中共秘密警察工作員が豪州に亡命、公安の秘密暴露

2024/05/20
更新: 2024/05/20

中共(中国共産党)の公安局に所属していた秘密警察工作員が、オーストラリアに亡命した。初めて公の場に姿を現わし、中共の悪評高い安全部門の内部運営や、海外の反体制の人を追跡する手法について、暴露した。彼の名前はエリックという。エリックはメディアやオーストラリアの情報機関に、多数の文書を提供し、自らの暴露が事実であることを証明した。この事件は、世界中で注目されている。

オーストラリア放送協会が最近放映したドキュメンタリー番組「フォーコーナーズ」では、中国からオーストラリアに逃れた中共秘密警察工作員が、エリックという仮名を使い、2008~23年にかけての約16年間に中共の公安部政治安全保衛局(第一局)で経験したことについて語った。

その部署は、世界規模で活動しており、特に中共や首魁習近平を批判する者への弾圧に関与している。エリックは、この部署を中共政権の「最も闇が深い部分」と評し、部署の職員は反中共主義者に対して、手段を選ばないと述べている。

エリックの役割は、世界各地の反体制の人を追いかけ、必要に応じて様々な身分になりすまし、彼らを誘拐して、中国に連れ帰ることだった。

何度かの誘拐ミッションに失敗したエリックは、自分が罰せられることを恐れ、2023年にオーストラリアに亡命し、オーストラリアのメディアが作成したドキュメンタリーで、中共の国家安全部が世界的に行っている危険で秘密の活動を明らかにした。

2016年、エリックはカンボジアのプノンペンに送られ、中共と緊密な関係を持つプリンスグループという不動産会社に就職した。

エリックは、「カンボジアには私の偽装にふさわしい大企業があり、秘密警察は私をその企業グループの不動産部門の企画責任者として送り込んだ」

「会社社長は私が何者で、どのような目的でここにいるのかを知っていた」と語っている。

エリックの任務の一つは、当時日本在住だった反中共の漫画家、王立銘(ペンネームは「變態辣椒」)を捕まえることだった。彼は漫画を通じて、中共の習近平を批判していた。

エリックによると、「秘密警察は王立銘を東南アジアへ誘い出し、そして中国に送還して、逮捕及び裁判にかける計画だった」とのこと。

その後、エリックは王立銘を逮捕するための作戦に着手した。

エリックは次のように述べています。

「私たちは王立銘に接触し、初めに会社は彼に漫画の制作を依頼し、その見返りとしての報酬を提供すると伝えた」

エリックが送信したメッセージはすべて上司によって監査され、上司からは経済的な魅力を増すよう指示され、さらに高額の報酬を提示するようにとの命令が下された。

漫画家の王立銘は、こう振り返る。

「その後、彼らが世界規模で人材を探していると聞き、クリエイティブディレクターのポジションもあるとのことだった。提示された給与は魅力的で、カンボジアでの面接の話もあった。少し心惹かれたが、妻が強く反対し、罠であると警告してくれた」

妻の鋭い直感のおかげで、王立銘は、カンボジアへの転職の誘いに乗ることなく、中国へ連れ戻されることもなく、現在は米国ワシントン州で安全に暮らしている。

エリックは、自分がさまざまな偽装を施していたことを公表し、企業の経営者や反中共の自由戦士に扮し、反体制の人を中国に送還できる国に誘導したと述べた。対象となった国は、中国、インド、カンボジア、タイ、カナダ、オーストラリアだった。

YouTuberであり、反体制活動家の尹科氏は、中共のスパイから標的にされた。これは、彼が中共の官僚を批判し、習近平とその娘を非難する動画を頻繁に投稿していたためだ。

2018年、エリックは命令を受け、尹科氏を東南アジアに誘い出し、中国に送還可能な国へと向かわせるよう指示された。

尹科氏は、「私には、全ての動画を削除し、習近平を侮辱する内容を、取り除くよう要求する人たちがいる」と語っている。

ドキュメンタリーによれば、中共は2014年から「キツネ狩り」「天網作戦」と呼ばれる作戦を通じて、1万2千人以上のいわゆる「逃亡犯」を中国に送還しており、多くの場合、現地政府が知らない間に、または許可を得ずに秘密裏に行われている。

2023年には、オーストラリア連邦警察がシドニーで、中共の秘密警察活動を摘発した。

シドニー科学技術大学の副教授である馮崇義氏によると、オーストラリア政府は、海外で活動している中国の民主運動家たちが、中共の公安による国外での法的措置に直面している問題に、焦点を当てているとのことだ。

馮崇義氏は、「寝返った人は昔からいたが、メディアがこれを報じたり追跡したりしていなかっただけだ。今、オーストラリア政府は米国の例に倣い、海外での民主運動、特に中国の民主運動家たちに目を向けている。さらに、中国の公安(警察)が国境を越えて法的措置を執行することにも注目している」と述べている。

オーストラリアに住む法学者の袁紅冰(えんこうひょう)氏は、中共の公安部が国際的にその権限を拡大していることに対して、人々は警戒する必要があると警告している。

袁紅冰氏によると、「かつて公安部は国際的な範囲で、中国国外での権力行使が許されていなかった。国境を越えた中共のスパイ活動や暗殺、情報収集は他の部署が担当していた。しかし、現在、王小洪の指揮下で、公安部の権限が大幅に拡大された。つまり、公安部は国境を越えて他国の主権を侵害し、秘密裏に逮捕や誘拐を行い、中共が反対勢力や敵対勢力と見なす人々に対して、秘密警察として逮捕、誘拐する権限を持つようになった。これは他国の主権に対する深刻な侵害に他ならない」と述べている。

また、フランスのテレビ局「フランス2」は5月1日の特集報道で、中共の駐フランス大使館、中仏協会のメンバー、中共の地下警察、公安局、在外中国人組織が協力して、パリで反体制派の凌華湛(りょうかたん)氏に対し、中国への帰国を強要する圧力をかけている事実を、暴露した。