中国共産党(中共)が新たな出入国管理規定を発表し、国民の間で不安が広がっている。実際には、新規定の発表前から当局はすでに出国規制を強めていた。湖南省出身の男性は、海外旅行中に警察から帰国を迫られ、帰国後に出国制限の対象となり、国外に出られなくなったと明かした。
BBC中国語版が8月20日に報じたところによると、今年6月、湖南省出身の25歳の李明さん(仮名)はマレーシアを旅行中、戸籍所在地の警察から電話がかかってきた。警察は「3日以内に帰国しなければ『詐欺犯』とみなし、戸籍を抹消する」と迫ったという。
疑いを晴らすため、李さんはすぐに航空券を購入して帰国した。しかし、帰国後は再び出国できなくなった。
本人には何の通知もないまま、出入国管理当局に「詐欺への関与が疑われる高リスク人物」と指定され、出国制限のブラックリストに登録されていた。
李さんは途方に暮れた様子で「出国できない。香港やマカオにも行けない」と話した。
李さんにとって、これが初めての海外旅行だった。2025年8月、貯金をすべて持って東南アジアを旅行し、マレーシア、インドネシア、カンボジアを訪れた。約10か月にわたり、旅行をしながら現地で働きながら旅費を稼いでいた。ホテルの警備員や物流センターなどで働いた。
今年6月、中共の警察から電話を受けた際、李さんは「警察はどうして私の居場所を知っているのか」と驚いた。
当初、李さんは帰国の要求に応じず、家族に派出所へ行って様子を聞いてもらった。
家族によると、警察は非常に強硬な態度で、「海外にいる人には全員、帰国するよう促している」と話したという。
李さんによると、警察は電話で「帰国しても、2日後には再び出国できる」と約束した。
ところが帰国翌日、7、8人の警察官が自宅を訪れ、李さんの写真を撮影し、旅行中の行動について詳しく尋ねた。
李さんは「まるで犯罪者のように扱われた」と振り返る。
警察官の1人は李さんに、「帰ってきたんだから、もう海外には出るな」と告げた。
驚いた李さんが理由を尋ねると、警察官は「中国にいればいい。外国は安全ではない」と答えた。
李さんはその時点では深刻に受け止めていなかった。しかしその後、香港・マカオへの通行証を申請するため出入国管理部門を訪れたところ、職員からブラックリストに登録されており、出国できないと告げられた。
公開情報によると、中国人には自分で出国制限の対象になっているかを確認する手段はない。出入国関連の通行証を申請する際や、実際に出国しようとした時に初めて制限を知るケースが一般的だ。
「本当につらくて、苦しい。何も知らされないまま、こんなことになってしまった」
李さんは、出国制限の解除を求め、2か月以上にわたって当局に訴えている。数日おきに派出所へ出向き、市長ホットラインにも電話したほか、6千元を支払って弁護士にも依頼したが、今も明確な説明は得られていない。
李さんのようなケースはほかにもある。今年に入ってから、中国のSNSでは、東南アジアへの旅行から帰国した後、警察から電話で届け出を求められ、「詐欺関与が疑われる人物のリスト」に入れられたとの投稿が相次いでいる。
一部のネットユーザーは、こうした出国制限が戸籍所在地と関係しているのではないかとみている。中共当局が公表した特殊詐欺の重点取締地域には、福建省、広西チワン族自治区、湖南省、海南省、河南省などが含まれている。
8月17日、李さんは、資料を何度も提出し、出国制限の解除を求め続けた結果、派出所がようやくブラックリストから外すことに同意したと明かした。ただし、実際に出国できるかどうかは依然として分からない。
今年7月末、中共当局は9月15日から新たな出入国管理規定を施行すると発表した。
新規定では、一定の条件下で出入国管理当局が市民に出国を思いとどまるよう求めることができると定めており、出国の自由がさらに制限されるのではないかと懸念が広がっている。
さらに新規定では初めて、「中国人が国外で違法・犯罪活動に従事し、国家の安全と利益を損なった」場合、帰国後、最長3年間出国を禁止できると明文化した。
実際には、以前から、公務員や国有企業の職員だけでなく、一般人もさまざまな理由で出国を制限されている。
26歳のピピさんは、2019年に香港で「逃亡犯条例」改正案に反対する大規模な抗議活動が起きた際、香港メディアの取材を受けたことがある。本土に戻った後、国保(公安当局の国内安全保衛部門)から事情聴取を受け、その後も行動を厳しく監視されている。
「村民委員会から時々電話がかかってきて、今どこで何をしているのか聞かれる」
2023年1月、中共がパンデミック期間中の渡航制限を解除した後、ピピさんはパスポートを申請しようとした。しかし、関係当局は申請を受理しなかった。
出入国管理部門の職員から口頭で「香港での件が理由だ」と告げられたが、正式な文書は一切示されていない。
「正式な文書を出してくれれば、行政不服申し立てもできる。でも、向こうは『あなたは出国できない』の一言だけだ」
ピピさんは無力感をにじませる。「こちらが法律の話をしても、向こうは取り合ってくれない」
ピピさんは、すでに絶望していると話す。
「この先、一生国外に出られないのかもしれない」
李さんのように当局へ繰り返し異議を申し立てることもできない。問題がさらに大きくなり、より深刻な結果を招くことを恐れているためだ。「そんなことをすれば、刑務所に入れられる」
米ジョージタウン大学アジア法センターのトム・ケロッグ氏はBBCに対し、中共は長年にわたり、さまざまな目的で出国禁止措置を利用してきたと指摘した。
ケロッグ氏は、新たな出入国管理規定について、「中国人が海外で『何をして、何を言うか』をコントロールするための新たな手段だ」との見方を示した。
さらに今後、海外で中共政権を批判した人に対する出国禁止期間は、規定上の3年を大幅に超えるとみている。
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