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ミャンマー地震で中共が密かに影響力を拡大

2025/04/11
更新: 2025/04/11

ミャンマーが壊滅的な地震に見舞われている中、中国共産党が静かに影響力を強めていた。軍事政権に武器を供給し、人道支援を妨害し、危機を利用して習近平の世界拡大戦略を推し進めているのだ。

3月28日、マグニチュード7.7の壊滅的な地震がミャンマー中部を襲い、3600人以上が死亡、さらに数千人が負傷、家を失い、瓦礫の下に埋もれた。

北京が支援する軍事政権は、最も被害の大きかった地域の多くに、救助隊や物資を送ることすらせず、それどころか、中国共産党(中共)製の航空機や無人偵察機を使って民間人を空爆する残忍な空爆作戦を再開した。

こうした攻撃が可能になっているのは、中共の支援があるからだ。中共は金銭や武器、航空機を通じて、軍事政権を支え続けている。BBCワールドサービスの調査報告によると、2021年にミャンマーの民主的に選ばれた政府がクーデターで倒されて以降、民主勢力はすでに国土の75%以上を奪還している。

民族武装組織の指導者、国際的なアナリスト、民主派の現地グループなど、多くの関係者が、「中共の支援がなければ軍事政権はとうの昔に崩壊していたはずだ」と、考えている。

つまり、中共は、ミャンマー国民の苦しみを長引かせることに直接加担しており、地震以前から国を破滅へと導いていた政権を支え続けていた。

地震以前から、軍事政権は、ミャンマー全土の電力・インターネット・電話回線を遮断し、支配地域(主に国の中央部)でのみ限定的なアクセスを許していた。こうした情報の遮断により、地震の生存者たちは、家族や外の世界と完全に隔絶され、また、民間人や支援活動家が独立した通信手段として利用していた数少ないツールの一つである「スターリンク」の機器も、政権によって押収され始めているとの報道もある。

地震後、多くの市民は、素手で瓦礫を掘り起こし、死者や負傷者を探さざるを得なかった。電力も通信もない中、その作業は極めて困難だった。「彼らは素手で掘っている」と、ミャンマー中部のある女性は、すでに1週間以上も瓦礫の下に閉じ込められている生存者を探すという絶望的な状況を語った。

軍事政権は、国際的な支援チームを徹底的に排除しようとしており、米国、台湾、その他の国々からのチームの入国を拒否し、タイからの越境支援にも強い妨害を加えている。ビザの発給を拒否し、支援関係者だけでなく、ジャーナリスト、人権監視員、政権に不都合な報道をする可能性のある者すべてを締め出すための広範な規制を課した。

一方で、中共とロシアからの関係者については歓迎し、軍事政権の支配地域、特に首都ネピドーなどに限って活動を許可している。

中共のミャンマーへの関与は、北京の「一帯一路構想」の重要な構成要素である中共・ミャンマー経済回廊と結びついた戦略的利益によって、推進されている。地震で最も大きな被害を受けたサガイン周辺地域は、苦しんでいるコミュニティがあるだけでなく、パイプラインや輸送回廊、軍事関連の開発など、中共が資金を提供する大規模なインフラプロジェクトの本拠地でもあった。

中共は、ヒスイ、レアアース、木材、エネルギーなどのミャンマーの豊富な天然資源へのアクセスと引き換えに、軍事政権(正式名称は国家行政評議会=SAC)に対して武器、航空機、監視技術を提供しており、それらは反対勢力の弾圧に使われているのだ。

中共は、自らを「平和の仲介者」と位置づけ、少数民族武装勢力(EAOs)に戦闘の停止を呼びかけているが、その呼びかけの焦点は、常に中共の投資が関わる地域に限られている。中立を装っているが、実際には軍事政権に対して軍事的・財政的な支援を行いながら、一部の少数民族武装勢力(主に軍事政権と停戦中で、住民に対して代理戦力として機能している勢力)にも支援を提供している。

少数民族武装勢力ワ州連合軍(UWSA)は、中共と連携するEAOの典型である。その経済は中共と深く結びついており、市場商品のほとんどは中共製であり、人民元が現地の通貨であり、ワ語とともに北京語が広く話される。

将軍や兵士は、中共名を名乗ることが多く、将校や兵士の中には、中共名を名乗る者も多く、学校教育でも中国語が主要言語となっている。

ワ州はシャン州の事実上の自治区として活動しており、シャン州進歩党(SSPP)や国家民主同盟軍(NDAA)といった中共と連携する他の少数民族武装勢も、紛争地域で軍事政権の統制を強化することによって、北京の戦略的利益に貢献していた。地震危機の間、これらのグループは、中共の援助チームに警備を提供しており、援助チームは、政権の承認を得た上で、政権が支配する地域にのみに、救援物資が届けられていた。

中共は、一貫して軍事政権に、政治的な隠れ蓑と国際的な正当性を与え、武力で権力を掌握した政権を支援してきた。昨年11月、北京は、軍事政権指導者ミン・アウン・フライン氏の公式訪問を受け入れた。これは紛れもない中共への支持表明だった。

国連安全保障理事会の常任理事国として、北京は、軍事政権の残虐行為を非難する決議を繰り返し阻止あるいは骨抜きにし、国際社会による責任追及から軍事政権を守ってきたのだ。

反体制勢力が支配する地域では、町全体が廃墟と化し、食料、水、医療援助から遮断されたままで、一方、中共政権は自国民を見捨てた政権を支え、安定という幻想を強めている。人権団体や国際機関は、地震対応における軍事政権の深刻な不手際や、民間人の苦しみを意図的に悪化させている。

ワシントンがミャンマーにおける影響力を放棄し続ければ、中共はベンガル湾に直接アクセスできる戦略的拠点を確保できるようになり、これは、中共の海軍力をインドのすぐ南に位置するインド洋にまで拡大させ、この地域の海洋バランスを脅かすことになるのだ。

中共・ミャンマー経済回廊によって可能となるこの回廊は、陸路によるエネルギー輸入の主要ルートとしても機能し、中共がマラッカ海峡を迂回することを可能にする。これは、中共が台湾に侵攻した場合の軍事的計算において、極めて重要な部分である。

対抗手段がなければ、中共とロシアはいつまでもミャンマー政権を支え続け、真の選挙や人権、平和を求める圧力はかけられないだろう。米国が民主主義の原則を守り、インドのような地域の同盟国を支援し、ミャンマーがまた中共の衛星国になるのを防ぎたいのであれば、今行動しなければならない。

経済学者、中国経済アナリスト。上海体育学院を卒業後、上海交通大学でMBAを取得。20年以上アジアに滞在し、各種国際メディアに寄稿している。主な著作に『「一帯一路」を超える:中国のグローバル経済拡張』(Beyond the Belt and Road: China's Global Economic Expansion)や『A Short Course on the Chinese Economy』など。