亜細亜大学の范雲濤教授(61)=中国籍=が昨年2月に中国に一時帰国した後、行方不明になっている。事情に詳しい関係者によると、中国の国家安全局は監視対象となっている在外学者のブラックリストを作成しており、該当する者が中国本土に渡航すれば事情聴取や拘束されるリスクがある。
首都圏の大学に勤務する学術関係者はエポックタイムズ記者に対し、中国に一時帰国した際に地元の国家安全局から接触された経験を語った。突然訪ねてきた国家安全局の係官に対して「誰にも告げずに中国に戻ったのに、滞在先をどうやって知ったのか」と訪ねたが、係官らは「あなたは監視リストに載っている。国家安全局上層部からの指示で動いている」と告げられたという。
神戸学院大学の教授である胡世雲氏(63)も昨年夏、中国に一時帰国した際に行方不明になり、中国共産党に拘束されたのではないかと考えられている。中国当局は胡氏の所在を明らかにしていない。
反スパイ法の施行以降、少なくとも17人の日本人が中国で拘束されされている。拘束に至らなくとも、中国共産党による監視や備考など、人権侵害が懸念されている。
中国共産党は長い間、海外に居住する学者らをスパイ活動の対象としてきた。特に、大学内に設立された孔子学院は、監視やスパイ活動を行う手段の一つだ。中国共産党は在外学者の研究活動を密に監視しており、学者に対して研究内容の開示を求めたり、研究成果を軍事利用したりするリスクが考えられる。いっぽう、国家安全保障に直接関係しない研究であっても、中国近代史の研究なども、中国共産党によって「スパイ行為」とみなされる可能性がある。
林芳正官房長官は22日午前の記者会見で、范雲濤教授の失踪について「長年にわたり、わが国の大学で教職に就かれている方であり、人権にかかりうる事案であるため、関心を持って注視している」と述べた。
亜細亜大によると、范教授は現在休職扱いとなっており、「復職を切に願い、適宜必要な対応を取ってまいります」とのコメントを発表した。
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