トランプ氏の副大統領候補バンス氏 貧困な幼少期を経て成功した投資家に

2024/07/16
更新: 2024/07/16

7月15日、アメリカ合衆国オハイオ州選出の上院議員であり、トランプ前大統領の熱烈な支持者であるJ・D・バンス氏が、次期大統領選副大統領候補に正式に指名された。この記事では、バンス氏の生い立ちからその政治キャリアまで、そして彼がアメリカの政治にどのような影響をもたらすかを詳細に分析する。

共和党の2024年全国大会は、7月15~18日、ウィスコンシン州ミルウォーキーで開催されている。大会の初日である7月15日に、トランプ前大統領はオハイオ州選出の上院議員であるJ・D・バンス氏を自らの大統領選の副大統領候補として公式に指名した。

13日には、トランプ氏がペンシルベニア州バトラーでの集会で暗殺未遂事件に遭遇した。39歳のバンス氏は、トランプ氏とのイデオロギー的一致が高いと広く認識されている。

オハイオ州選出の上院議員であるJ.D. バンス氏が、トランプ氏の大統領選のパートナーとして指名されました。(大紀元)

貧困な幼少期

バンス氏は、2016年に発表したベストセラーの自伝『ヒルビリー・エレジー』で、アメリカの白人家族の喜びと悲しみ、そして再生について綴っている。この中でバンス氏は、自らが貧困の中で過ごした子供時代の体験も語っている。バンス氏の母親は薬物依存と闘っており、バンス氏は祖母のもとで育った。

バンス氏の選挙キャンペーンのウェブサイトによると、バンス氏はオハイオ州ミドルタウン出身で、かつて製造業が盛んで、住民は一つの収入で中流階級の生活を享受していた町である。しかし、時間が経つにつれて町は衰退し、雇用や経済的なチャンスが減少し、多くの家族や友人、隣人が苦境に立たされた。

バンス氏によると、家庭や学校での混乱をよく目にしてきたという。バンス氏の父親は彼が幼い時に家を出て、母親は一生涯、薬物依存と戦い続けた。祖母はバンス氏にとって大きな支えであり、祖母の厳しくも愛情ある教育と規律が彼を正しい道へと導いた。

祖母からは、信仰と家族の価値を大切にする生き方の重要性と、希望に満ちた未来について学んだ。

その後バンス氏は、海兵隊員としてイラク戦争に参加し、アメリカのために尽力した。オハイオ州立大学を卒業後、イェール大学法学院で法律の学位を取得し、シリコンバレーで成功を収めた投資家になった。彼の著書『ヒルビリー・エレジー』は、Netflixによって映画化された。

本が成功を収めた後、彼はアメリカの労働者階級の強力な擁護者として、メディアに頻繁に登場し、失業、薬物依存、経済の不安定さが、多くの人々の生活を破壊していると訴えた。

2017年にオハイオ州に戻った彼は、シンシナティ市で高収入の仕事を創出する成長企業に焦点を当てた新しい会社を設立した。バンス氏は、アメリカの企業が、中国の不公正な競争に直面している一方で、アメリカ政府はオハイオ州の中小企業よりも国際的なテクノロジー企業を優遇していると批判した。

バンス氏の妻であるウシャ・チルクリ・バンスも弁護士であり、インド系移民の娘としてカリフォルニア州サンディエゴで生まれた。二人はイェール大学で出会い、結婚し、3人の子供に恵まれた。

政界への挑戦とトランプの理念への共感

2023年2月22日、アメリカ合衆国オハイオ州代表の上院議員であるJ.D.バンス氏(左)は、オハイオ州の消防署で開催されたドナルド・トランプ前大統領の演説を視聴していた(写真提供:Rebecca Droke/AFP)

バンス氏は2021年にオハイオ州から初めて連邦上院議員に立候補することを宣言し、トランプ氏の支援を受けて、共和党の指名を獲得した。政治経験は、この時点で、まだなかった。

彼は2022年の選挙で上院議員に選出された。

2023年1月31日には、2024年の共和党の大統領候補予備選挙において、トランプ前大統領を支持すると表明し、その後もトランプ氏の支持を積極的に表明している。

政策面では、バンス氏は貿易関税の支持者であり、特にロシアとウクライナの紛争のような海外での軍事衝突に、アメリカが介入することには反対している。さらに、社会保障制度の削減にも、明確に反対している。

2021年の上院議員選挙活動中、バンス氏はアメリカの中国製品への依存を批判し、製造業を国内に戻すことを政府に要求した。また、バンス氏は、民主党と共和党の両方から支持されている「CHIPSおよび科学法」を支持している。この法案は、半導体製造業に数十億ドルの補助金を提供するものである。

バンス氏は、保守派としての立場が知られており、「The Daily Telegraph」紙の2022年の記事で、「上院議員として、共産主義中国によるアメリカ農地の買収を阻止するため、どのような人物とも協力する用意がある」と述べたことが報じられている。「オハイオ州の市民が食料価格の上昇に苦しむ一方で、中国は、積極的にアメリカの農地を購入している」

報道によると、中国の投資家は2021年に61億ドル(約9826億円)相当のアメリカの土地を購入し、2020年末には、中国の投資家がアメリカの農地35万2140エーカー(約14万2493ヘクタール)を所有しているとのことだ。

バンス上院議員は、中国共産党が長期にわたり通貨操作を行い、アメリカの債権者に利息を支払わないという事実を受け、中国共産党政府のアメリカ資本市場や証券取引所へのアクセスを制限する法案を提出した。

テネシー州の連邦下院議員アンディ・オーグルズ氏は、中国共産党が国際金融、貿易、商業の規則を遵守していないと指摘し、下院に関連する法案を提出した。オーグルズ氏は「上院議員のJ.D.バンス氏と協力して、中国共産党に対するこの重要な措置を講じ、その責任を追及することを誇りに思っている」と述べた。

激戦州のブルーカラー層をつかむ戦略

自分の選挙活動を展開する中で、バンス氏は「ラストベルト」という言葉をしばしば使い、トランプ政権下でのアメリカ製造業の再興を支持する姿勢を見せていた。「ラストベルト」とは、アメリカの北東部から中西部にかけての地域で、ウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルベニア州、オハイオ州、イリノイ州などを含んでいる。20世紀の中頃から、石炭や鉄鋼の産業が衰退し、多くの工場が閉鎖され、それに伴い失業者が増加し、犯罪率が上昇し、人口が減少し、都市の衰退が進み、かつての繁栄が失われてしまった。

労働者階級は、ミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州といった重要な激戦州の中核を成している。オハイオ州出身のバンス氏が持つ地元の強みが、共和党がこれらの州での選挙に勝つための一助となるかもしれない。

オハイオ州南西部の共和党州党首アレックス・トリアンタフィロウ氏は、「バンス氏の経歴は本当に注目に値する。共和党はもちろん、オハイオ州にとっても、これは大変良い知らせだ」と述べた。

15日の朝、共和党の朝食会議を終えた後、オハイオ州の検事総長デイブ・ヨスト氏は、トランプ氏の選挙での副大統領候補、バンス氏の選出が州にとって良い影響をもたらすとの見解を示した。

「バンス氏は非常に強い人物だ」とヨスト氏は語り、「恐れを知らないリーダーシップを持っている。彼の背景には魅力を感じる。彼はまさに、ケンタッキー州の山間部で何もないところから出発し、オハイオ州ミドルタウンで成長した…多くのアメリカ人が経験しているような生い立ちを持つリーダーは、非常に貴重だ…彼は名門アイビーリーグの大学へ進学したが、裕福な家庭から来たわけではない」と述べた。

2024年7月15日にミシガン州デトロイトで開催された「ターニングポイント:ピープルズ・コンヴェンション」では、トランプ氏とバンス氏をデザインしたTシャツが目撃された(Jeff Kowalsky/AFP via Getty Images)

 

 

 

林 南
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