中国本土にほど近い台湾の金門島では、中国から無人機(ドローン)が飛来し、台湾軍陣地などを撮影する事件が相次いだ。台湾の李喜明元参謀総長は2日、中国と台湾の経済力・軍事力の差を念頭に、非対称戦を行うべきだと主張。同様の考え方は無人機の撃退にも応用できると述べた。
金門島では8月末から9月にかけて、複数回にわたり中国の無人機が飛来した。当初、台湾軍は警告射撃にとどめていたが、1日に飛来した一機の無人機は警告を無視したため撃墜された。これに対し中国共産党は台湾が「先制攻撃を行った」と主張した。
反共メッセージで無人機を「撃退」
台湾の李喜明元参謀総長は自身の著書『台湾の勝算』の出版発表会で、中国が無人機を飛ばし、撮影した動画をインターネット上で拡散する行為は「一種の認知戦、心理戦」だと指摘した。そして、撃ち落とす以外にも対処方法はあると述べた。
「例えば、中国の無人機が『中国本土に自由と平等を』『一党独裁、個人専制を終わらせよう』『中国本土に変革を』などのメッセージを撮影したとしよう。これでは中国は宣伝に使うことができなくなるだろう」
李喜明氏は、このような反共的なメッセージを無人機に撮影させれば、中共の目論見を挫くことができると語った。無人機を何機撃墜したら中共が攻めてくるだろうか、といった議論に固執するのではなく、グレーゾーン作戦に対しては柔軟な発想で対処すべきとの考えを示した。
中国の軍事予算は台湾の20倍に及ぶ。李喜明氏は、台湾に「対称戦」を展開する経済力はないと指摘し、局所的に相手に致命傷を与えられる戦法をとるべきだと述べた。いっぽう「非対称戦」はコストパフォーマンスが重視される。経済の面から軍事的脅威を評価し、限られた資源の中で優先順位をつけることになる。
中共に「勝つ」ためには
中国は近年、ドローンに代表される無人兵器の開発の注力しており、その過程で軍事利用が可能な大型民生ドローンの生産も進んでいる。ドローン世界最大手の中国DJI製品がロシア軍で利用されていることが紹介され、同社が火消しに追われたことは記憶に新しい。
軍事専門家で元航空自衛官の鍛治俊樹氏は大紀元の取材に対し、ドローンは撃墜されても人的損失がなく、心理的負担がないため「攻める側に有利だ」と指摘。「専守防衛がますます難しくなる」と警鐘を鳴らした。
李喜明氏は、中共に台湾は武力で手に入ると思わせず、戦争を仕掛けさせないことが台湾の勝機につながると語る。武器購入や兵員の増加には限界があり、徴兵制を行うとしても人員や設備の問題が残る。
「我々は中共の指導者に、台湾を侵攻してもメリットはなく、やめたほうがいいと自覚させる必要がある。こう思わせ続けることができれば、台湾は『勝てる』のだ」
中国共産党が軍事統一をためらう3つの重要な要因は、中国共産党の内的要因、米国の抑止力、両岸の軍事的不均衡の度合いだと、李喜明氏はボイス・オブ・アメリカ(VOA)に答えている。
逆説的に言えば、中国共産党はこの3つの問題の解決手段を見出し、合理的な自信を持ったときこそ海を越えて侵攻する可能性がある。加えて、習近平政権期間の2027年は、まさに警戒すべき時期であるとも指摘した。
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