農民の増収は厳しい情勢 温家宝が直面する地雷陣

2005/11/14
更新: 2005/11/14

【大紀元日本11月14日】亜州時報10月の報道によると、農民権益問題に関する中央政府と地方集団の衝突の中、今年の農民の増収動向は極めて厳しい状況にある。温家宝総理は、最近、特別に会議を招集し、これに多くの仕事を発注し、必死に劣勢を挽回することをもくろんでいるという。しかし、農民は様々な困難に直面している中、温総理がタイミングよく解決の方法ないし問題を緩和するための措置を提示できなければ、いつでも地雷陣に自らの身を陥れることとなるとみられている。

2004年、中央は“三農”に関する6番目の一号文書を発表し、2005年には、再び、“三農”に関する7番目の一号文書を発表した。中央の一号文書のもと、現在、中国における28の省で農業税が撤廃されており、河北、山東、雲南の3省においても農業税の税率が2%以下に引き下げられている。政府側の発表では、今年上半期において、農民の現金収入は実質で12.5%伸び、都市住民の収入の伸び率を上回った。

しかし、今年の下半期を皮切りに、農民の増収に対して不利なニュースが相次いで伝えられた。9月下旬の《瞭望東方週刊》の報道によると、原油価格の上昇及び食糧価格の下落により、農民の増収の情勢において再び変数が現れることとなった。 

《瞭望東方週刊》は、中国国家発展改革委が、食糧・綿花を主要生産物とする県・市における数字について指摘したところによると、今年に入り、8月までの間に化学肥料の価格が大幅に上昇した。6月における尿素、カリ肥料、複合肥料等主要品目の平均小売価格は、前年同期比で20%近く上昇し、中には20%を超えた地区もあった。同時に、原油価格の上昇による輸送コスト等も農業の生産コストを増加させた。しかし、中国国家統計局が8月11日に発表した統計公報によると、全国住民消費価格の総水準と食糧価格が昨年に比べて全般的に上昇する一方で、7月期における食糧価格は0.9%下落した。

これ以外に、動物の疫病の予防に関する情勢も厳しい。アジア地区においては鳥インフルエンザに関する話が度々聞かれる一方、自然災害の脅威もまた予測しがたい。今年の気候条件も全体的に昨年とは異なり、夏季においては、旱魃、水害が顕著となっており、病害虫の発生もまた増加している。春・夏の到来が全般的に遅れたため、作物が早霜、寒露の影響を受ける可能性が高まっている。

この他、9月21日付の中国《陝西日報》によると、農民の家庭生活における支出負担が重くなっており、とりわけ教育医療等の費用は、学生、病人を抱える家庭にとっては負担するに耐え難いものとなっている。学校において、学費の徴収は“一費制”を実行しているが、名目を変えて徴収している補習費、賛助費、テスト費等は一部の学校において増えこそすれ減少はしておらず、小中学生を抱えた農家はますます生活が困難になっている。特に、大学・高校・専門学校における高学費は、一部の貧困家庭が子供に学問をさせようという夢を打ち砕いているほか、無理やり子供を入学させた家庭の生活をますます厳しいものにしている。一方、農民が病気を診ることは非常に困難なものとなっており、病院の敷居が高い、すなわち診療費が高いために病後の診療費を負担できず、病気を療養できない現象が普遍的なものとなっている。

また、《陝西日報》によると、社会公益方面における潜在的な負担が重くなっている。特に、郷・村における行政経費のやりくりが困難になっており、農村社会に向けた政府の投資が減少している。このため、農村における公益事業の水準が大幅に低下している。例えば、水道、郷・村の道路の補修、小型の水利施設の建設等は、本来国家及び集団による投資によって発展・維持すべき公益性を持つ事業であるが、これが市場に任されるようになったために、農民の負担が実質的に増加している。また、貧困者の扶助、衛生保健、余暇・文化、労働能力に欠けた人や身寄りのない人々のケアといったものは純粋な公益事業に属するが、経費不足のために、これらの事業が有名無実化、ひいては事業が取り消されており、農民の生活水準に影響を与えたり、あるいはこれを低下させている。

このため、温家宝は9月29日に国務院常務会議を開催し、苦境にある群衆の生産・生活に関する問題の解決について研究を行った。会議の通告によると、この問題を重視し、解放することは、社会の安定を維持するための切迫した必要である。温家宝は、各級政府及び各部門に対し、都市・農村の低収入にある群衆の生産・生活に真の関心を払うことを重要任務とすることを要求した。

温家宝は、地方に対し、切実なる救済活動を行うことを要求しており、また、都市の最低所得の範囲及びその標準を規範的なものとし、必要な人に必要なだけ保障がなされることを切に求めている。このほか、中央及び地方の財政資金が必要な額を必要なタイミングで支出することを求めている。彼は、都市・農村において特に貧困な民衆に関心を持つとともに、病気を診ることや子供の進学の困難といった問題の解決を支援するよう努力することを求め、農村の貧困救済のための開発、及び就職及び再就職の状況を改善することを指示した。

現在の温家宝の状態は、理想的とはいえない。なぜなら、地方官員の利益と農民の利益が大きく矛盾しているからである。例えば、彼は地方の低保障に対し、必要な人に必要なだけの保障を求めている。しかし、多くの地方政府がこれを実行することはできない。彼は、地方官員に対し、都市・農村の特に貧困な群衆の病気、子供の進学の問題の解決を支援することを求めているが、実行は難しい。なぜなら、財政上の支援がなく、仮に財政支援があっても、地方官員による実施を監督するのは困難だからである。最近、広東省は、農民の土地を(政府による収用を経ないで)直接市場に流通させるテストを推進している。この措置は農民の増収にとって有利なことであるが、地方官員の利益に抵触するものであり、中央は地方官員の感情を刺激するのを望んでいないせいか、これに関連する宣伝も異常なまでに低調である。

中国総理朱鎔基は、執政時において、“国有企業の問題について、3年以内に苦境を脱する”ことを示したが、その結果、彼の敵がこの点について彼を攻撃した。温家宝は農民を重視することを幾度にもわたって強調しているが、現在、農民は様々な困難に直面しており、彼がタイミングよく解決の方法ないし問題を緩和するための措置を提示できなければ、彼はいつでも地雷陣に自らの身を陥れることとなるだろう。