バチカン、今月初めに訪中 司教任命で暫定合意を再延長へ=報道

2022/09/14
更新: 2022/09/14

米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)14日付によると、キリスト教カトリックの総本山バチカン(ローマ教皇庁)の国務長官であるピエトロ・パロリン枢機卿はこのほど、バチカン代表団が今月初め中国訪問をしたと明らかにし、司教任命権を巡る中国との暫定合意を再延長する方針を示した。

バチカンと中国は2018年、中国の司教任命に関して教皇が最終的に任命することなどで暫定合意した。20年に双方は暫定合意を2年延長することを決定した。ただ、暫定合意の具体的な内容は公表されていない。

20年当時、合意延長を巡りバチカン内部からは、中国共産党政権が合意を名目に中国の地下教会の信者や司教らに対する圧力を強めるとの懸念が出た。米国のポンペオ国務長官(当時)はツイッター上で、「バチカンの道徳的権威を危険にさらす」と批判した。

VOAによると、バチカンと中国は暫定合意の協議を「極秘に行った」。協議に参加した双方の政府高官リストは公開されなかった。中共ウイルス(新型コロナウイルス)が大流行する前、双方は複数回にわたり交渉し、バチカンも複数回代表団を中国に派遣した。パンデミック以降は中国訪問は中断された。

イタリアの宗教社会学者、マッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)氏は「暫定合意を巡る交渉をよく知る人物は20人を下回るだろう。バチカン側は教皇と交渉参加者だけが合意の内容を把握している」と話した。

イントロヴィーニャ氏は信教の自由に関するオンライン雑誌「ビター・ウィンター(Bitter Winter)」の編集長。同氏は中国政府の当局者が同サイトに提供した内部資料の中に、新疆ウイグル自治区やチベット自治区の人権問題を巡る情報はあるが、「合意内容に関する情報はない」とした。

イタリアメディア「アジアニュース」の前編集者、ベルナルド・セルヴェレラ(Bernardo Cervellera)神父は、中国国内の教会の実態を知るために、バチカンは合意内容を公開すべきであり、合意に関する議論を認めるべきだと主張した。

イントロヴィーニャ氏は、「暫定合意の再延長は信教の自由に関する中国政府のプロパガンダに迎合する。中国は、バチカンが中国に信教の自由があると認めていると主張できる」と述べた。同氏は、暫定合意には中国政府に拘束された聖職者らの釈放を求める内容が盛り込まれていないと批判した。

同氏は、バチカンは中国人キリスト教信者への関心が低いとした。18年に暫定合意した後、中国政府が政府系教会への加入を拒否した地下教会の信者や聖職者らを拘束したにもかかわらず、バチカンは抗議しなかった。

今年5月、香港警察はカトリック香港教区の元司教で、現在名誉司教の陳日君(ジョセフ・ゼン)枢機卿を含む4人を、香港国家安全維持法(国安法)違反の疑いで逮捕した。バチカンのマッテオ・ブルーニ広報局長は、「教皇庁は陳枢機卿の逮捕の知らせに不安を覚え、今後の展開に極度の関心を持って見守る」との声明にとどまった。

VOAによれば、バチカンの国務長官パロリン枢機卿は、陳枢機卿の逮捕が中国との暫定合意の再延長協議に影響を及ぼすことを不安視した。

イントロヴィーニャ氏は、中国に批判的な陳枢機卿は同性愛や離婚問題に関して教皇を非難したことがあるため、バチカンに「歓迎されていない」とした。

「バチカンはウクライナ情勢などで声明を公開したことはあるが、中国の香港や新疆問題に関して公の立場を表明したことがない。一部では、バチカンと中国の暫定合意に、バチカンに中国批判を禁止するという内容が盛り込まれているのではとの意見がある」

いっぽう、8月に武漢市で開催された中国天主教第十次全国代表会は、中国天主教愛国会の主席と中国天主教主教団の主席を新たに選出した。中国天主教愛国会は中国政府の管轄下にあるカトリック教会だ。

中国メディアによると、同会は愛国主義とカトリック教会の中国化、『習近平思想』教育の強化を強調した。バチカンとの暫定合意に関しては言及しなかった。
 

張哲
張哲
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