日本の地方銀行 20年間の変遷 脱中国化で世界展開へ

2026/06/08
更新: 2026/06/08

在中国日本企業の撤退に伴い、それらを取引先としてきた日本の地方銀行も「脱中国化」を進め、20年間にわたって東南アジア・インド・北米などへと重心を移し、グローバルな展開を図ってきた。専門家は、これは日本企業が「ポスト中国時代」に備え、インド太平洋および世界規模での戦略的布石を早めに打っていることを示していると指摘している。

日本の地方銀行、20年かけて脱中国化 世界展開へ

全国地方銀行協会の2025年版報告書によると、20年前、日本の地方銀行は中国でのビジネス拡大を目指す日本企業を支援するために中国への進出を始めた。日本の中小零細企業は日本企業全体の99%以上を占め、海外事業の拡大ニーズが高まっていた。

同報告書は、日本の地方銀行の海外拠点のグローバルな発展状況を示す3つのグラフを掲載している。概略すると、2005年時点では海外拠点の中心は中国に集中していたが、2015年には中国に限らず世界各地へと拡散した。

これは、日本企業の生産拠点が「中国一極」から東南アジア・インド・北米などへと多様化するのに伴い、地方銀行も海外協力ネットワークを広げてきたことを示している。

日本の地方銀行の過去20年間における海外拠点分布の変遷。上図が2005年、下図が2015年(全国地方銀行協会)

2025年時点(下図参照)では多極化がさらに加速し、重点がインド・ベトナム・東南アジア等に移った。2025年における最大の変化は、中国がもはや唯一の中核ではなくなった点である。地方銀行の海外協力先は、日本企業のグローバル化に伴って広く分散している。

日本の地方銀行の過去20年間における海外拠点分布の変遷。2025年の状況(全国地方銀行協会)

また、2025年における海外協力の内容も変化した。国際協力銀行(JBIC)の報告書によると、日本の地方銀行は2015年以前の「海外提携銀行の開拓」から「サプライチェーン・ネットワークの構築」へと転換した。JBICと地方銀行の連携は、融資にとどまらず、情報・人材交流、海外投資支援など幅広い分野に拡大している。

米国については、2015年時点では主に投資・市場拠点としての位置付けだったが、2025年には半導体・AI、スタートアップ・テクノロジー、先端製造業における重要な協力拠点へと発展した。一部の日本の銀行は米国西海岸に新たな拠点を設け、スタートアップや技術投資に関する情報収集を専門に行っている。

インドについては、日本の金融機関・企業がこぞって最重要新興市場の一つと位置付けており、製造業の大規模なインドシフトが進んでいる。2025年には日印間の越境融資協力も深まり、案件数も増加している。

こうして20年後の今日、日本の地方銀行は「中国中心」から離れ、いわゆる「チャイナ・プラスN戦略」東南アジア・インド・北米等への多角的展開へと転換した。

七十七銀行 脱中国化の典型例

日本の地方銀行の脱中国化において、七十七銀行はひとつの典型例といえる。七十七銀行は宮城県仙台市に本店を置く東北地方最大の地方銀行である。

同行が2025年5月に公表した統計報告書によると、2025年3月末時点で世界各地に合計526の営業拠点を有し、うち中国が170拠点と最多で全体の32.3%を占める。

中国の拠点数は最多ではあるものの、2015年3月以降は減少傾向が続いている。2015年の205拠点から、2020年には189拠点、そして2025年にはさらに170拠点へと減少した。

この点について同報告書は、米中関係の変化、中国共産党の政策の方向性、および人件費の上昇を踏まえ、機能転換と拠点の再配置を進めていると説明している。

報告書はまた、ベトナムやタイなどASEAN諸国が製造・販売分野における中国の代替市場として存在感を高めており、同地域の拠点数は2005年の26拠点から2025年の232拠点へと拡大したと強調している。

政治経済ウォッチャーの福澤喬氏は、大手・地方を問わず日本の銀行はいずれも投資の重点を東南アジア、とりわけインドへと移しており、これは大きな趨勢であると述べた。また、安倍晋三元首相以来の日本の国際政治・安全保障の理念にも合致すると指摘した。

日本銀行の撤退、複合的な要因 主因はサプライチェーンと投資の移転

台湾・南華大学国際事務・企業学系の孫国祥教授は大紀元の取材に対し、「日本の地方銀行が中国から撤退している主因は、日本企業のサプライチェーンと投資の重心が移転していることにある」と述べた。

「かつて地方銀行が中国に拠点を設けていたのは、主に中国に進出した日本の中小企業に対して、工場設立・融資・為替・ビジネス相談などのサービスを提供するためだった。しかし日本企業が生産能力や投資の一部を東南アジアやインドに移すにつれて、銀行の中国ビジネスは自然と縮小した」

「加えて、中国経済の減速、個人消費の低迷、不動産と地方債のリスク、外資の投資意欲の低下によって、中国市場は『成長型市場』から『コスト高・リスク高・増分低』の成熟市場へと変質した」と孫氏は指摘した。

また孫氏は、「もう一つの重要な考慮事項は地政学的リスクとコンプライアンス上のリスクだ。台湾海峡危機、日中関係の緊張、米中テクノロジー戦争、輸出規制、希土類・重要物資のリスクが重なり、日本企業は中国での事業継続の脆弱性を改めて見直すことを余儀なくされている」と述べた。

政治経済観察家の福澤喬氏は、中国共産党によるゼロコロナ政策のロックダウン、日本人への非友好的対応、米中対立、台湾海峡危機、スパイ防止法の施行など、いずれも在中国の日本企業に潜在的リスクをもたらしており、日本が中国一辺倒から脱却して多角化に転じることを余儀なくされたと述べた。

在中国の日本企業、経営を継続縮小 日本三大銀行の対中投資も減少

福澤喬氏によると、近年は地方銀行のみならず、日本三大銀行の対中融資残高も大幅に縮小している。2026年3月までの5年間で、三井住友銀行は約40%減、みずほ銀行は30%超減、三菱UFJ銀行は約20%減となった。

福澤氏は、中国経済の低迷・市場の不振・失業率の上昇に加え、国家安全法やスパイ防止法の施行が、在中国日本企業のリスクを高め、収益性と投資意欲の低下をもたらしていると分析した。

日本貿易振興機構(ジェトロ)の統計によると、2025年度の世界各地における日本企業の収益状況は、黒字が66.6%、収支均衡が16.9%、赤字が16.6%だった。このうち最も黒字比率が高かったのはアラブ首長国連邦(UAE)で83.3%に達した一方、主要19か国・地域中、中国は下位2位となり、黒字比率63.2%、収支均衡19.1%、赤字17.7%にとどまった。

日本企業の主要産業の一つである自動車業界については、2026年の営業状況の改善見通しを尋ねたアンケートで、インドが62.5%と最高だった一方、中国は主要国中で依然下位2位にとどまり、黒字はわずか20.3%、悪化が40.5%と主要8か国中で最高となった。

今後1〜2年の間に事業規模を拡大する見通しの項目では、インドでは8割の日本企業が拡大意欲を示した一方、中国では減少傾向にある。

在中国日本企業のうち、経営規模の拡大を見込むのはわずか21.3%で、現状維持が64.3%、縮小が12.6%、他国・地域への移転を予定している企業も一部ある。18か国・地域中、中国大陸は17位、香港が最下位の18位だった。

在中国日本企業の経営拡大を阻む要因の一つとして、中国経済の低迷が続き、市場需要が今後も回復の見込みが薄いことが挙げられている。

「ポスト中国時代」のアジアのサプライチェーン秩序 日本が先手を打つ

孫国祥氏は、東南アジアとインドが日本の銀行の海外展開の新たな重心となった主因として、日本企業の海外投資の軸足が「中国集中」から「アジア分散」へと移っていることを挙げた。銀行は単独で動くのではなく、顧客企業の動向に追随するのだと述べた。

さらに同氏は、この現象は三つの問題を示唆していると分析した。

「第一に、日本企業のアジア戦略において中国の地位が低下しており、もはや唯一の中核ではなくなった。第二に、日本企業は効率優先から強靭性優先へと転換しており、中国の低コストと完全なサプライチェーンを追い求めるだけでなく、リスク分散と地政学的ショックや台湾海峡危機の波及を回避することをより重視するようになった」

「第三に、東南アジアとインドは単に中国から流出した生産能力の受け皿にとどまらず、日本の金融・製造・投資・戦略展開における新たなプラットフォームとして定着しつつある」と述べた。換言すれば、「日本の銀行が東南アジアとインドへと軸足を移しているのは、日本企業が『ポスト中国時代』のアジアのサプライチェーン秩序に向けて先手を打っていることの表れだ」と指摘した。

全国地方銀行協会の公式ウェブサイトによると、地方銀行とは地域を主な営業対象とする地域性の銀行であり、2025年1月時点で全国に61行が存在する。

地元顧客の支援や海外事業の拡大といった観点から、一部の地方銀行はアジアを中心に、欧米等にも支店や駐在員事務所を設けている。

孫国祥氏は、「日本の銀行の行動は一つのトレンドを映し出している。企業と金融機関が中国をアジア戦略の中核から、重要ではあるがリスク管理が必要な市場へと位置付け直し、将来の成長をより分散化・強靭化されたアジア展開に賭けているのだ」と述べた。

易如
程工