先月、中国共産党の女性スパイ方芳(ファン・ファン)が米国の政治家を誘惑したというスキャンダルが報じられ、中国共産党が諜報工作に多用するハニートラップは再び話題となった。
米FOXニュースは昨年12月10日、複数の元米情報当局者の話を引用して、中国共産党のスパイが一握りの政治家を標的にしているのではなく、米政界はすでに中国当局に「極めて深く浸透された」と指摘した。
世界規模のハニートラップ攻撃 日本もターゲット
しかし、米国だけがターゲットではない。中国当局は全世界でハニートラップを仕掛けている。1972年、ニクソン米大統領が訪中し、中国共産党の毛沢東主席と会談を行った後、西側諸国で中国人スパイによるハニートラップが目立ち始めた。
英BBCはかつての報道で、ハニートラップの計画は中国各省の国家安全局(情報機関)によって実行されていると伝えた。各省は担当する国があらかじめ決まっている。上海市国家安全局は米国、北京市国家安全局はロシア、天津市国家安全局は日本と韓国をそれぞれ担当する。
2011年初め、フランス情報機関は、中国当局が「美人スパイ」を通じて企業情報を窃取し、フランス国民を脅迫していると警告した。女スパイは、同国の著名な医薬品研究者と性交渉し、その映像で研究者を脅迫したという。
昨年、英国情報局保安部(MI5)は、中国当局はハニートラップを仕掛け、英国企業のコンピュータネットワークにハッキングしようとしたと公表した。MI5は2008年、同国の治安当局者、銀行や企業の上級幹部に調査報告書を提供し、中国情報当局は「性的関係と他の違法行為を利用し、ターゲットに圧力を掛け協力を強要する」と警鐘を鳴らした。
2011年3月13日、韓国政府は、中国のスパイが韓国外交官10人以上を誘惑、韓国の国家機密を盗んだ事件を調査するため、上海に合同調査団を派遣した。
2004年5月、在上海日本国総領事館の公文・電報担当事務官が自殺した。遺書で、カラオケ店で働く中国人女性との不適切な関係を理由に、中国公安当局から日本の外交機密を提供するよう脅迫されていたと明かした。
昨年10月には、デラウェア州ウィルミントンのパソコン修理店のオーナーであるジョン・アイザック氏が、FBIの捜査に不信感を抱き、バイデン氏の息子ハンター氏のコンピューターのハードディスクをトランプ大統領の個人法律顧問のジュリアーニ氏に引き渡した。ハードディスクには、ハンター氏が父親の影響力を利用し中国企業との取引で利益を得たことを示す証拠に加えて、複数の中国の少女への性的暴行や虐待など、わいせつな写真や動画が多数収録されていた。
ジュリアーニ氏は、ハードディスクに保存されていたハンター氏と中国工作員との間のメールのやりとりによると、ハンター氏が中国人少女をレイプしたのは中国共産党当局が仕掛けた罠であることが証明されたと述べた。その様子を密かに撮影し、ハンター氏に「あなたの秘密がここにある。これからはおとなしく私たちの言うとおりにしなさい」とでも言うかのようにビデオを送った。
2005年5月にオーストラリア政府に亡命申請した、駐シドニー中国領事館の元一等参事官・陳用林氏は逃亡後、中国政府はオーストラリアで「1000人以上の中国の秘密工作員と情報提供者による大規模なスパイ網を運営している」と明かした。
陳氏によると、ハニートラップは中国の諜報機関が各国の官僚をおとり捜査するために使う一般的な戦術である。陳氏の在任中に、オーストラリアの政府職員が訪中のさい、中国人の未成年女性と性的関係を持ったとして中国公安当局に拘束されたことがあった。同職員は「中国共産党の工作員として働く」と要求に応じた後、最終的に釈放されたという。
逃れきれない甘い罠
十数年前、元ロンドン副市長のイアン・クレメント(Ian Clement)氏は、自身の実体験から国民に警告を発した。
クレメント氏は2008年の北京オリンピック期間中に北京を訪れ、2012年開催予定のロンドン・オリンピックへの投資を誘致した。出発前にイギリスの諜報機関からブリーフィングを受け、中国共産党の女性スパイが情報を求めるためハニートラップを仕掛けてくることが多いと警告されたが、「まさか自分がそれに引っかかるとは一瞬も思わなかった」と、同氏は後にデイリー・ミラー紙に語った。
クレメント氏は中国当局主催のパーティーで、魅力的な女性に会った。一緒にホテルに入った同氏が気を失った後、女性は彼の部屋をくまなく調べた。クレメント氏はインタビューで、飲み物に投薬された可能性が高いと述べた。
2001年9月にカナダに亡命した元遼寧省瀋陽市司法局長・瀋陽市公安局副局長の韓広生氏は大紀元紙に、中国全土に「外国人向けの指定ホテル」があると語った。「これらの指定ホテルの中には、客室に監視カメラを設置しているところもある。特定の客がチェックインするとこれらの部屋に案内される」という。
ハニートラップ戦術、情報収集と政治的影響力の一石二鳥
米シンクタンク、ランド研究所のティモシー・ヒース(Timothy Heath)上級国際防衛研究員は大紀元に、「ハニートラップは、幅広い応用範囲を持つかもしれないが、中国(共産党)の諜報機関が情報や政治的影響力を獲得するために使う手段であることが分かっている」と語った。
米インド太平洋軍(USPACOM)の中国戦略フォーカスグループのシニアアナリストを務めたヒース氏は、「中国を訪れた米国の学者などから、魅力的な若い女性に声をかけられたという話を聞いたことがある」と述べた。
ヒース氏によると、これらの米国人は「中国共産党の工作員がハニートラップを利用して米政府関係者に接近し、機密情報の提供を強要する可能性がある」と、米情報機関から事前に警告を受けていたという。それでも罠にはまった人は後を絶たないという。
元米情報機関高官で、ベストセラー『中国情報部』の著者であるニコラス・エフティミアデス(Nicholas Eftimiades)氏は大紀元に、「中国共産党のハニートラップは情報収集と政治的影響力を組み合わせたものであり、各国に壊滅的な影響を与えかねない戦術である」と語った。
エフティミアデス氏によると、機密情報へのアクセス権を持ち、信用検査の対象以外の議員は、数十年前から敵国のスパイ活動に特に脆弱だったという。
リック・グレネル(Ric Grenell)国家情報長官は昨年12月10日、米メディア「Newsmax TV」の取材に対し、複数の米高官に中国共産党のスパイが接近し、複数の議員や民主党の知事、地方公務員が狙われていたと語った。
グレネル氏は、中国人スパイは国連の至る所に侵入し、あらゆる隙に付け込んでいるとし、「米諜報機関は、米国を標的とする他の外国政府より常に一歩先を行く存在でなければならない」と付け加えた。
(翻訳編集・王君宜)
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