米中央情報局(CIA)は2025年2月4日、全職員を対象に早期退職を勧奨する通知を出した。トランプ政権が進める連邦政府の組織改革の一環とみられ、退職者には9月末までの給与と福利厚生が支給される。複数の米メディアが報じた。今回の改革で、従来の「テロ対策」中心の方針から「中国を主要な仮想敵国と位置付ける」と見られる。
早期退職プログラムの詳細
CIA職員は2月6日までに退職の意思を回答するよう求められ、応じた場合は9月30日まで給与を受け取りながら職務を離れる「延期された退職(deferred resignation)」を選択できる。この措置は、トランプ政権が1月下旬に発表した連邦政府職員向けの退職勧奨策を拡大したもので、当初は国家安全保障関連職種が除外されていたが、ジョン・ラトクリフCIA長官が組織改革のため対象に加えるよう決定した。
背景にある政権の意図
トランプ政権は「連邦政府の効率化」を掲げ、イーロン・マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」を通じて官僚機構の縮小を推進している。CIAでは麻薬カルテル対策や中国への対抗を新たな優先課題として掲げ、従来のテロ対策中心の体制からの転換を図る狙いがあるとされる。今回の措置は冷戦終結後やテロ対策拡大時と同様、組織の戦略転換に伴う人員再編の一環と推測される。ラトクリフ長官は「CIAに新たな活力を注入する」と声明で述べ、内定者の採用凍結や経歴審査の厳格化も実施している。
現場の反応と懸念
現時点で退職を希望する職員数は不明だが、連邦職員組合は「法的根拠が不透明」としてマサチューセッツ州連邦地裁に差し止め訴訟を提起した。国家安全保障の専門家からは「経験豊富な要員の大量離脱が分析能力を低下させる」との指摘も出ている。
今後の展開
CIAは1990年代の冷戦終結後、2001年の同時多発テロを機に対テロ作戦を拡大。今回の改革で中国を主要な仮想敵国と位置付け、技術監視や諜報活動の強化を目指すとみられる。一方、民主党のティム・ケイン上院議員は「職員が政権への忠誠を強要されるリスクがある」と懸念を示している。
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