交通インフラめぐり日中で熾烈な争い インドネシアがはまった債務トラップ

2024/09/12
更新: 2024/09/13

インドネシアの首都ジャカルタで11日、日本政府が建設を支援する都市高速鉄道(MRT)の新路線の着工式が開かれた。新路線はジャカルタ首都圏を東西に約24.5キロを結ぶ。

インドネシアのMRTプロジェクトは、ジャカルタの慢性的な交通渋滞を緩和するためのものであり、2019年に最初の路線が開通した。今年5月、インドネシアは日本の国際協力機構(JICA)からの1400億円もの資金支援を受け、現在、ジャカルタの東西を結ぶ新路線の建設が進行中であり、2031年までに完成予定だ。

ジョコ大統領もこのMRTプロジェクトを高く評価した。ロイター通信によると、ジョコ氏は「最初の路線開通によりジャカルタとインドネシアの交通は様変わりした」と述べ、新路線は間違いなくさらなる恩恵をもたらすとご満悦の様子だ。

インドネシアの高速鉄道といえば、昨年10月に開業し首都ジャカルタと西ジャワ州の州都バンドンを結ぶバンドン高速鉄道「Whoosh(ウーシュ)」を運行するインドネシア中国高速鉄道社(KCIC)がある。

中国の国有企業であり、世界最大の鉄道車両メーカー中国中車が製造したこの車両は、最高時速350キロの列車が片道約40分で結ぶ。

この高速鉄道の受注を巡っては日中の熾烈な戦いがあった。

入札では新幹線技術に基づき、安全性や信頼性を強調する一方で、長期的なインフラ整備や持続可能な発展に重きを置いていた日本の提案は、短期間で建設が完了することや安価な資金提供条件を提示した中共(中国共産党)の提案に敗北した。

共同通信によると、中国がインドネシアの開業時の駐インドネシア中国大使だった陸慷氏は中国メディアに「『一帯一路』構想のもたらした現実的な成果によって、インドネシア国民の対中理解も深まった」と豪語していた。

しかし中共の一帯一路のインフラ整備には債務のトラップが仕掛けられている。大規模なインフラプロジェクトや開発援助を提供する際に、貸し手の国が借り手の国に多額の債務を負わせ、返済が困難になることで政治的または経済的な影響力を行使するというものだ。

ケニアの首都ナイロビとインド洋沿岸の港湾都市モンバサを結ぶ標準軌鉄道(SGR)は中国の融資によって進められ、ケニアに対して多額の債務を残す結果となり、モンバサ港が担保として使われる可能性が指摘されている。

地元の英字新聞ジャカルタ・ポストによると、短期間で完了するはずの工期は当初予定より4年も遅れ、安価な資金提供条件においても総事業費は約108兆ルピア(約1兆800億円)と当初想定より約18億ドル(約2559億円)も膨んだ。

共同通信によると、入札の際、もともと日本は総事業費の75%を金利0.1%の円借款で賄う提案をしていたが、ジョコ大統領は政府負担を嫌い、インドネシア政府に負担や保証を求めない中国の提案に応じた。

インドネシアは当初の契約にはなかった国費の投入も余儀なくされ、2017年の追加融資では、中国の国家開発銀行が2%の金利を要求し、後の追加融資では4%に達している。

大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。