有名店が3年にわたり、前客の「食べカス油」で火鍋を提供=中国 安徽

2023/12/17
更新: 2023/12/17

日本でも人気の中華料理のメニューに「口水鶏(よだれ鶏)」という鶏肉の揚げ物がある。もちろんこちらは何の心配もなく、おいしく食べられるが、料理に関係した最近の中国語に「口水油」というものが出てきた。

お食事前の読者各位には恐縮であるが「口水油」とは、例えば、中国のごく一部の火鍋店で「前の客が食べ残した鍋のスープを捨てずに回収し、そこから油を集めて、次の客の火鍋に入れる」ということだ。言わばスープの油を再利用して、何回になるか想像したくもないが「使いまわし」することを指す。

他人の唾液(口水)が混入しているという、まことに不衛生で、吐き気をもよおすようなスープであるが、この「口水油」が新語となっている。つまりそういう実態が、中国にあるということなのだ。

その一例が、これである。

安徽省淮南市にある地元では有名な火鍋店「入川毛肚火鍋店」が、約3年にわたり「前の客が残した鍋スープ」を集めて濾過した後、油を回収して、再度顧客に提供していたことがわかった。

このことは事件にもなり、関与した責任者は罰せられ、判決が下された。関連トピックスは中国の大手検索サイト百度(バイドゥ) のホットリサーチ(12月12日)入りしている。

2017年4月に開業したこの火鍋店は、コストを削減するため2019年1月~2021年10月までの約2年10か月間、投資者である「牛」と経営管理を担当する「王」のほか、料理長や裏方の厨房スタッフ、ホールマネージャーなどが協力して「食べ残しスープの回収、再利用の作業」を行っていたという。

やり方としては、前の客が食べ残した火鍋のスープを回収した後、こし器付きのバケツに注ぎ、火鍋の具などの残渣をろ過した後、上部に浮いた油を回収し、保存する。翌日、この油を別の客が注文した火鍋のなかに加えて提供し続けた、という。

これを、火鍋の専門店が常習的にやっていたのである。

この「口水油」つまり「食べカス油」と呼ぶべき再生油を使った火鍋の、この店での売り上げ金額は、2年10か月で170万元(約3450万円)に上るという。

現地裁判所は、牛や王ら13人の被告に対し「口水油は、地溝油(ちこうゆ)の一種であり、同火鍋店は有毒かつ有害な食品を生産し、販売した」として、それぞれ懲役12年~1年の刑を下した。

このほか、被告個人には125万元~2千元(約2537万円~約4万円)の罰金を命じ、火鍋店には512万元(約1億円)の賠償を命じた。

 

中国の大手検索サイト百度(バイドゥ) のホットリサーチ(12月12日)リスト。(百度HPよりスクリーンショット)

 

中国では以前から、食品安全の問題が深刻な社会問題になっていた。

闇業者が排水溝や下水溝に溜まったクリーム状(あるいはスカム状)の廃油を回収し、濾過して精製した食用油「地溝油(ちこうゆ)」が中国の市場に大量に流通していることは、もはや誰もが知る一般常識にすらなっている。(地溝油採取現場、関連動画はこちら

 

屋外の残飯入れの中から、廃棄された油を回収して「養生スープ」と書かれた店内へ運び入れる店員たち。(SNS投稿動画よりスクリーンショット)
ヘッドランプをつけた男が、夜中に街中の残飯入れやゴミ箱のなかから、油を回収してバケツに入れ、車に積んでいる。こうして回収された油が「地溝油」になる。(SNS投稿動画よりスクリーンショット)

 

そうした「地溝油」があまりにも中国に蔓延しているからこそ、自分の店で「口水油(食べカス油)」の火鍋を提供しても「客にバレずに、儲かれば良い」と考えてしまうのだろうか。

あるいは、「口水油」は排水溝やゴミ箱から回収する「地溝油」より罪の意識は軽い、などと身勝手な理屈をつけているのかもしれない。しかし、そこに恐るべき落とし穴があることに気づいていないのだ。

それらは、中国の輝かしい食文化に対する冒涜であり、重大な背任行為である。

「世界三大料理」とは、フランス料理、トルコ料理、中国料理を指すという。それらはいずれも古くからの伝統と歴史を擁する、人類の輝かしい文化遺産であるはずだ。

その一つである中国料理(中華料理)の現状は、どうであるか。いまや中国でそれを食べることは、例えば海外からの観光客にとって「毒を盛られる」にも等しい危険行為になっている。フランスやトルコに、そんな不道徳な店はない。まことに世界に恥ずべき現状であると嘆くばかりだ。

言うまでもないが、人が口にする「料理」は、絶対的に「道徳を具現化したもの」でなければならない。

食文化は、いずれの国であってもそうして育まれ、国民を健康にしてきたからだ。おいしく安心して食べられることの幸福感なくして、人は決して幸せにはなれないだろう。

お母さんが子供のために作る料理に「地溝油」や「口水油」は絶対に使わない。その一点を忘れなければ良い。もとより難しいことではないはずだが、中国の現状は、あまりにもそれとかけ離れている。

 

(隠し撮りした「地溝油」の採取現場。2023年11月16日、広東省深センの飲食店の排水溝から廃油を掬い上げている)

 

(一部の中国食品の製造現場。極めて不衛生な環境である)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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