AIへの投資熱が高まるシリコンバレーで、巨額の資金がAI企業に流れ込む一方、高収入を得てきたテック人材が相次ぐ人員削減と厳しい再就職市場に直面している。
以前なら年収30万ドルを超えることも珍しくなかったベテランのエンジニアや科学者も、職を失い、新たな仕事がなかなか見つからない状況に置かれている。
ジョイント・ベンチャー・シリコンバレーが公表した「2026年シリコンバレー指数」によると、シリコンバレーには昨年920億ドルのベンチャー投資が流入し、その83%がAI企業に向かった。一方、テック関連の雇用は1万3100人の減少した。
2026年上半期の人員削減はすでに7295人に達し、2025年通年の水準に迫っている。全米のソフトウェア関連求人も、コロナ禍前と比べ23%減少した。
博士号取得者も再就職に苦戦
こうした変化は、高学歴の中国系人材にも及んでいる。
博士号を持つヤン・ジンさんは、勤務していたバイオテクノロジー企業を解雇された後、数十社に応募したものの、採用には至っていない。
研究現場では自動化が進み、従来は人が担っていた反復作業をロボットアームが行うようになったことで、求人そのものも減っている。
失業後、ヤンさんは自宅で子どもの世話をしながら、AIアプリ開発を独学で始めた。新たなキャリアにつなげたい考えだ。
夫のシンタオ・ジャオさんはグーグルに10年以上勤務した後、AR関連のスタートアップに転職したが、そこで人員削減の対象となった。
機械学習の博士号を持つジャオさんは、自動運転やAIモデル関連の十数社で面接を受けたものの、採用には至っていない。
現在は同じく失業中の金融業界の友人と組み、AIを使った株式のクオンツ運用に取り組みながら、再就職先を探している。
機械学習の博士号を持ち、アマゾンで勤務していた科学者もニューヨーク・ポストに厳しい求職事情を明かした。
起業に失敗した後、再び就職活動を始め、2か月で120社に応募した。ある企業では6回の面接を通過したものの、最終的に採用通知は届かなかったという。
同氏によると、現在のテック業界では、指示された業務をこなす若手エンジニアを採用する傾向が強まり、起業経験が逆に不利に働く場合もあるという。
住宅ローンの返済や家族の生活を支える負担を抱えるなか、貯蓄を使い果たせば、公的支援への申請も考えざるを得ないと語った。
「本当にそこまで追い込まれたら、もう体面を気にしてはいられない」
AI投資拡大の裏で人員削減
ニューヨーク・ポストが紹介した分析によると、AI投資が活況を呈する一方で人員削減が続く背景には、AI開発に巨額の費用がかかる事情がある。
企業はAI分野に資金を振り向けるため、人件費や他部門の支出を削減している。さらに、コロナ流行期の過剰採用に加え、生成AIの導入によって少人数でも業務をこなせるようになったことが、構造的な人員削減を加速させている。
再就職支援会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのデータによると、今年、米企業が発表した人員削減のうち、AI導入やAIを軸とした事業転換を理由とするものは11万6千を超えた。
失業したテック人材がつながる場も
突然の失業に直面したテック人材を支える動きも広がっている。
元グーグル社員のバセム・イスタンブリさんは、離職者向けのハイキンググループ「(un) PTO」を立ち上げた。メンバーは急速に増え、約1800人に達している。
参加者は平日に集まり、ハイキングやコーヒーを楽しんだり、コワーキングをしたりしながら交流している。職場を離れても人とのつながりを保ち、再就職活動の情報を交換し、失業中の不安を分かち合う場となっている。
自動化が進み、従来の仕事が減るなか、職を失ったテック人材も変化に適応し、新たな道を模索している。ジャオさんは、AIが既存の仕事を奪う一方で、新たな機会や雇用を生み出すとの見方を示している。技術革新が一つの扉を閉ざす一方で、新たな道を開く可能性もある。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。