中国政治 中共メディアは沈黙中 いよいよ真実味を帯びる

張又侠の異例なベトナム訪問 習近平の権力喪失を示唆か

2024/10/28
更新: 2024/10/28

10月、中国共産党中央軍事委員会副主席の張又侠(ちょうゆうきょう)がベトナム訪問し、異例の首脳レベルの接待を受けた。一方で、中国共産党(中共)の公式メディアはこの訪問について顕著な沈黙を保った。さらに、張又侠はベトナム共産党の指導者との会談で中共の党首である習近平について一切言及しなかったため、一連の異常な現象が広く注目を集めた。

政治分析家は、張又侠のベトナム訪問が、習近平の中共軍における権力が張に取って代わられたことを示唆していると指摘する。習近平の軍権が失われたことを示すだけでなく、この動きは、習の権力に重大な転換があった後、中共当局が、習の地位の変化を、少しづつ外部に、発信している可能性を示しているという。

2024年10月24~26日までのベトナム公式訪問が報じられたのは、ベトナムの軍事メディアによるもので、ベトナム中央軍委副書記、ファン・ヴァン・ザン国防大臣の招待に応じて、中共中央軍委副主席の張又侠が代表団を率いた。

ベトナム軍が公開した動画によると、張又侠はレッドカーペットで盛大に歓迎され、ファン・ヴァン・ザン氏と共に儀仗隊を検閲した。

歓迎式には、ベトナムの高級軍官が全員出席し、国防部副部長、軍の副総参謀長などが名を連ねた。

10月25日、ベトナム通信社と政府ニュースサイトは、張又侠の訪越行程を報じた。同日、ベトナム共産党党首トー・ラム氏と国家主席のルオン・クオン氏も張又侠と会談した。10月26日の午前中には、首相のファム・ミン・チン氏が政府本部で張又侠と会見した。

このスケジュール全体を見れば、これは完全に首脳レベルの訪問である。

注目すべき点は、10月26日以前、中共の公式メディアが張又侠のベトナム訪問について沈黙を守り、関連する報道がなかったことである。唯一、中国のポータルサイトである網易が10月25日に、ベトナムの公式通信社の報道をそのまま転載した記事を発表した。そして10月26日になって、中共国防部のウェブサイトや他の公式メディアがようやく張又侠のベトナム訪問に関する情報を発表し始めた。

それ以前、中共の公式な張又侠に関する報道は10月22日までであった。報道によると、10月20~22日の間、張又侠は河北省張家口で開催された全軍の総合訓練現場会議に出席し、デモ課目の演習や夜間実弾演習を観察し、総合訓練の総括会議で講演を行った。

この会議には、中国共産党軍事委員会の関連部門、軍委連合指揮センター、各戦区、各軍種、軍委直属の各単位、武警部隊および関連学校の指導者が出席し、軍の高層が全員揃った。

10月22日、習近平はロシアを訪れ、BRICS首脳会議に出席した。このタイミングで軍の高層が全員揃ったのは外部からの高い関心を集めた。

中共のメディアは、張又侠のベトナム訪問を控えめに報じた一方で、同じ党のメディアは張又侠同等か、またはそれ以下の官僚の活動を広く報道した。例えば、10月25日、新華網は中共中央政治局委員で国務院副総理の何立峰が北京で国連人間居住計画の執行主任ロスバッハ氏と会見したと報じ、10月23日には新華社が国務委員の諶貽琴(しんいきん)が最近福建省で調査を行ったことを伝えた。

張又侠のベトナム訪問、習近平の名前は一言も言及せず

ベトナムの公式メディアによると、張又侠はベトナム共産党の指導者との会談で、習近平の名前を一度も言及しなかった。

10月24日の歓迎式典後、張又侠はファン・ヴァン・ザン防衛大臣と会談したが、習近平については言及しなかった。張又侠は越中関係が「両国の歴代指導者によって育まれた」と述べ、中国共産党とベトナム共産党、そして「両国の高層指導者」が達成した合意を実行する必要があると強調した。会談後、双方は複数の防衛協力協定に署名した。

また、ベトナムのメディアによると、張又侠がトー・ラム党首と会談した際、トー・ラム氏は習近平への挨拶と祝福を伝えるよう頼んだが、張又侠は習近平については言及しなかった。しかし、中共の公式メディアは、張又侠が習近平からのトー・ラムへの挨拶と祝福を伝えたと主張しており、両国の報道には明らかな違いがある。

張又侠とルオン・クオン国家主席の会談では、ルオン・クオン氏が習近平の名前を挙げたが、張又侠は反応を示さなかった。彼はただ、自身が中共中央軍委副主席として初めてベトナムを訪問できたことを喜び、ルオン・クオン氏がベトナム国家主席に就任したことを祝った。

分析 中共は習近平の地位変化の信号を意図的に発信

アメリカ在住の政治分析家、陳破空(ちんはくう)氏は10月26日に大紀元の記者のインタビューを受け、張又侠のベトナム訪問が非常に異例であると指摘した。中共中央軍委副主席は通常、訪問することが少なく、訪問があってもロシアのような大国に限られる。張又侠は過去にロシアを訪れ、プーチン氏と会談したことがあるが、今回のベトナム訪問は特に注目を集めており、彼が受けた高い待遇がこの訪問を特別なものにしている。

陳破空氏は、最近の張又侠と習近平の間に見られる緊張関係や、習近平の軍権が失われつつあるという噂が、習近平や彼の側近である蔡奇、王滬寧(おうこねい)に不満を抱かせていると述べた。また、習近平陣営が党のメディアを通じて、張又侠の訪問に関する情報を抑制し、国内ではほとんど誰もこの訪問を知らない状況を作り出していると指摘した。

彼は、張又侠の異例の突発的訪問が、彼自身または反習近平派が、周辺国との安定を外交的に維持したい意向を示している可能性があると述べた。

アメリカに住む政治分析家の唐靖遠氏は、大紀元の記者に対して、張又侠のベトナム訪問には多くの異常な点があると述べた。まず、ベトナム側の接待レベルは非常に高く、次官の基準を超え、最高指導者に対する礼遇に近いようだ。さらに、張又侠は訪問中に習近平について言及せず、代表団を率いて訪問し、ベトナム側と国境防衛協力協定を締結した。しかし、この高レベルの外交活動に対して、中共メディアは沈黙を保っており、これは非常に珍しいことだという。

前述の政治評論家と同じように、唐靖遠氏もまた、張又侠のベトナム訪問が、習近平の中共内での権力が張に取って代わられた可能性を示唆していると考えると述べた。

唐靖遠氏は、また、習近平の権力に重大な問題が生じた場合、権力の真空状態が発生する可能性があると指摘している。

このような状況が、適切に管理できなければ、中共の高層部が権力争いを引き起こし、社会の激しい動乱を招く恐れがあるともいう。

こうした事態を防ぐために、中共当局は張又侠をベトナムに派遣した。

これは、外国を通じて国内に情報を伝える戦略の一部であり、対外的に情報を発信することによって、最終的には中国国内に影響を及ぼし、政局の安定した移行を目指しているということだ。

唐靖遠氏は、これは中共の意図的な手配である可能性があると述べた。

寧芯
徐亦揚
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