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なぜ米国は鳥インフル発生から4年目に突入しても数百万羽の鶏を殺し続けているのか

2025/03/24
更新: 2025/03/24

アメリカは、高病原性鳥インフルエンザのほぼ連続的な発生から、すでに4年目に突入した。

同国の主要な農業機関や公衆衛生機関の指導者が交代したにもかかわらず、政府は引き続き、病気の拡大を抑えるために数百万羽の鳥を殺処分する戦略を続けているのだ。

エポックタイムズの取材を受けた高官の話によると、殺処分が続いているのは、他に有効な選択肢がないからだという。

アメリカ農務省はこの戦略を「撲滅」と呼んでいる。

鳥インフルエンザ(鳥インフル)は1990年代に中国で初めて確認され、その後、渡り鳥を通じて世界中に広がった。

この病気は、2014年にアメリカに初めて襲来した。その際、アメリカは「撲滅」戦略を成功させ、1年以内に鳥インフルエンザの発生を食い止めた。

その経験を受けて、2017年に正式な鳥インフルエンザ対応計画を策定した。その計画は現在も続いており、アメリカが、鳥インフルエンザの発生に対して、優先的かつ主要な戦略となっている。

アメリカ農務省によると、2014年の大流行では、鳥インフルエンザ患者の70%が農場から農場へと広がり、農場間の感染は、労働者や機材が一つの農場から別の農場へ移動する際に、病気を持ち込むことで発生して、他の鶏に広がった。

鳥インフルエンザに関する全米屈指の専門家であるキャロル・カルドナ氏は、アメリカの卵産業は、その経験から学び、農場間の感染を減らすためにバイオセキュリティ対策を大幅に改善したと述べた。

アメリカ農務省のデータによれば、農場間の感染は、2023年初めには15%に減少したと言う。

ミネソタ大学獣医・生物医学科のカルドナ教授によると、病気は2015年以降に変異しており、現在では野生の鳥や、病気を鶏舎に持ち込む可能性のある家畜や野生動物によって、農場に広がっていると述べ、また彼女は、病気が野生の鳥の間で常在化、つまり定期的に発生するようになりつつあると語った。

3月5日に発表したアメリカ農務省の統計によると、ウイルスを根絶するためのアメリカ農務省の努力により、2022年2月に最新の流行が始まって以来、少なくとも1億6600万羽が淘汰と病気によって失われ、この病気が、現状、アメリカの卵産業に危機をもたらしているのだ。

多くの卵を産むことができる鶏や未成熟な鶏が失われたため、卵の供給が減少し、卵の価格が過去最高水準まで上昇した。

5日、米下院監視・政府改革委員会の公聴会で、ラジャ・クリシュナムーティ下院議員(民主党)が卵のコストを記したポスターを指差している Kayla Bartkowski/Getty Images

2月28日のアメリカ農務省の最新の報告によると、現在の卵の卸売価格は1ダースあたり8.05ドルとなっている。

大量の殺処分とそれが卵供給に与えた劇的な影響を及ぼしている。感染症の発生に明らかな減少が見られない中で行われているため、殺処分計画への批判が高まっている。

COVID-19に対するアメリカの公衆衛生のアプローチに対して、懐疑的なことで知られるワクチンの先駆者、ロバート・マローン博士は、カルドナ教授の見解に同意し、病気が常在化しつつあると述べた。

彼は、現在のプロトコルが、必要以上に主食のコストを引き上げ、インフレに関連する政治的緊張を助長していると述べている。

「殺処分は、基本的に資源の浪費だ」とマローン氏はエポックタイムズに語った。「もう何の効果もない。だから、何かが繰り返しうまくいっていない時は、別の政策を考え直すべきだろう」

なぜ殺処分が続くのか

卵の価格は、すでに上昇している生活費と相まって、ワシントンでの行動に拍車をかけている。ドナルド・トランプ大統領は、卵の価格をできるだけ早く引き下げるようアメリカ農務省に指示した。

3月4日の議会合同演説で、トランプ氏は前政権を非難し、「ジョー・バイデンが特に卵の価格を制御不能にさせた」と語った。

また、ブルック・ロリンズ農務長官は「前政権から完全に混乱を引き継いだ」とも言った。

ホワイトハウスからは、殺処分の中止や制限を求める声が上がった。

2月26日、アメリカ農務省は、10億ドル規模の取り組みを開始し、トランプ氏が1月に就任する前に行っていた鳥インフルエンザ対策や政策の大部分を継続することを発表した。ホワイトハウスからは、殺処分を止めるか制限する動きも出ている。

2月16日にCBSの「フェイス・ザ・ネイション」に出演したケビン・ハセット氏、国家経済会議のディレクターは、バイデン政権のアメリカの農務省が、「病気の鶏を見つけた場所で、鶏を無差別に殺している」と述べ、彼は殺処分の代替策を見つけるべきだと提唱した。

マローン氏は、農場で病気が自然に進行するのを許し、その後免疫を持つ生き残った鶏を繁殖させるべきだと提案した。

または、鳥インフルエンザに対してより強い耐性を示した伝統的な品種の鶏を調査し、それらを繁殖させて長期的な解決策を見つけるべきだとも述べたのだ。

先月10日にヒューストンの Wabash Feed & Garden ストアで販売される鶏Moises Avila/AFP via Getty Images

アメリカ農務省のある高官は、エポックタイムズに、アメリカ農務省は別のアプローチに前向きだが、今のところ有効なものは見つかっていないと語り、同高官は、鳥インフルエンザは鳥にとって非常に致命的な病気であり、2012年にアメリカ獣医病理学会は、この病気のH5およびH7亜型が、「鶏に対して重篤な全身性の病気を引き起こし、ほぼ100%の死亡率を持つ」と結論を述べた。

その高官は、殺処分以外の方法がほとんどないとも語った。

アメリカ農務省によると、これまで病気の鳥から健康な鳥を隔離しようとしたすべての試みは、最終的に健康な鳥が感染し、死亡する結果に終わったと言う。集団免疫の開発に関しては、アメリカ農務省が、野外で自然免疫を作ろうとするのは、非常に危険だと考えている、と同高官は付け加えた。

制御されていない、未処理の鳥インフルエンザが商業用鶏舎で自由に流通することは、他の鳥に広がる重大なリスクとなり、変異して人間を含む他の動物に広がる可能性もある。

そのため、ウイルスに感染した動物を隔離し、発病した場合に人道的に安楽死させることができる管理された実験室環境で、より耐性のある品種の開発に取り組むことを奨励していると述べた。

これに加えて、遺伝子編集技術が、鳥インフルエンザに強い遺伝子を開発する効果的な方法となり得ると、同高官は解説した。

2022年3月24日、ウィスコンシン州マディソンにあるウィスコンシン大学マディソン校のウィスコンシン獣医診断研究所にて、鳥インフルエンザの有無を調べるため、制御域にある農場から採取された家禽サンプルを検査する微生物学者 Scott Olson/Getty Images

賠償金の支払い

2023年2月26日に農業・栄養・森林委員会の前で行われた証言で、インディアナ州に拠点を置く卵生産業者ローズ・エーカー・ファームズのCEO、トニー・ウェスナー氏は、進行中の危機に対する卵産業の見解について詳述した。

全国卵生産者団体であるユナイテッド・エッグ・プロデューサーズを代表して、委員会に召喚されたウェスナー氏は、鳥インフルエンザに農場が感染した場合、殺処分は「義務」であると述べた。

続けてこれは、動物健康保護法に基づく規定だと彼は言い、この法律により、農務長官は病気の動物を破棄する命令を出し、その動物の「公正市場価値」に基づいた賠償金を所有者に支払う権限が与えられている。ガイドラインにもそう定めていた。

もし農場が鳥インフルエンザを発見した後に鳥を殺処分しない場合、農場は政府からの損失回復や運営再開の支援金を受け取る資格がないと規定された。ウェスナー氏によると、今回の大流行が始まってから2024年11月末までに、連邦政府から支払われた賠償金の総額は約12億5千万ドルだという。

ウェスナー氏は証言で、賠償金は「政府の価値補填は生産者の損失の一部しか補償しない」と述べ、彼は、「補償がなければ、多くの農場は生産から撤退する可能性が高い」と言った。

しかし彼は、アメリカ農務省がその賠償金の計算に使用している現在の計算方法を「不十分だ」と批判し、さらに、もしアメリカ農務省がユナイテッド・エッグ・プロデューサーズが推奨する最新の計算式を使ったとしても、その高額な賠償金は「生産者の損失を十分に補うものにはならないだろう」と付け加えた。

2月26日、アメリカ農務省は賠償金として支払われる金額を4億ドル増額すると発表した。

同機関は、同局は、「回復を早めるために、承認プロセスを簡略化する方法など、再増殖の速度を加速させるための」新たなプログラムを模索していると述べた。

アメリカ農務省 Madalina Vasiliu/The Epoch Times

長期的な課題

農場のバイオセキュリティ強化は、アメリカ農務省が鳥インフルエンザに対応する新しい計画の重要な柱だ。ゆえに、アメリカ農務省は2月末に、アメリカのすべての家禽生産者のための最高水準のバイオセキュリティ対策に最大5億ドルを充てると発表した。

アメリカ農務省の高官によると、鳥インフルエンザを農場に持ち込ませないことが、感染拡大を防ぐ最も有効な方法であるため、バイオセキュリティは、病気の管理において最も重要な側面だと述べた。

次の段階として、この病気の拡大を抑え、鳥の死亡数を制限するためにワクチンを使用することが考えられる。

ウェスナー氏は証言で、卵産業は病気をコントロールするために「積極的な」ワクチン戦略を採用したいと述べ、カルドナ氏は、病気が常在化する場合、ワクチン接種が必要になるだろうと同意した。

しかし、ワクチン接種を決定することは、重大な国際貿易の問題を引き起こし、さらに難しい公衆衛生の問題を引き起こす可能性がある。

ワクチン接種は、はるかに大きな鶏肉産業に深刻な影響を与えるだろうと言い、加えて、アメリカ家禽鶏卵輸出協会のグレッグ・D・タイラー会長兼CEOは、ワクチン接種を受けた鳥から作られた家禽製品が知らずに病気を広める恐れがある。

この懸念から、58億ドル規模の家禽輸出事業のうち最大30億ドル分が、アメリカからの家禽製品の輸入を、停止する可能性があると述べたのである。