社会問題 「この国はいったい、どうなってしまったのか?」

【動画あり】「給料を払ってください!」 中国低層の労働者が雇用側を殺害か

2024/10/01
更新: 2024/10/01

【閲覧注意】本記事には、残虐な映像や画像があります。ご注意ください。

 

給料を支払ってもらえない労働者が、雇用主を中華包丁で切りつける事件が起きた。

その時の様子を捉えた動画は26日にSNS投稿され、物議を醸している。

映像のなかには、どこかの建築現場で、両手に中華包丁を持ったまま、給料の支払いを求める男の姿があった。しかし、その前に雇用主と思われる横柄な態度の白いシャツの男性が立ちはだかる。包丁の男は白いシャツの男性から罵倒されている様子で、その勢いに押されて少しずつ後ずさっていったと思うと、突然反撃に出た。白いシャツの男性の首筋目掛けて思いっきり中華包丁を振り下ろしたのだ。

白いシャツの男性は首の大動脈を切られたのか、血が大量噴出し、現場は騒然となった。そのまま失血死する可能性が極めて高いと思われる。

動画投稿者は、「覚えておくとよい。例えあなたがどんなに偉くても、社会の底辺で生きる人を絶境まで追い詰めるのでないぞ。支払われなかったその人の給料は、もしかしたらその人の一家が食いつないでいく唯一の頼りなのかもしれないのだから」と書いた。

懸命に働いてきたのに給料がもらえない。明日の食べ物を買うお金がない。他に方法があるのならば、この労働者も殺人という後戻りのできない道を選ばないのだろう。

これが当局が作り上げようとする「(見せかけの)繁栄盛世」の裏にある、リアル過ぎる中国の現実なのである。

関連投稿には、中国の低層に生きる人たちの苦難を嘆く声でコメント欄が埋め尽くされ、「この国はいったい、どうなってしまったのか?」との嘆きが広がっている。

 

(現場の様子)

 

悪意討薪

現代中国語のなかに「悪意討薪(あくいとうしん 恶意讨薪)」という言葉がある。

ネットで検索してみると「中国史上で最も恥知らずな言葉」という注釈が見られた。これだけでは日本人にはよく分からないので、周辺状況から補足しなければならない。この言葉は、どうも中国の官方による造語であるらしく「悪意をもって、給料(薪)を払えとせがむ(討)こと」をいう。

AIの答えは、言葉の由来は、中国の古典にある故事に基づいている。この表現は、敵を討つために薪(たきぎ)を集めるという意味合いなのだが、実際は、

「悪意討薪」とは、どんな意味か?

その語感は非常にわるく、軽蔑的である。例えば「討飯的」というと、道端にしゃがみこんで通行人に食べ物や金銭の施しを求める「特殊な人」を指す。「悪意討薪」には、それに近い感覚がある。

その「悪意討薪」の具体例であるが、中国のネット写真に、どこかの作業現場らしい屋外の場所に「依法理性維権、厳禁悪意討薪」という大きな赤布の横断幕が掲げられていた。

日本語に直せば「法律に則り、理性的に権利を守らなければならない。『悪意討薪』を厳禁する」となる。

一見まともなことを言っているようだが、その意図は全く逆で、この現場の管理者である官方や雇用主は、おそらく出稼ぎ農民がほとんどであろう労働者に対して、以下のように言っている。あえて悪い語感をふくめて再現する。

「お前たち、おとなしくしていろよ。文句があるなら、法的手続きをふまえて言え。悪意をもって、給料を払えなどと要求することは厳禁だ!」

きわめて威圧的な「押さえ込み」である。つまり、この雇用側は、給料未払いで悲鳴をあげる労働者の訴えを想定して、始めから「悪意討薪」で圧殺しているのだ。つまり、もともと給料を払わない雇用者側が悪の元凶であるのに、その悪を棚に上げて、自分の落ち度を攻めようというその点に、悪意があるとして備えろと言っているのだ。

「法律に則り(依法)手続きせよ」と官方や雇用側は言う。しかし、時間も費用もかかる法的手続きが、今日や明日を生きることに必死である出稼ぎ労働者にできるわけがない。

給料未払いを裁判所に訴えるにしても、彼らが原告団をつくり、被害を証明する材料を用意することは極めて難しいのが現状だ。

つまり、報酬を求めない高徳の人権弁護士がいない限り、法的知識に乏しい彼らが「法律に則り」手続きを踏むことは、始めから除外される選択肢なのだ。もちろん官方や雇用側も、それを見込んでいる。

冒頭に述べた「中国史上で最も恥知らずな言葉」とは、そのようなアンフェアな臭気がこの「悪意討薪」に充満しているからに他ならない。

華人圏のSNSには中国各地で発生する「悪意討薪」のハッシュタグがつけられた動画が多く投稿されている。どれをとっても悲惨すぎて、とても直視できるものではない。

動画に映っているのは、低層の労働者たちが、本当に泣きながら「私たちにも生活があります。汗水垂らして働きました。どうかお給料を払ってください」などと書かれた横断幕をひろげ、時には土下座をしてまで、雇用側に給料の支払いを懇願する場面ばかりだ。

仕事をしたら、それ相応の報酬を受ける。雇用側は、遅延なく、正規の給料を労働者に支払う。こんな当たり前のことが実行できないとは、この国はいったい、どうなってしまったのか。

ガス企業の前で土下座し、掲げた横断幕には「農民の出稼ぎ労働者が、働いた血と汗の給料を払ってください(還農民工血汗銭)」と書かれている。

もちろん彼らは「働いたぶんの給料を払ってください」という、正当な権利を主張しているだけなのだ。

それに対して「悪意討薪」などと、全く理不尽な「すり替え」がなされてしまう。ひどい場合は、雇用側から暴力を振るわれたり、警察に拘留される人までいるようだ。

横断幕を掲げて、給料の支払いを求める農民労働者(中国のSNSよりスクリーンショット)

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!