「お金を銀行に預ければ安全だ」というのは世界共通の認識であるはずだが、中国は例外と言わざるを得ない。近年、中国の銀行に預けた金が「消える」という、あってはならない現象が頻発しているのだ。
このほど、中国の上場企業が銀行に預けた約6000万元、日本円にして約12億4800万円の預金が「消えた」ことがわかった。同事件は中国メディアも取り上げており、世論は騒然となった。
中国の上場企業で、中国軍や軍関係の航空機修理工場を顧客にもつ「超卓航科」は今月3日、「3月末に、自社の子会社が招商銀行の南京城北支店に預けた6000万元のうち、5995万元が10月7日に同支店によって会社の口座から引き出された」と公表した。
つまり、預けた銀行の支店が、顧客の口座から勝手に預金を引き出したのである。それも、6000万元の預金のうちの5995万元というから、ほとんどが「消えた」も同然である。
超卓航科が中国招商銀行に問い合わせたところ、銀行側からの答えは「預金口座に入金された当日、銀行側が5995万元を、関係のない他社の証拠金取引口座に振り替えた」というものだった。
もちろんこの件について、超卓航科は全く事情を知らされておらず、同意もしていない。超卓航科は、この件を警察に通報した。現在、超卓航科の口座の預金残高は5万元(約104万円)だけである。
この件について、中国問題専門家で、エポックタイムズのコラムニストでもある王赫氏は「顧客が銀行に預けたお金が消えたとすれば、これは間違いなく経済犯罪、金融犯罪である」と指摘している。
実際、銀行内部の人間が(その多くは個人の利益のために)業務上の便宜を悪用して「顧客の預金に手を出す事件」は過去に何回も起きている。
2014年には、400年余りの歴史をもつ四川省の有名な白酒製造企業「瀘州老窖」が農業銀行の長沙迎新支店に預けた1.5億元(約31億円)が「忽然と消える」事件が起きている。
6年後の2020年に、この銀行の幹部と部外者が結託した事件について、中国の最高裁判所が下した判決は次の通り。
「瀘州老窖が取り戻せなかった預金1.3億元(約27億円)のうち、40%(5200万元)は瀘州老窖がその責任を負う。残り60%の損失は、事件に関わった農業銀行の支店2店が負担する」。つまり、損失を被った40%(5200万元)については「運が悪いと思って諦めろ」という、あまりに理不尽な判決なのだ。
2019年、中国メディア「青島新聞網」は、青島市民の肖さんが青島農商銀行の平度支店に預けた「500万米ドル(約7.5億円)が消えた事件」について報道した。肖さんは、消えたお金を受取った側の口座情報を調べようとしたところ、銀行側は「個人(肖さん)には調べる権利はない」と回答したという。
同じく2019年、工商銀行の南寧支店で、2.5億元(約52億円)を超える預金が「消えた」ことが明らかになった。
消えた預金に関わった銀行幹部は、2021年に一審判決で無期懲役の判決を受けたが、消えた預金のうちの約1.2億元は取り戻せなかった。
この事件に対する裁判所の判決は「銀行側は、いかなる賠償責任も負う必要はない」だった。つまり、不正を行った銀行幹部は罰せられるが、その銀行に賠償責任はない、というのだ。そのため、この事件に巻き込まれた多くの預金者のお金は帰ってくることなく、泣き寝入りするしかない。
これについて王赫氏は、つぎのように指摘する。
「このような事件は、銀行内部の管理の不行き届きがもたらした犯罪である。したがって、本来銀行が責任を負わなければならないし、何も知らない預金者が損害を受けるのはおかしい。これらの案件は、いずれも極めてシンプルで、責任の所在は明白であるはずだ。しかし、中国の裁判所が下す判決は、被害者の権利など考えもしない」
「中国共産党による支配下の中国は、あらゆる面で腐敗しきっている。中国の司法系統も公正な役割を果たしていない。いまや、中国の銀行システム全体において、金融犯罪や経済犯罪は人々の想像を絶するほど横行し、蔓延している」
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