米中経済・安全保障調査委員会(USCC)は11月18日、連邦議会に提出した2025年度報告書の中で、中国共産党(中共)による軍備拡張の規模がすでに「戦闘態勢」と呼べる水準に達していると指摘した。近年建設した数百基のミサイル発射サイロや、急速に拡張する核戦力は、アメリカが長年インド太平洋地域で維持してきた抑止力の優位性を損なう恐れがあるという。
報告書によれば、中共はこの1年間で核兵器の大幅な拡張を進め、新たに約350基の大陸間弾道ミサイル発射サイロを建設して、核弾頭保有量は20%増加した。また、新型人工知能(AI)を組み込んだ作戦システムを統合し、中共軍を「核兵器の数量ではアメリカに及ばなくても、アメリカ軍と交戦しても勝利し得る軍隊」へと変貌させようとしている。
同委員会はさらに警告する。これらの軍事的進展に加え、中共が政治的弾圧や経済的影響力を強化することで、危機発生時に「迅速かつ断固とした行動」を取る能力を高める可能性があり、アメリカおよび同盟国の対応時間が短縮するおそれがあるという。また、アメリカにとっては中共の挑発や侵略に備え、自国の軍備態勢を一層強化せざるを得ない圧力となっている。
報告書は、アメリカが十分な協調対応能力を欠く場合、抑止力の優位は「中共の急速に強化される能力の前に失う可能性がある」と警鐘を鳴らした。同時に、委員会は議会に対し、アメリカ軍がロシア、イラン、北朝鮮などからの挑発に直面しつつも、「中国による武力または威圧行為を同時に抑止できるか」を機密・非機密の両面から評価するよう求めた。
米中経済・安全保障調査委員会はまた、議会に対し、アメリカ国防総省に対して台湾防衛におけるアメリカ軍の準備状況を包括的に再評価するよう求める提言を行い、アメリカが「台湾関係法」に基づく法的義務を果たせなくなると警告している。
「台湾関係法」は1979年にアメリカで制定された法律であり、アメリカと中華人民共和国の国交樹立後も台湾との非公式な関係維持を目的としている。台湾の防衛能力維持への支援、経済・文化交流の促進、そして台湾の将来は平和的手段によって決定するべきという原則を定めている。
中共、核戦力とAI作戦能力を急拡大 軍事近代化を加速
中共は現在、約600発の核弾頭を保有している。アメリカ国防総省の分析によれば、中共の目標は2030年までに核弾頭を1千発にまで増やすことにあるという。また、9月の軍事パレードで初披露した陸・海・空いずれからも発射可能な新型ミサイルも注目を集めている。
報告書はさらに、中共が今年の中頃に発表した6G技術を採用したAI電子戦システムについても言及した。このシステムは、グアム、マーシャル諸島、アラスカにあるアメリカ軍のレーダー信号を遠距離から妨害・傍受できる能力を持つ。報道によれば、このシステムは高速データリンクとAI技術を活用し、アメリカおよび同盟国のレーダーネットワークに同時攻撃を仕掛けることもできるとし、中共が進める「知能化作戦」の初期段階の実現を示すものである。
報告書はまた、中共が各軍種においてAI作戦プラットフォームを配備しつつあると指摘した。
中国製部品の排除と輸出規制強化を提言 台湾支援の継続も求める
米中経済・安全保障調査委員会は、台湾をめぐる戦争が発生すれば、世界のGDPが10%失われ、2008年の金融危機に匹敵する経済的衝撃をもたらす可能性があると警告した。さらに、核のエスカレーションやインド太平洋地域での大規模衝突へと発展する「壊滅的」リスクをはらんでいるとした。
報告書は、中共による経済的威圧がこの脅威を一層深刻化させていると分析する。現在、中共は基礎的半導体、レアアース鉱物、プリント基板の分野で主導的地位を握っており、アメリカがこれらに依存することは、経済および軍事の重要分野で敵対国への依存を深める恐れがあると警告している。
28項目に及ぶ提言の中で、委員会は議会に対し、中国製部品をアメリカの電力網に導入することを禁止し、輸出規制を実施するための統一的な経済戦略機構の設立を提案した。また、台湾との外交関係の継続的支援を強調している。具体的には、台湾とバチカンとの外交関係維持を挙げ、バチカンが台湾と正式な国交を持つ数少ない同盟国の一つであること、そして中共が「教会外交」を通じてバチカンを孤立させようとしてきたことを指摘した。
米中経済・安全保障調査委員会は、2000年10月にアメリカ議会の承認を得て設立した独立機関であり、米中貿易の影響を調査した上で政策提言を行い、アメリカの産業が直面する国家安全保障および貿易上のリスクを評価し、中共の行動を研究している。
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