安価でトレンドアイテムが手に入るとして、日本でも急成長を遂げている中国のファストファッションブランド「シーイン(SHEIN)」。しかし、過酷な労働環境やデザイン盗用など多くの問題点も抱えている。こうしたイメージを払拭するため、SHEINは米国のインフルエンサーたちを中国の工場に招いたが、火に油を注ぐ結果となった。
SHEINは6月、6人のファッション・インフルエンサーを中国広州の工場に招くツアーを実施した。旅費などはすべてSHIEN持ちで、インフルエンサーたちはビジネスクラスや一流ホテルでの宿泊など、手厚いもてなしを受けたとされる。
SHEINとインフルエンサーたちがSNSで共有した動画によれば、彼女たちは工場を訪れた際、SHEINの製品がどのようにデザインされ、製造され、包装されているかを見ることができたという。
工場見学に参加したインフルエンサーの一人、カルボナリさんは動画の中で「人間が運営するのではなく、テクノロジーとオートメーションに基づいていることに驚いた」と語った。
また、カルボナリさんがインスタグラムの個人アカウントで公開した別の動画(現在は削除されている)では、自身は「調査ジャーナリスト」だとし、「米国で広まっているすべての(強制労働などの)うわさに驚いている」と主張するSHEINの工場労働者の話も取り上げた。
最後に「この旅から私が得た最大のものは、独立した考えを持ち、事実を知り、自分の目で見ること。米国では、(SHEINについて)与えられた物語がある」と言い、この旅は「真実を求める」ためでもあったと付け加えた。
プロパガンダ
TikTokで400万人超のフォロワーを抱えるスーダスさんも工場見学に参加し、「工場内では奴隷のように働いている人で溢れていると思っていたが、実際には、ほとんどがロボット化されていたことにとても驚いた」と語った。「みんな普通に働いていて、冷静で、座っていて、汗もかいていなかった」
また、他のインフルエンサーたちも投稿した動画の中で、工場の従業員たちは仕事に見合った賃金を得ていると主張し、児童労働や非人道的な状況についての報告を真っ向から否定した。
こうした投稿に対して、多くのユーザーからインフルエンサーたちに「中国のプロパガンダ」「社会法を悪用している会社をどうして支持できるのか?」などと批判の声が寄せられている。
昨年10月に発表された英国のチャンネル4による調査報道「SHEINマシーンの裏:語られない事実」によれば、SHEINの労働者は1日18時間の労働を強要されるほか、休みも月に1回程度しか取れないうえ、失敗したら賃金不払いのペナルティを課されていたことを明らかにした。
広州市にある縫製工場に隠しカメラと共に潜入した記者は「労働者は犬のように扱われている」と語っている。
また、2021年にはスイスのNGO団体パブリック・アイが、現地の労働法に反して危険な労働環境で従業員を働かせていると指摘した。1週間の労働時間が 44 時間を超えてはならないと定める中国の労働法を無視し、SHEINは従業員に週75時間の労働を強要し、月に1日しか休みを与えていなかった。また非常口がなく、窓には鉄格子がはめられていたという。
デザインの無断使用も
SHEINはそのほか、品質問題やデザインの無断使用などでも指摘されている。
過去2年間で、SHEINは少なくとも米国で商標権・著作権の侵害に関する50件の訴訟を提起されている。ジーンズを扱うリーバイ・ストラウス(リーバイス)やラルフ·ローレン、ドクターマーチンなどの大手も含まれている。
また、安全性も取り沙汰されている。カナダ保健省は2021年、SHEINの子供用コートに基準値の20倍近くの鉛が含まれていたとして回収を呼びかけた。
反発を受けて、インフルエンサーのカルボナリさんは、ツアーに参加する前に「もっとリサーチすべきだった」と認める12分のビデオを投稿した。
SHIENの広報担当者もCNNに対し、「SHEINは透明性を重視している。今回の訪問はフィードバックに耳を傾ける一つの方法であり、工場への訪問を通じてSHEINがどのように機能しているかをインフルエンサーのグループに示し、彼ら自身の洞察をフォロワーと共有する機会を提供するものだった」と述べた。
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