五毛党、インフルエンサー…今も昔も変わらぬ中共「愛国ビジネス」

2023/01/07
更新: 2023/01/09

「愛国商売」は大衆扇動を好む共産党政権のビジネスだ。古くは毛沢東時代の党機関紙にみられるが、今日ではSNSのインフルエンサーや五毛党に姿を変えた。世論工作で金銭を得るといった手法は昔から変わらないと、中国評論家の秦鵬氏は指摘する。

広告費にささえられる愛国商売

現在中国のネット上には、「五毛党」と呼ばれる世論工作を担当するネット書き込み隊や、当局の世論操作・形成を支援してアクセスを稼ぐ「愛国大V(ネットインフルエンサー)」らが大勢いる。彼らは「愛国」や「ナショナリズム」に関する情報発信を行い、フォロワーを集め、広告費で収入を得ている。

中国共産党による長年の洗脳教育で、中国人にとって「愛国心」こそが至高となった。「愛国」の看板を掲げ、大衆を扇動する「愛国商売」は中国国内でうけが良く、当局にとっても都合がいい。

「自分が悪いことをしているという自覚はあるが、それでもお金を稼ぐためにやっている」。そう語るのは、「愛国商売」で収入を得ているセルフメディアの動画投稿主だ。彼は、動画投稿サイトやSNSの公式アカウントなどで活動しており、フォロワーの合計人数は50万を超える。

昨年末、動画投稿主は「年末だし、セルフメディアでの収入を明かすとしよう。この時代に感謝だ」と題した文章で収入を公開し、注目を集めた。投稿された画像から判断するに、その収入は121万元、日本円にして約2300万円以上にのぼる。その後、文章は消去された。

基本的な投稿主の仕事は、外国のニュース記事を読んで編集し、都合のよい部分だけを切り取る。そこに何らかの陰謀論を付け足し、BGMや解説とともに動画を投稿する。こうして、一つの動画に対し3~10万の再生回数は維持できるという。

成功例の一つに、中国のオンライン医療サービス「丁香医生」に対する魔女狩り行動を取り上げた。投稿主は、「丁香医生」に外国勢力が関与しているとレッテル貼りして、「中医学を汚した」などと批判。すると、これが高い閲覧数を獲得したために漢方薬会社と契約。一度に3か月分の収入を稼いだという。

投稿主は以前、海外留学から帰国した後、いったんは地元の国有企業に就職したが、仕事に嫌気がさしていた。ちょうどそこでSNSでの愛国商売の繁盛ぶりをみて、勤めていた会社をやめて愛国商売を始めたという。

「留学前、私は長く愛国セルフメディアを見ていて、彼らの言っていることを信じていた。しかしいざ国を出ると、世界は彼らが言っていたようなものではないことに気づいた。それでも帰国後、愛国セルフメディアの成長の勢いがすさまじいのを見て、自分も愛国路線を試してみたところ、これがまさかの大成功だった」

中国の政治・経済に詳しい評論家の秦鵬氏は、中共官製メディアや「五毛党」はこれまで、「資本家=吸血鬼」、「アメリカ=悪」、「NGO組織=公共の福祉を口実にカラー革命を行う組織」といったもので、世間知らずの愛国市民(粉紅)を洗脳してきたと指摘。

愛国セルフメディアはこうした言論を利用しながら、「陰謀論やデタラメな話を付け足して視聴者を騙し喜ばせる」ことで、アクセスを稼いでいるという。

秦鵬氏によれば、彼ら「愛国大V」や「五毛党」たちは物事の真相を認識できており、心の中では何もかもわかっている。しかし、「反米は仕事、渡米は生活」という言葉に例えられるように、彼らはただ仕事をしているにすぎないのだという。

現在、中国では新型コロナウイルスの感染爆発で医療系統や葬儀場が大混乱に陥り、薬不足も深刻化している。こうした状況を受け、米国は中国に対して「援助を求められれば、支援する用意がある」と申し出るも、中国当局は「中国には体制上の優位があるので、援助は必要ない」と支援を拒否した。

中国各地で薬不足に陥っているにもかかわらず、なぜ中共当局は米国の援助を拒否したのか。秦鵬氏は、「中国共産党こそ『愛国商売』において勝ち組でなければならず、米国に助けてもらうわけにいはいかない、というのが理由だろう」と語る。

中国共産党は政権を握って以来、「幸福は党によってもたらされ、不幸は全て『米帝(アメリカ帝国主義)』などの外国勢力によってもたらされた」と主張し、中国国民にその考えを植え付け、信じ込ませてきた。

「いまさら米国の助けを借りて感染爆発を乗り越えてしまったら、共産党統治の基盤が揺らぎかねない。そうなると、愛国商売もうまくいかなくなるだろう。中国共産党にとっては、政権維持がなによりも大事で、国民の命は眼中にない」

建国の立役者たちは本当の愛国者?

なかには、「こんにちの中共高官はみんな(愛国商売で)大富豪になったとしても、毛沢東や周恩来ら建国の立役者たちは、本当の愛国者ではなかったのか?」と考える方もいるだろう。

秦鵬氏は、中国当局が機密解除した記録文書に基づき、「彼ら共産党の建国者たちも、『愛国商売』をしていただけだった」と結論づける。

著名作家の中国人女性、張戎(チアン・ユン)氏の世界的ベストセラー『マオ:誰も知らなかった毛沢東』は、大量の証拠や緻密な調査に基づいて、毛沢東の本当の姿を描き出した。

本の中では、毛沢東がいかにして「建国ビジネス」をしていたのか、中共の建国者たちがいかにして革命の旗印の下で財を成したのか、について詳しく書かれている。

例えば、著者とその夫であるイギリス人歴史学者ジョン・ハリデイ氏は、当時国際的な共産主義活動を指導していたコミンテルンのディミトロフ書記長のファイルの中から、「ソビエト連邦から30万ドルを受け取った」という毛沢東の署名入り(署名日は1938年4月28日)領収書を見つけた。この金額は、2005年時点の400万ドル(当時のレートで約4億4千万円)に相当する。

中国共産党が結成した1921年、ソ連の代表らは上海に赴き、中国共産党に対し「第1回党大会」を開くよう求めた。上海は7つの地域からそれぞれ2名の代表を派遣するよう通達し、一つの地域につき旅費として200元の銀貨を支給した。

200元の銀貨というのは、当時の小学校教師の給料の2年分に相当する大金で、長沙地域の代表だった毛沢東はこの時に初めて、ソ連から正式な資金援助を受けた。

「第1回党大会」後、共産党は毎月、活動経費として毛沢東に60~70元の銀貨を支給した。その後、支給額は100、160、170元(銀貨)と上がっていき、多額の定期収入は毛沢東の生活を根底から変えることになった。

小学校で教師として勤め、新聞に寄稿するなどして生計を立てていたほど貧しかった毛沢東は、一躍して「プロの革命家」に。それまでの職を捨て、夢のような生活を享受するようになった。

中華人民共和国が成立したのちも、毛沢東ら高級幹部たちは引き続き特権を享受した。毛沢東が実行した「大躍進」政策によって数千万の国民が餓死した時でさえも、毛沢東の食事メニューは豪勢なものだった。毛沢東はまた、全国に61の邸宅を持つにいたるほど奢侈を極めた。

かつての「建国ビジネス」の手法は、「愛国ビジネス」となった今でも何一つ変わらない、と秦鵬氏は指摘する。

「『上に立つ人が正しくなければ下の者も悪くなる』といわれるように、『愛国ビジネス』で真に大儲けしていたのは中国共産党なのだ」

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
王天雨