「安くて性能も良い」中国メーカーの電子機器。そこには危険も潜んでいる。ブログ「僕とネットショッピング」の管理者は2017年1月、通販サイトで中国製ネットワークカメラを購入したと投稿した。しかし、管理者や家族はすぐさま異変に気付いた。「操作していないのに勝手に追うようにして動いている」「中国語らしき言葉が聞こえてくる」という。管理者は気味悪さから、製品を返品した。
金盾、雪亮、天網、平安城市、智慧公安など、これらの中国官製監視システムは、中国国内で個人情報を収集してビッグデータを構築してきた。これらは最近、海外にも広がっており、日本のブロガーが体験した監視カメラの「異変」も、その監視網の一片を見たのかもしれない。
創業当初から人民解放軍との繋がりがあるファーウェイ(華為、HUAWEI)や、中国大手SNS微信はそれぞれ、中国当局に利用者情報を提供している。
こうした背景から、海外のユーザーや国会議員たちは、中国のIT技術によるプライバシー侵害を懸念している。人権専門家は、中国の監視技術の海外への輸出は、国際社会に注目されるべきだと主張している。
インターネットはサービス開始から人々にもたらしてきた「自由で開かれた情報網」というビジョンとは真逆に、中国共産党政府は国内インターネットで主権を握ってきた。
中国国民が閲覧したりサービスを受けたりできる内容は、共産党政府の検閲を通して決定した内容に限定されている。同時に政府は、収集したデータを政治的意向で操作したり利用したりできる。
参考:教室にAIカメラを設置「生徒の集中力を監視」=杭州の中学校
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人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国担当マヤ・ワン(王松蓮)氏は、ワシントン・ポストの取材に対して、中国IT技術による情報収集に対して、ほかの国の政府は厳しく計画的な行動をとるべきだと提言している。
「中国政府が超法規的なオーウェル(超監視社会)政策を実施し、国外にその手法を輸出しているのは、驚くことでもない」「脅かされているのは中国人の自由のみならず、全世界の国民の自由だ」と語った。
輸出される中国監視システム
近年、中国で生産された監視カメラや映像解析システムは、英国、ブラジル、エクアドル、ケニア、エチオピアなど、数多くの国に輸出されている。
中国紙・南華早報によると、AIで個人認証サービスを提供する中国国営の新企業・〇世科技(Questyle Audio technology、〇は日へんに廣)は、東南アジアで事業拡大を狙っている。
海外政府のインフラ調達プロジェクトへの入札に加えて、中国の監視装置もまた、Amazonやebayなどネット商取引会社を通じて、一般家庭にも届いている。
Amazon.comの監視カメラのベストセラーリストには、深圳慧眼視訊(Shenzhen Smarteye Digital Electronics)や、小蚁公司(YI Technologies)など、多くの中国企業が上位にランクインしている。
日本語のAmazon.jpにも、中国企業の出展品がほとんどを占める。中国製品の多くは安価であり、入手しやすい。他国企業の半値以下で売られていることもある。
5000円の中国の監視カメラでも、機能は米国のものと遜色ない模様。ある中国企業のカメラの性能評価には、4700件を超えるユーザーレビューがあり、高評を得ていた。
ただし、レビュー上位のユーザーは、プライバシーに関する問題について懸念を示している。
それによると、カメラ機能を有効にして操作するには、専用アプリを自分のスマートフォンにダウンロードしなければならないという。アプリはサイト閲覧履歴、通信履歴、連絡先、使用しているアプリなどの情報を収集すると危惧されている。
ベスト・コメンターであるユーザーは、この専用アプリは、本人の許可なくスマートフォンのシステムを管理・操作できるようだと書いている。
「単純な監視カメラの利用に、どうしてアプリのインストールが必要なのか。中国で作られたこのアプリは、間違いなく私の安全上の脅威である」「私の電話が中国政府に監視され、操作されるなんて嫌だ」とユーザーは書いている。
(編集・佐渡道世)
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