フランス国防省傘下の軍事学校戦略研究所(IRSEM)がこのほど公表した「中国(共産党)影響力」と題する報告書は、華為技術(ファーウェイ、Huawei)と中国政府の密接な関係に迫った。
中国政府の資金援助により通信大手に発展したファーウェイに関して、世界各国が安全保障上の懸念を抱いている。
AFP通信の2019年の報道によると、ファーウェイのチェコ支社の元部長2人がチェコ放送に、同支社は顧客、当局者、取引先の個人情報を密かに収集し、本社のデータベースに送っていると匿名告発した。
このデータベースは、中国のファーウェイ本社が全般管理している。収集した情報は、在外中国大使館と共有しているという。複数のチェコ政府当局者はのちに中国に招待された。
各国が中国政府の5G野望を警戒
ファーウェイの孟晩舟(モウ バンシュウ)副会長逮捕事件により、5Gプロジェクトにかける中国政府の野望がより鮮明になった。世界中の(間接)取引先が、その安全性を警戒しはじめている。
米当局者は、同社製品には国家安全保障上の脅威があり、中国当局に監視やスパイ活動、通信施設の破壊に使われる恐れがあると、長らく主張してきた。
中国政府は、5Gを優先プロジェクトにしている。国営通信会社に多額の補助金を投入しており、ファーウェイは最も恩恵を受けているといえる。
ファーウェイに5Gインフラ建設の全部または一部を発注した国々にとって、安全保障上のリスクは避けられない。諜報活動に悪用される恐れもある。
一例を挙げる。オランダの電話事業者KPN社は、2009年に同社技術を導入する際、ITコンサルタント大手のキャップジェミニ(Capgemini)にリスク分析を依頼した。
後にキャップジェミニ社のレポートは、ファーウェイは「KPN社が運営するすべての携帯電話番号を無制限に傍受できる。首相や閣僚の電話であっても盗聴可能だ。また、電話帳のデータを盗むこともできる」とする調査結果をまとめた。長らく機密扱いとされた同レポートは、2021年4月にオランダのデ・フォルクスクラント紙の報道により明るみに出た。
長年にわたり、ファーウェイと中国政府の関係は不透明なまま
同社は、創業初期の1990年代から中国軍と提携していた。
国連工業開発機関(UNIDO)の事務局長を務める中国財政部の李勇(リ ユウ)元副部長は、2019年11月、UNIDOのトップとして、ファーウェイとの共同声明に署名し、UNIDOとファーウェイのパートナーシップを強化した。
インド諜報当局の2013年の発表によれば、ファーウェイとZTE(中興通訊)は中国の国家重点研究開発計画「863計画」に参加している。
米フォーブス誌はかつて、ファーウェイが博裕広州情報技術(以下、博裕)と提携関係にあることを報じた。博裕は中国政府が支援するハッカー組織だと指摘されている。
米司法省は以前、米企業にサイバー攻撃を仕掛けるハッカー組織の一つとして、博裕を起訴した。ファーウェイは博裕とのつながりを否定しなかったが、システムの評価を依頼しただけと主張した。
ファーウェイは都市監視システムを提供し、中国の警察部隊と提携関係にある。同社は新疆ウイグル自治区公安局と「戦略的協力協定」を結んだ。
同社はかつて、中倫法律事務所を代理人弁護士に立て、中国政府と従属関係ではないと釈明した。いっぽう、中倫法律事務所も中国政府と近い関係にあり、張学兵(チョウ ガクヘイ)社長は北京弁護士協会の共産党委員会書記である。
ファーウェイ・ポーランド支社の上層幹部・王偉晶(オウ イショウ)は2019年1月、ポーランド当局に逮捕された。 中国政府の諜報員として、ポーランドの国益を損なうスパイ活動を行ったという。
ベトナムのフルブライト大学のクリストファー・バルディング准教授と、英シンクタンクのヘンリー・ジャクソン協会(HJS)の共同研究レポートによると、ファーウェイの従業員には、中国諜報機関「国安部」の元諜報員、軍部のプロジェクトに関わった者、中国軍事大学で教育を受けた者、米企業に対するサイバー攻撃の容疑が持たれている軍組織に在籍した者がいる。
(翻訳編集・叶子)
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