中共軍の戦力投射はなぜ縮小?日本周辺と台湾海峡の変化を分析

2026/07/01
更新: 2026/07/01

2026年上半期、中共軍の台湾海峡および日本周辺・西太平洋での活動が大幅に減少した。防衛省の観測やデータからは、軍内部の混乱、装備・維持管理の課題に加え、日米の抑止強化が影響した可能性が浮かび上がる。

6月下旬、日米などの艦隊がフィリピン海域で同演習を実施する一方、中国の空母「遼寧」は第一列島線外での活動を終え帰還した。また、中共軍のH-6爆撃機は再び宮古海峡を通過したが、2026年上半期における第一列島線外での戦力投射は明らかに縮小した。台湾海峡周辺における軍用機の活動規模も顕著に減少している。

この背景には、中共軍内部の混乱に加え、米国および同盟国による抑止力が一定の効果を及ぼした可能性がある。

台湾海峡での軍用機活動は半減

2026年に入り、中共軍機は台湾海峡周辺で断続的に活動を続けているものの、全体的な活動回数は大きく減少している。

台湾側の統計によれば、2026年1月から6月までの間、1日あたり10機以上が活動した日は48日にとどまり、総出動数は926機であった。これは2025年同期と比べ、半分以下である。

これに対し、2025年上半期は、同条件の日数が104日、総出動数は2392機に達していた。

仮に「1日10機以上」を大規模活動と定義すれば、中共軍による台湾海峡での大規模な活動は、2025年上半期の104日から2026年上半期の48日へと半減し、総出動数も2392機から926機へと大幅に減少したことになる。

2026年上半期の最大規模は、2月12日の42機であった。これに次ぐのが3月27日の36機、6月3日の31機である。

一方、2025年上半期は、4月1日の76機を最大に、4月2日の59機、6月19日の50機と、より大規模な活動が確認されていた。さらに2025年下半期には、12月29日に130機という突出した規模の活動も確認されている。

このように、2025年を通じて拡大傾向にあった活動規模は、2026年に入り急速に縮小した。

その要因の一つとして、中共軍内部の人事と統制の問題が指摘されている。2026年1月、中央軍事委員会の主要幹部に異変が生じたと公式に発表され、指揮系統は再び混乱状態に陥ったとみられる。

また、2025年末には空軍司令員の急死情報が流れ、2026年6月には空軍政治委員が全国人民代表大会代表の資格を剥奪された。現在は参謀長と規律検査部門の幹部が、それぞれ軍事および政治業務を暫定的に担っているとされる。

こうした体制の不安定さが、台湾海峡周辺における航空活動の縮小につながった可能性がある。

2026年上半期、台湾周辺での大規模演習は実施されず

2025年4月と12月には、中国は台湾周辺で大規模な軍事演習を実施し、国内外に強くアピールした。しかし2026年上半期には、同様の演習は確認されていない。

背景には、各軍種の主要指揮官および政治委員の更迭が相次ぎ、統合作戦を指揮・調整できる体制が整っていないことがあるとみられる。

中央軍事委員会副主席に昇進した張昇民は政治工作出身であり、大規模な統合作戦の実務指揮を担う能力には限界があると指摘されている。

このような状況下では、中共軍は大規模な部隊運用に慎重にならざるを得ず、新たな問題の発生を回避する姿勢を取っているとみられる。

2026年6月20日、空母「遼寧」(16)は宮古海峡を通過し、西太平洋での活動を終えて東シナ海へ帰還した。(日本防衛省)

中国の空母は日本への圧力を弱めたのか

6月20日、防衛省は、中国の空母「遼寧」と駆逐艦2隻が西太平洋から宮古海峡を通過し、東シナ海へ戻ったと発表した。

さらに6月22日、中国国営メディア新華社は、「遼寧」空母打撃群が約40日間の遠洋訓練を終え、青島の母港へ帰還したと報じた。その間、南シナ海および西太平洋で活動し、日本側の艦艇や航空機による追跡監視が繰り返し行われたと伝えている。

今回の航路で注目されるのは、従来のように東シナ海から宮古海峡を通って西太平洋に進出する経路を取らなかった点である。4月には台湾海峡を通過して南シナ海へ入り、5月にはフィリピン東方海域での活動が確認されている。

帰還時も、日本周辺での顕著な演習活動は確認されていない。航路自体も、日本の島嶼周辺を意図的に回避した可能性が高い。

中国は対外的には強硬姿勢を維持しているものの、日米の軍事協力強化に対する警戒や、軍内部の混乱を背景に、実際の行動は抑制的になっているとみられる。

2025年6月には、「遼寧」と「山東」の2隻が同時に日本南東海域で活動し、第二列島線を越える動きも見せていた。これに対し2026年は「遼寧」1隻のみであり、日本周辺への示威行動も確認されていない。「山東」は出動していない。

こうした変化は、対外圧力および内部事情の双方が影響した結果と考えられる。西太平洋における海軍活動は明らかに縮小している。

中共海軍艦艇の活動回数が大幅減

日本防衛省の発表によれば、2026年上半期において、空母「遼寧」打撃群を除き、宮古海峡を通過して西太平洋に出入りした中共海軍の艦艇は計10隻にとどまった。内訳は、055型駆逐艦1隻、052D型駆逐艦1隻、052C型駆逐艦1隻、054A型フリゲート4隻、075型強襲揚陸艦1隻、補給艦2隻である。

これは、2025年上半期の37隻と比べて大幅な減少である。

2025年上半期には、055型駆逐艦3隻、052D型9隻、052C型1隻、ソブレメンヌイ級1隻、054A型12隻、075型2隻、071型2隻、偵察船5隻、補給艦2隻が確認されていた。

この比較から、中共海軍による西太平洋での戦力投射活動は、2026年に入り明らかに縮小しているといえる。背景には、軍内部の混乱に加え、日米の共同抑止の影響があるとみられる。

2026年1月27日には、052D型駆逐艦(156)が宮古海峡を通過し、西太平洋へ進出した。(防衛省)

また、当初4月に予定されていた米大統領の北京訪問が5月に延期されたことも影響した可能性がある。この期間、中国側は米国との対立激化を避ける必要があり、海軍活動の抑制につながったと考えられる。

一方、中国の軍事的動きに対し、日本政府は防衛力の強化を進めている。結果として、中国側は対日圧力の強度を調整せざるを得ない状況に置かれている。

防衛省によれば、2026年上半期には、中国艦艇が日本周辺の複数の海峡を通過する事例はあったものの、日本列島を周回するような航行は確認されていない。2025年には少なくとも2回、そのような航行が確認されていた。

また、2025年上半期には、中国の艦艇が台湾と与那国島の間の海域を通過した事例があったが、2026年には同様の報告は確認されていない。

2026年6月27日には、中国のH-6爆撃機2機が、ロシアの爆撃機および哨戒機とともに宮古海峡を通過し西太平洋へ進出したが、武装の搭載は確認されていない。(防衛省)

中共軍機による対日示威行動も減少

2026年上半期における比較的目立った動きとしては、6月27日の中露合同飛行が挙げられる。中国のH-6爆撃機2機、ロシアのTu-95爆撃機2機およびTu-142哨戒機2機が共同で宮古海峡を通過した。中国側の殲16戦闘機2機が護衛に当たったが、宮古海峡到達後に引き返している。

中露の爆撃機および哨戒機は第一列島線外側を北上し、その後帰投した。

同日には、別のH-6爆撃機2機が対馬海峡を通過して日本海へ進出し、殲16戦闘機4機が後続して合流した。これに対し、日本および韓国は戦闘機を緊急発進させ対応している。

ただし、今回の活動規模は2025年末と比べると限定的である。2025年12月29日には、H-6爆撃機2機、Y-9偵察機2機、戦闘機4機が宮古海峡を通過しており、当時はより強い示威的意味合いを持っていた。

これに対し、2026年の活動では、爆撃機は非武装であり、偵察機の随伴もなく、護衛戦闘機の数も少ない。全体として抑制的な内容となっている。

日本側の防衛力強化が、中国側に一定の自制を促している可能性がある。

また、防衛省によれば、2026年上半期のY-9偵察機の活動は延べ7回で、そのうち宮古海峡通過は5回にとどまった。2025年上半期は10回すべてが宮古海峡通過であった。

無人機についても、2025年上半期は複数回の活動が確認されていたが、2026年は確認例が大幅に減少している。

2026年6月23日には、空母「福建」(18)が台湾海峡を通過した。(台湾国防部)

中国の対外宣伝は明らかに抑制傾向

2026年上半期、中国は台湾を包囲する大規模演習を実施せず、それに伴う対外宣伝も控えられた。また、新型兵器に関する広報活動も全体として低調である。

空母「福建」は2025年末に引き渡しが報じられたものの、その後再び造船所に戻り、2026年6月に台湾海峡を航行した。実戦配備の進展については依然として不透明である。

「遼寧」には殲15戦闘機8機が搭載されていたが、追加配備は確認されていない。戦区間の調整能力にも制約がある可能性がある。

また、旧型の殲15は生産終了とみられ、新型機の運用体制も完全には整っていない。空母戦力は移行期にあり、現時点での実戦能力は限定的とみられる。

強襲揚陸艦についても、遠洋作戦における運用には制約があり、第一列島線外では脆弱性が指摘されている。

076型強襲揚陸艦については、かつて「無人機空母」として注目されたが、最近は関連情報がほとんど公表されていない。無人機の統制強化の影響がある可能性もある。

また、中国メディアは東風17ミサイルの発射映像を報じたが、国防部は詳細な説明を控え、過度な解釈を否定している。

同ミサイルは対空母兵器とされるが、内陸での発射実験では実際の海上目標への有効性を検証することは難しい。今回の公開も象徴的な意味合いが強いとみられる。

2026年6月21日、フィリピン海で実施された「バリアント・シールド2026」演習において、米海軍の空母「ジョージ・ワシントン」(CVN-73)から発艦したF/A-18スーパーホーネット戦闘機と米空軍のF-35A戦闘機が、日米艦隊の上空を飛行した。(米海軍)

維持管理と運用能力の構造問題

2026年6月、米ランド研究所は中共海軍の維持管理に関する報告書を発表した。

報告書は、中共海軍が大型艦艇の急速な増強を進める一方、維持管理体制や人員育成が追いついていない可能性を指摘している。

現場レベルでは表面的な整備にとどまり、複雑な修理は上位機関に依存する傾向があるとされる。また、高頻度の運用が整備能力に負担を与えている可能性もある。

このような状況は、艦艇の稼働率や運用効率に影響を及ぼし得る。活動回数の減少も、こうした構造的要因と無関係ではないとみられる。

さらに、国際情勢の変化に伴う資源供給の不安定化も、間接的な影響を与えている可能性がある。

米軍は中東での作戦を継続する一方、西太平洋にも空母戦力を維持している。短期間で複数の空母を展開できる能力は依然として健在である。

こうした状況を踏まえ、中国は対外的な軍事行動を抑制し、慎重な姿勢を取らざるを得ない局面にあるとみられる。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
沈舟