黒竜江省斉斉哈爾(チチハル)の中学校で23日午後3時前(現地時間)、体育館のコンクリート製の屋根が丸ごと抜け落ちるという、重大な崩落事故が起きた。
この時、体育館でバレーボールの練習をしていた女子生徒や教員ら19人が下敷きになり、24日午後には11人の死亡が確認された。
この事故で、中国における「安全対策の不備による重大事故」が再度注目されている。
体育館の屋根が「抜け落ちた」
現地メディアによると、崩落した体育館の隣では別の建物の建設工事が行われていて、そこで使う建築用資材の一部が「体育館の屋根」に大量に置かれていたという。地元当局は、これらの資材が降り続く雨を吸って重くなり屋根の崩落につながったとみて、施工業者などを拘束して原因究明にあたっている。
中国メディアによると、崩壊した体育館は施工して26年が経過しているが、事故が起きる4カ月前には市教育局による安全検査に合格しているという。それでもこのような信じ難い事故が起きたことから、民間では「おから工事(手抜き工事)」の疑惑が噴出している。
生き残った少女「親友が全員いなくなった」
事故の後、事故に巻き込まれた女子バレーボール部員の集合写真がSNSに投稿された。
撮影場所は学生が寄宿する寮で、部員12人が写っている。この写真には「親友たち全員がいなくなった」と言うコメントが添えられた。
「政府や病院は、何をしているんだ!」
事故発生後、中国のSNS上には、地元政府や病院などの対応のまずさを激しく非難する保護者の動画が拡散された。
事故に巻き込まれた生徒の保護者と思われる男性は、動画のなかで、込み上げる怒りをなんとか抑えながら、切々と訴えていた。
「事故起きてから6時間後に、やっと保護者に知らせが来た。しかし、いざ駆け付けてみると、そこにいるのは、保護者や家族が騒ぎを起こさないよう監視する警察官だけではないか。病院側は一切情報を出さない。学校や政府からの状況説明も全くない。何時間も経つのに(自分の)子供にも面会できない。政府や病院は一体、何をしているんだ!」
関連動画に寄せられたコメントのなかには、「当局のやることはいつでも、問題を解決せずに、問題を提起した人を解決する(不解決問題,只解決提出問題的人)だ」「この国に絶望したよ」といったコメントが目立つ。
崩落原因は、本当に「雨と資材」だったのか?
「確かに雨は降っていたが、たかが雨だ。しかも、雨量はそれほど多くはなかった。屋根はコンクリート製だった。本当に雨水を吸い込んだ資材の重さで屋根が崩落したのならば、体育館の屋根自体に問題があったのではないか」
地元メディアでさえ、そのように報じるほど「おから工事(手抜き工事)」を疑う声は根強い。
屋根の上に建築資材を置くことの「非常識」はともかく、危険を察知して避難する時間もなく、体育館の屋根が一瞬にして崩落する凄まじさからして、確かに尋常ではない事故である。
SNSには「四川大地震の時と同じだ。この国は何も変わっていない」とする嘆きも広がっている。
四川大地震とは2008年5月12日、四川省汶川県を中心に発生したマグニチュード8の大地震である。この時、7000棟以上の小中学の校舎が倒壊して、多くの生徒が死亡した。
この地震による犠牲者数は、中国の公式な数字としては「約7万人が死亡。約1万8千人が行方不明」とされるが、あまりにも甚大かつ広範囲にわたる被害であるため、政府も実際の数を把握できず、また政治的意図により発表もされていない。そのため、その正確な数は「公式発表を上回る」と見るしかない。
この四川大地震で倒壊した学校も、その多くが全く耐震性のない「おから工事(手抜き工事)」であったため、重ねたパンケーキのように、避難する暇もなく一気に潰れた。学校で亡くなった子供たちは、震災犠牲者全体の1割に上るという。
甚大な被害を出した四川大地震から15年を数える今年も、人的被害を拡大させた建物の手抜き工事、いわゆる「おから工事(豆腐渣工程)」の問題も含めて、その責任を問う声は続いているが、今も真相が不明なままだ。そればかりか、震災悲劇の風化を願う当局は、震災で子供を亡くした親たちの「口封じ」に躍起になっている。
今回の体育館崩落事故は、もちろん地震によって引き起こされたものではない。しかし、目の前に現れたあまりにも悲惨な光景は、あの四川大地震直後の光景を多くの中国人に思い出させることになった。
これを天災のせいにすることは絶対にできない。未来ある子供たちの命を奪ったのは、人災である。
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