現れていることを詳細に述べた。
第一は、権力への迎合という特徴である。この報告は中共政治局委員であり、社会科学院長・李鉄映氏が自ら処理を任せたものであり、中共総書記である江沢民が提出した「資本家の入党」論について、新たな理論的根拠をタイミングよく提供することを目的とした御用報告であった。
第二は、情報封殺という特徴である。この報告以前に、何清漣など、民間の独立した社会学者や経済学者が、現在の中国社会について類似の調査研究を行っており、かつ相当に大きな社会世論の関心を惹起していた。その後、何清漣は北京によって厳格に封殺された。つまり、この報告は、中南海が学問の自由を扼殺し、自分に不利な観点を隠滅するために用いられたのである。
第三は、結論が研究に先行するという特徴である。先に述べた2つの特徴から、報告の執筆者は、現代社会の階層構造の基本構成部分を中国は既に具備していることを予め仮定しなければならなかった。つまり、あらゆる現代国家が具備している社会階層は、中国において既に出現しており、不断に拡大を続ける中間社会階層及び企業家階層(中産階層とも呼ばれる)が出現しているとしたのである。
陳氏の見解によると、何清漣が2000年に発表した《現在の中国社会における社会構造の変遷に関する総体的分析》は大いに流行し、非常に大きな影響をもたらし、このために、北京当局によって厳格に封殺された。政府が、自ら支持する研究に十分な根拠と信頼性があると堅く信じるならば、他の学術的成果との公開競争を禁止、破壊する必要は全くない。しかし、このように政治手段を用いて学術に対処すれば、人々は政府が支持する独断的学問に対して信頼感を失う。
趙達功:中国に存在する主要な社会矛盾の隠蔽を図ったもの
政治評論家で、作家の趙達功氏の見解によると、「10の階層」区分の意図は、人々の社会矛盾に対する注意力をそらすことであるという。趙氏は次のように指摘している:現在の中国社会における主要な矛盾は、広大な労働者階級、農民階級と、共産党官僚の資産階級及び新興資本家階級との矛盾である。前者は、民主・自由、剥奪の減少と就業機会の増加、人権と平等を求めているが、後者は専制、専制に付随した特権、労働人民の頭上で権勢をふるうことを求めているのである。
清華大学李強教授:大陸の社会構造は逆丁字型
李強教授は、彼の研究論文において、中国の総体的社会構造は、「カンラン型」でもなく、「ピラミッド型」でもなく、逆にした「丁字型」の社会構造(逆T字型構造)を呈していると述べている。この構造をもたらしている主要な原因は、都市・農村の格差である。
李教授は、中国における16歳から33歳の64万1,547人を対象に「国際社会経済地位指数(ISEI)」で観ると、64・7%の人が非常に低位の区分に属する一方、他のグループは直立した柱のような構造になっており、巨大な差異が現れていると述べた。
李教授は、論文において次のように述べている:23番目のグループが全就業者の63・2%を占めており、このグループを構成しているのは、基本的には農民であり、畑やビニールハウス等で農作物の栽培に従事する人員や、農副産品の加工人員、その他養殖業の人員、牧畜業の生産人員、及びごみ処理で生活する者や、清掃工が含まれている。このうち、畑作労働に従事する者、すなわち中国における伝統的な農民は、このグループの9・12%を占めており、全就業者の58%を占めている。これに、5・2%のその他体力労働者が加わり、丁字型社会の最下層にある巨大なグループを形成しているのである。このグループの存在は、中国における非常に厳しい現実、すなわち、社会の下層部分の比率が過大であることを反映しているのである。
本稿は、中共社会科学院「中国社会における十大階層(玉ねぎ型分布)」をテーマに、何清漣氏を取材したシリーズ報道の第3弾である。