中国国防大学の秘密実験室では、兵士たちが前例のないAI指揮官の命令の下で訓練を受けている。このAI指揮官は大規模な仮想戦場で作戦指揮を行い、従来は難しかった演習を可能にしている。この方法により、中国共産党は中共軍の高官が他の任務に集中している間でも、大規模な訓練を継続できる。

このAI指揮官は人間の指揮官のように思考し、個性を持ち、時には「忘れる」ことさえある。先月発表された研究によれば、AIが初めて指揮権を与えられたことが明らかになった。これにより、中国の軍事戦略は大きく進化する可能性がある。この研究とAI指揮官の創造は、中国の軍事能力を大幅に向上させるだけでなく、世界の軍事バランスにも大きな影響を与える可能性がある。

AI政策のアメリカの現状

先月、中国のAI指揮官がシミュレーション対抗戦で仮想敵を打ち負かした一方、アメリカのジョー・バイデン大統領はCNNのインタビューで、AIの脅威とアメリカ社会への影響について専門家の間で意見が分かれていると明らかにした。バイデン大統領は、少なくとも一人の専門家は、AIが「完全に人間の思考を超える」と考えていることを認めた。

AIが軍事や政治の意思決定に関与する場合、その結果はAIを使用する国の政策によって決まる。各分野のリーダーたちはAIと国家決定の統合について異なる見解を持っているが、ほとんどの国は包括的な政策枠組みを持っていない。アメリカの各政府機関はそれぞれAIガイドラインを策定しているが、前国防省長官のジョン・ミルズ氏は、アメリカには統一された政策枠組みが欠けていると指摘している。

議会もAIの影響を理解しようとしており、上院多数党院内総務のチャック・シューマー氏（民主党）はAIガイドラインの研究を提案しているが、専門家の意見の相違と技術の急速な発展がその努力の障害となっている。

ミルズ氏はエポックタイムズに、政策枠組みがなければアメリカは他国のAI基準を受け入れざるを得なくなる可能性があると述べた。

アメリカがAI政策で遅れている一方で、ヨーロッパはすでにAI規制を導入している。North Star Support Groupのサム・ケスラー氏は、アメリカがリーダーシップを発揮する必要があると指摘している。

EUのAI法は異なる「リスクレベル」のAIに対してガイドラインを設定し、透明性の要件を規定している。ケスラー氏は、これらのガイドラインが技術発展の青写真となり、将来のAI立法に影響を与えると述べている。

アメリカにも国家AI戦略があるが、それを実際の法律に変えることは別の課題である。現在、AIガイドラインは主にテクノロジー企業の自主的なコミットメントに依存しているが、規制のペースは加速している。

一方、中国はすでに広範なAI規制を導入しており、すべてのAI生成コンテンツが「中国共産党の社会主義価値観」を反映することを要求している。ケスラー氏は、アメリカが対応策を取らない場合、問題を引き起こす可能性があると警告している。

AIがアメリカの意思決定プロセスに統合される場合、その使用方法と誤用は、アメリカが自国の価値観を保持できるかどうかにかかっている。ケスラー氏は、国際システムの不安定性を考慮すると、AIの誤用や誤適用が重大な懸念事項であり、アメリカと中国が、この問題に対して大きく異なるアプローチを取っていると述べている。

2つのAI意思決定ビジョン

「中国は境界を見ず、AIを壊滅的な結果と結びつけることに抵抗がない」とミルズ氏は指摘した。高リスクシステムにおけるAIの使用は、重大な懸念であると警告している。

さらに、ミルズ氏は、AIを適切なシステムに統合し、人間の制御を維持しながら壊滅的な驚きを防ぐことが重要であると述べた。AIを使用して武器システムをより正確かつ効率的にすることが望ましいが、生命や死に関する決定には人間の制御が必要であると強調している。

この一例として、中国が開発している受動的なシステムが挙げられる。ミルズ氏は、AIを利用して環境の変化をリアルタイムで検出する赤外線カメラシステムを紹介し、それが船の破壊や損失を防ぐ唯一の手段になると述べている。

これが中共（中国共産党）の最新のAI開発に似ていることは推測できる。AI指揮官に指揮されるミサイル、艦船、または海軍に対抗するためには、どれほど迅速に反応する必要があるのか。もしアメリカが意思決定において人的要素を維持するなら、その軍隊はタイムリーに対応できるのだろうか。

政策がAIの正の利用を推進し、壊滅的な結果を避けるために役立つかどうかについて、ミルズ氏は世界が未踏の領域に入っていると述べている。

彼は、人々がAIを訓練するためのビッグデータやその意思決定を導くための分析について十分に理解している一方で、現実世界でリアルタイムに行動を起こすことは、全く異なるものであると述べた。この実行可能性は「未検証の環境」であると言った。