中国軍をトークショーの爆笑ネタにした「お笑い芸人」HOUSE氏の逮捕、および同氏の所属事務所に「2億円」という巨額の懲罰金が科された事件の波風が収まらないうちに、また1人のコメディアンが中国政府の「敏感な神経」に触れて、締め出されたことがわかった。
切れ味鋭い「お笑い」に狂乱する中共
マレーシア系の英国人コメディアン、アンクル・ロジャー(Uncle Roger/羅傑叔叔)こと黄瑾瑜氏がもつ中国SNSや動画のアカウントなどが最近、閉鎖された。
ことの発端は、黄氏が中国政府や中国の対台湾政策などをネタにして、揶揄する内容の予告動画をSNSに投稿したことにあるようだ。
黄氏はこのほど、ツイッターなどに、携帯電話を通じてスパイ行為を行う中国政府を風刺したり、また「台湾は自国の領土の一部だ」と主張する中国政府を揶揄する内容の自身のトークショーについて、その予告編を投稿した。
しかも黄氏は、予告編に続く本編動画の公開日を、中国政府が一年で最も神経質になる「6月4日」に設定していた。
この予告動画は、中国のメディアプラットフォームでは公開されていないが、他のところで目にした小粉紅(中国の愛国主義者)などから批判が殺到。その後、黄氏のもつウェイボー(微博)アカウントや、中国大手の動画配信プラットフォームであるビリビリ(bilibili)動画のアカウントが閉鎖された。
中国当局に「問題視」された動画のなかには、こんな場面もある。黄氏は、中国出身の観客に対し「中国は、いい国ですね~。グッド・カントリー」と繰り返し褒めながら、顔をゆがめて「変顔(へんがお)」を作ってみせた。それを言われた中国出身の観客も含めて、みな大笑いして喜んだ。
これに続けて黄氏は「今では、みんなこう言わないといけないんだよ。なぜかって? ステージの下では、多くの携帯が僕の発言を盗聴しているからさ」と述べた。
黄氏はまた、トークショー会場の観客の一人を指して「あ、こちらの方はファーウェイ(華為)の携帯を使っているね。彼ら(中国)はこっちを盗聴しているよ」。
さらに自分の携帯に向かって、わざとらしく「習近平さん、長生きしてね。習近平万歳!」と吹きかけてから「これで僕の社会的信用度が上がったね」と笑って話した。
続けて黄氏は「台湾出身の人はいますか?」と観客に質問してから「あれは本モノの国じゃない。いつの日か祖国に回帰できることを祈っているよ。一つの中国だ!」と、わざと中国人のステレオタイプを誇張し、揶揄して見せた。会場は、また大爆笑である。
それらは、もちろん黄氏による「お笑いネタ」である。キリキリと神経を尖らせる中国政府を茶化し、それを手玉に取ったコメディアンの実力と言ってもよい。
「真実を突くジョーク」が最も強い
中国政府の「お怒り」に反して、こうした黄氏の動画に寄せられたコメントには「台湾人として、この動画が本当に気に入っている」「マレーシア人はあなたが好きだ」といった支持の声も多く上がっている。
こうした「お笑い」を中心とするパフォーマンスに対し、昨今の中国共産党は、ほとんど「病的」とも言えるほどのアレルギー反応を示すのが常になっている。
そのため今の中国では、本来は自由であるべき芸能や文芸などの表現芸術が、全く活気を失ってしまった。たとえ観客の爆笑を得ても、うっかり口にしたジョークで「2億円」のペナルティを科されては、たまったものではない。
米国在住の著名な人権活動家・界立建氏は「一番恐ろしいのは、どのような『文言』が中共のレッドラインに触れるか分からない点だ」「今の中国の文芸界や芸能界は窒息しそうな状態で、絶望的だ」と話した。
その上で界立建氏は「中共が最も恐れているのは、真相を暴かれることだ」と指摘した。コメディアンのパフォーマンスが、中共が最も隠蔽したい真実を突いたとき、その影響は観客の爆笑とともに世界中へ広がることになる。
「反共こそ、今の時代の流れ」
中国の芸術家である童一敏氏は、同じく中国で表現活動を行う人々に向けて、次のように話した。
「中共の極権による統制下で、あなたがどのように頑張って中共を擁護しても、あなたは(中共の)特権家族ではない。もしもあなたが中共側に立てば、大量の外国人ファンを失うだけで、失うもののほうが大きいだろう。反共こそ、この時代の大きな流れなのだ」
童氏はさらに「中共のタブーに触れぬよう、神経質に、毎日をビクビクしながら過ごすことはない。いっそのこと、正々堂々と、言いたいことを言えばいいじゃないか。そのほうが、もっと多くの、本当のファンを得られるから」と述べた。
アンクル・ロジャーこと黄瑾瑜氏は、いま中国国内で封殺の受難に遭っているが、その「反共言論」と「中共当局の圧力の逆作用」によって一気に人気が上がり、ファンが増えているようだ。
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