中国人作家の回想録 労働教養所での拷問を詳細記録

2013/10/03
更新: 2013/10/03

【大紀元日本10月3日】米紙ニューヨーク・タイムズ中国語ウェブサイトは9月25日、ドイツ在住の反体制派中国人作家・廖亦武氏(54)の著書『証言』(原題:證詞、英語版:For a Song and a Hundred Songs)を紹介した。同著は、著者の労働教養所での監禁体験に基づき、受刑者への拷問奴隷労働の実態をリアルに記録している。

著者の廖氏は、1989年6月の天安門事件の犠牲者を鎮魂する詩作『大虐殺』と映画『安魂』により労働教養所に4年間収容された。

「それまでは政治に無関心だった」廖氏は「天安門事件に刺激され」人生が一変した。労働教養所に入所早々、『108種の珍味』という小冊子が渡された。「罪」を認めない受刑者に用意された拷問「メニュー」だ。「清湯挂面」(塩ラーメン)は、細かくちぎったトイレットペーパーを尿液に漬け込んだモノで、受刑者がそれを食べなければならないという。

廖氏はメニューにない拷問も味わったと書き下ろしている。

ある時、刑務官の許可なしで鼻歌を歌った彼は、懲罰として100の歌を歌うよう命じられた。「声が出なくなるまで歌ったが、さすがにこの数字をクリアできなかった」。そうなると、刑務官は電気警棒を彼の肛門に差し込んだ。廖氏は当時の状況をこう綴った。

「あまりの激痛に、私は哀れな犬のように大声で吠え続けた。電流が体中に走り、首のあたりが燃えているようだった。自分はまるで生きたまま羽が全部毟り取られたアヒルだった」

最後、渾身の力を絞って共産党を讃える歌を唄った廖氏は、やっと許してもらったという。

氏は受刑者たちを動物に例え、その悲惨な処遇を刻銘に描いた。強制連行された際の自分は「泥沼の道路上に引きずられ、ドジョウのようだ」。制限された時間内に食事する受刑者仲間は「首を長く伸ばして懸命に食事を飲み込むその姿は、まるで雄鶏だ」。飢えに耐え切れなくなり、角に隠れて糊を盗み食いする受刑者は「腰を曲げ、サンゴ礁にしがみついた大きなエビのようだ」。刑務官の暴行から必死に逃れようとする受刑者は「隠れるために、蛆虫のようにうごめきながら、人の群に割り込んだ」などの描写を盛り込んだ。

日常的な拷問だけではない、奴隷労働も強いられている。入所早々、廖氏は薬品包装の作業を命じられ、毎日のノルマは3千セットだった。後に同氏は鋳鉄工場に配属されて過酷な長時間労働を課せられたという。

18人が収容される20平米弱の雑居房で、廖氏は二度、自殺を試みたという。

ニューヨーク・タイムズ紙は、「この本を読むと胸を引き裂かれるように悲しいが、どんどんと引き寄せられてしまう」と評した。

廖氏や他の受刑者は刑務官や裁判官、検察官に対して、「(その行為は」憲法に違反している」と繰り返し訴えてきたが、そのたび嘲笑されさらなる罰を受けた。「中国の法律はゴムのようだ、裁判官は好き勝手に気分次第で囚人を処せる」と同氏は言う。

釈放後、廖氏は獄中の体験をまとめた回想録を執筆しはじめたが、国家安全局に知られ、警察当局は長期間にわたって彼を監視した。「お前を消すのは容易なことだ」とたびたび脅し、完成間近の原稿を3回ほど没収した。

中国当局に出国を禁止された同氏は2011年7月、雲南省の国境地帯からベトナムに脱出、その後、ドイツに亡命した。後に出版された同回想録のドイツ語版は2週間で2万冊を売り上げ、ドイツ出版界の最高の賞、ドイツ・ブックトレード平和賞を獲得した。

(翻訳編集・叶子)