中国で新予備役動員法がまもなく施行 戦時の国内動員が狙いか

2023/02/24
更新: 2023/02/23

中国で来月1日、軍予備役の動員を規定する「予備役人員法」が正式に施行される。現行の「予備役軍官法」に取って代わり、退役年齢引き上げと招集・退役規則の厳格化などが変更点となった。専門家らは、戦時の国内動員を想定したものと推測している。

昨年の12月30日、中国全国人民代表大会(国会に相当)を通過した同法案は、1996年に施行された現行の「予備役軍官法」の廃止に合わせて施行される。ウクライナ戦争におけるロシア軍の苦戦や、12月のコロナウイルス感染爆発による人員減少を顧みたものと考えられている。

同法案では現行の予備役法と比較し、予備役の佐官クラスで5歳から15歳、尉官クラスでは最大で10歳、最高退役年齢が引き上げられた。一方、専門技術をもつ士官に関して大きな変更はなかった。

また、予備役の動員についても厳格化され、動員命令がかかった際、指示を受けた予備役は速やかに招集場所へと向かうよう定め、その他人員についても持ち場で待機するよう規定している。

同法第2条によれば、予備役人員とは「兵役義務を履行し、人民解放軍現役部隊に予備編入され予備役に就く市民を指す」とし「国家軍事力の構成メンバーであり兵員補充の重要な源」と定める。

このほか、第3条は「中国共産党の指導を堅持し、習近平強軍思想を貫く」、第4条には「命令に従って規律を厳守し、犠牲を恐れることなく」「いつでも召喚されれば参戦し、祖国を守る準備をしなければならない」と記されている。

なぜこのタイミングで同法案が可決、施行されることになったのだろうか。

中国事情に詳しい王赫氏は9日、大紀元の取材に対し、同法案は中国国内の動員政策の一環だとした上で、米国に対する威嚇や戦争準備の一面もあると述べた。

王氏は、台湾へ侵攻するかどうかについて明確な判断は避け、これは「米国に対して圧力を加え、戦わずして勝つ戦略の一環だ」と指摘した。

「予備役の動員力は、防衛側にとって重要である一方、攻撃側にとっては補助的なものにすぎない」。台湾国防戦略資源研究センターの蘇紫雲所長は9日、大紀元に対してこのように述べ、台湾侵攻との関連性の薄さを指摘した。

いっぽう蘇氏は「将来的に台湾を侵攻する際、増強分を動員する可能性はある」とし、中国共産党内部の都合による動員システムとなるとの見解を示した。

台湾侵攻に間接的な関係

米国に亡命した中国海軍司令部の元参謀(中佐)である姚誠氏は、長く中国軍関連の話題を追ってきた。彼は米政府系メディア、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対し、予備役人員法の主な目的は台湾侵攻ではないが、間接的に関係していると指摘した。

「中国が台湾を侵攻する場合、その主戦力は海空軍とミサイル軍になる」。姚誠氏は、中国は現在台湾侵攻を行うにあたって十分な戦力を所持していることから、同法案は国内に向けられたものだとする。

「いかなる国も、国内外の問題を処理する際、必ず先に国内問題を解決する。不安定な国内状況で対外戦争を行うなどありえない。経済や外交で不安を抱える中国は、まず国内をかためなければならない」

同様の視点を、動画サイトで18万人の登録者数を誇るセルフメディアの「方的言」も指摘している。

「同法案の本当の目的は、銃口を国内に向け、国民を鎮圧することだ」

動画投稿主は、台湾侵攻が発生した場合、中国国内の経済や雇用などがすべて軍の管理下に置かれ、特に経済が発達している南部一帯の貿易が大きな打撃を受けることを指摘した。

「不満に思う国民による暴動を押さえつけるために、軽い軍事訓練を受けた予備役が治安を維持するために動員される」

仮に中国が戦争を始めれば、台湾侵攻だろうと米中間の軍事衝突だろうと、中国共産党指導部の指示により、中国国内は軍による厳戒態勢が敷かれることになる。中国共産党は、そのような状況下で自国民のコントロールを狙うと考えられる。

王天雨