中共のアジア地域軍事演習、米国に比べ小規模=国際戦略研究所

2024/06/06
更新: 2024/06/06

最新の調査結果によると、地政学的緊張が高まる中で、米国と中共(中国共産党)はアジア各地での軍事演習の回数を増やしている。しかし、中共軍の演習は、その規模や複雑性で、米軍に及ばないとされている。

イギリスのシンクタンクである「国際戦略研究所」(IISS)が近日に発表した報告書によると、2003~22年のアジアでの軍事演習を分析した結果、その頻度と規模が急激に増加していることが判明した。これは、米国と中共がそれぞれの軍事力を試すとともに、戦略的な外交を推進する動きが、背景にあると考えられている。

報告書によれば、米国がアジアの国々と共に実施した軍事演習は約1113回、中共が実施した演習は130回となっている。

また、台湾海峡の緊張が増す一方で、東シナ海や南シナ海での領土問題が続いている中、この地域での軍事的存在感は年々強まっている。

報告によると、米国は世界中の国々と広範囲にわたる軍事演習を行い、リーダーシップを維持しようとしている。一方で、中共は特定の地域パートナーと演習を強化し、米国との差を縮める努力をしているとされている。

台湾のメディア関係者であり、軍事評論家でもあるチー・ルーイ氏は、米軍と中共軍の間には実戦経験、統合作戦能力、同盟国との関係という3つの大きな違いがあると指摘している。

ロイター通信によると、演習には多くの目的があると語っている。その中には、紛争地域での航海の自由を保証すること、抑止力を発揮しつつ安全を提供すること、外交関係を強化することなどが含まれる。

さらに、演習は敵の能力を試す機会をもたらすとも言われている。例えば、米国と中共の艦船や航空機はしばしば互いを追跡し合っている。

チー・ルーイ氏は次のように述べている。「米国が現在行っている軍事演習は、主に中国の近辺、特に第一列島線第二列島線の間や南シナ海の周辺で活発に行われているのが分かる。中共の演習は、外側への展開、とりわけ第一列島線を超えて南シナ海の外側にまで及ぶような動きを目指しており、封鎖を回避するための戦略が目立っている。現在の演習は、これらの特徴を主に反映している」

報告書によれば、中共軍は実戦経験の不足、硬直的な対応、そして教条的な演習の不完全さといった問題に直面しているとされている。

チー・ルーイー氏はさらに、「米国は中共の戦略的な動きを、列島線や南シナ海内に限定し、閉じ込めることを狙っている。この戦略が実現すれば、中共の軍事的な行動は大きな制約を受けることになるだろう。そのため、中共はこのような戦略的な制限を克服しようと奮闘している。現在の両国の演習は、自国にとって有利な戦略的なポジションを築くことが主な目的だ」と述べている。

報告書によれば、2010年代の中頃から後半にかけての米国と中共の競争が、国際情勢を変化させた結果、米国とその同盟国である日本、フィリピン、豪州との間で行われる軍事演習の重要性が増している。また、2024年以降も、より多くの国々と、頻繁で大規模な軍事演習が継続される傾向があり、これは将来、さらに顕著になると予想されている。