【プレミアム報道】「気候緊急事態は存在しない」気象学者らが語る真実(3)

2023/10/08
更新: 2023/11/13

天気と警戒心のレトリック

マサチューセッツ工科大学の気象学名誉教授のリチャード・リンゼン氏は、エポックタイムズに対し、「気温上昇による地球存亡の危機を訴える議論は、純粋に政治的声明である。IPCCでさえ、その脅威を主張していないのだから」と語った。

IPCCは存亡の危機があると主張する科学者や気候活動家に言及しているが、IPCC自身がそのような主張をしたことはない、とリンゼン氏は言う。

「気候モデルはそれを仄めかしてもいない。もともと政治的な問題であったという事実から生じている。この問題に関与している政治家たちは、自分たちの不安がうまく伝わらないことを心配している。彼らは地球の平均気温から異常気象にシフトし続けて人々をパニックに陥れようとしている。しかし、気候に緊急事態が起きていると、科学が示唆したことはないのだ」

「例えCO2が悪で、私たちが存亡の危機に直面していると考えていても、ネットゼロは間違った政策だ。電気自動車など馬鹿げている。CO2の動きを見て欲しい。これまで何兆ドルも費やしてきたのに、少しも変わっていない。CO2は同じペースで増え続けている。政策の唯一の目的は、社会を貧しくすることだ」

2021年6月8日にドイツのドレスデンで駐車するフォルクスワーゲンの電気自動車 (Photo by Sean Gallup/Getty Images)

  リンゼン氏は、地球は球形であり、約2万年前の最終氷期極大期に起きた気候変動は、温室効果(地表近くで封印された熱)によるものではなく、熱帯と極の間の温度差のために起きたということ忘れてはならないと言う。

彼は、天気図上で西から東に移動する波のような動きは、熱帯から極に熱を運ぶ対流運動であると説明した。

「対流運動は、特定の温度分布を確立しようとして流体を送り出す。そのプロセスは、鍋の水を加熱することに似ている」とリンゼン氏は説明した。「沸騰した湯の動きは、鍋の底の加熱と上部の水の温度差をなくそうとするものだ」

同様に、太陽が地球の表面に当たると、赤道では真正面から当たるが、極地では表面をかすめる程度である。このように、地球は鍋の中の水の温度と同じような行動をとり、本質的に、温度を波状に分散することによって、赤道と極地の間の熱を均等化しようとする。

リンゼン氏も、「気候非常事態」を宣言した理由は、一部の政治家らが気候変動の問題を政治的なアジェンダの推進に利用し、金や権力を得ようとしているからだと述べた。

「こうした政治家については、精神病の一種なのではないかと疑わざるを得ない。しかし、政治権力の魅力は、人々が抵抗できない何か特殊なものだ」

天気予報サービス会社ウェザー・ベルの共同主任気象学者であるジョー・バスターディ氏は、天気は常にバランス、つまり「動的平衡」を模索していると言う。リンゼン氏とは異なり、バスターディ氏は、地熱の増加によるわずかな気温上昇が見られたと主張している。

「地質学的なタイムスケールで考えれば、現在、私たちは気候緊急事態ではなく気候最適の状態にいる」とバスターディ氏は、エポックタイムズに語った。「過去にこの種の温暖化を見たことが何度かあり、その期間、地球上では生命が繁栄していた。過去の温暖化の原因は、海の温暖化であるように思う。海が温まったのは、水中の火山活動が活発になったからだと考える」

2022年の海底火山フンガ・トンガの噴火は、彼の理論を完璧に例示している。5万8千個のスイミングプールに相当する水蒸気が成層圏に送られ、その影響を受けて、一部の地域では、2023年の平均気温が通常より暖かくなっている。

2009年3月19日にトンガで発生したフンガ・トンガの海底火山噴火から上昇する火山灰 (Photo by TELUSA FOTU/Matangi Tonga/AFP via Getty Images)

「地熱活動の増加は、海面水温の上昇に先行して起きた」とバスターディ氏は語る。

「海が暖かくなると、より多くの水蒸気が空中に流入する。水蒸気は最大の温室効果ガスであるため、温暖化が発生する。温暖化のほとんどは、赤道から離れた地域、最も寒くて乾燥した場所で発生しており、水蒸気が温度に最も大きな影響を与える場所だ。これは別の手がかりを与える」

またバスターディ氏は動的平衡について、温度変化が発生すると大気はバランスをとろうとして、「反撃」すると説明した。

「つまり、ハリケーンを追う気象学者だけが理解でき、あまり知られたくないことだが、1990年代に気候活動家が推進していたホット・スポットは、熱帯地方には現れず、北極圏上空に現れたという想定外の結果を招いた。それは大気が反撃していることを意味する」と彼は語った。

バスターディ氏は、「この冬は非常に寒く、嵐の多い冬になるだろう」と予測している。

「もし北極で温暖化が起こったとしても、冷却現象は、温暖化に対する自然な反応である。海洋に熱が蓄積されれば、大規模なエルニーニョ現象が発生する。気温の上昇は、大規模なエルニーニョと直接相関するステップアップ機能として見ることができる」

また「地熱活動によって気温が上昇するのであれば、それは人為的なものではないため、2050年までにCO2をゼロにしようという活動は無意味となる」と付け加えた。

「これらの人々は気候や天候とはまったく異なる理由で、気候緊急事態を進めている」

2019年11月29日にギリシャのアテネで開催された気候保護を求める運動「Fridays for Future」のデモに参加し、スローガンを叫ぶ高校生たち (Photo by ANGELOS TZORTZINIS/AFP via Getty Images)

ナラティブに疑問を投げかける

「気候とは、気候に影響を与える様々な要因の組み合わせである」とヒューストン大学の寄附講座教授であり、居住可能な宇宙建築の設計・製作で知られる建築家、ラリー・ベル氏はエポックタイムズに語った。「気候に影響を与えるさまざまな変数の割合がすべてわかっているわけではないので、モデル化するのは難しい」

「いくつかの変数は、何百年、何千年、何万年という単位で変動している。太陽系や銀河系の中の地球の位置、大気とは無関係な海洋の変化、エルニーニョやラニーニャ、太陽の変化(天体物理学に影響を与える磁気の変化)の影響など、実に複雑だ。気候科学と呼ばれるものの多くは非常に専門的で、それぞれの研究が相互につながっているわけでもない。

例えば、地質学者は、岩石や地層から長期的な傾向を見るのに対し、数学者や天体物理学者は、気候に対して異なる見方をする。さまざまな分野のどれも、それが非常に複雑であるため、最終的に理解したとは言えない。

ベル氏によれば、第二次世界大戦中は大気中のCO2が増加したにもかかわらず、戦後の40年間は、冷え込みが続いたという。

「したがって、CO2と気候変動の間に単純な相関関係があるという考えは、都合のいいこじつけだ」と彼は語った。

ベル氏が気候変動に興味を持ったのは、1979年初めに米国気象衛星サービスの創設者であるフレッド・シンガー氏が彼のオフィスを訪れ、衛星気象データが一部の予測通りに機能していないことを示したときだという。

ラニーニャ(左)とエルニーニョ(右)の挙動を示す図 (米国商務省海洋大気庁国立気象局)

シンガー氏によれば「気象衛星が熱帯対流圏上に予測していたホット・スポットが示されていなかった」という。

「気候モデルでは、最初に大気が温暖化され、それから、地表が温まると想定している。赤道上でホット・スポットが検出されると予測していたが、それを見つけることができなかった」とベル氏は語った。

ベル氏は、当時は気候変動について深く考えることはなかった。しかし、年月が経ち、気候変動について耳にする機会が増えるにつれ、絶えず変化するナラティブに疑問を抱くようになったという。

当初は「氷河がやってくる」という不安があり、地球規模の寒冷化が問題視されていたが、10年後には「地球温暖化」へとその懸念は転じていたという。

「ワシントンで地球温暖化に関する上院公聴会の開催を準備していたティモシー・ワース氏が、ある雑誌に、『会議の開催日は1年で最も暑い日に設定され、暑さを強調するために、会議の前夜は部屋の中に入って窓を全開にし、エアコンを止めた』と語った話は有名だ」とベル氏。

「そして、NASA傘下の宇宙研究所を率いていたジェームズ・ハンセン氏は、『地球は燃えている。私たちが招いた結果だ』と断言した。これは、グリーンエネルギーを推進するための序章だった」

ベル氏は、「地球温暖化の原因は人類にあるという意見に、科学者の97パーセントが同意しているという話は、真実ではない」と言う。

「気候が変化していることに科学者は同意しているが、そのような緊急事態はまったくない」

「前回の小氷河期以来、気候は気まぐれに温暖化している。今後も続くかもしれない。しかし、ニューヨークの画像を見ると、自由の女神がある海岸線では、海水は上昇していない。海水面は数年前とほとんど変わっていない。つまり、裏付けに乏しいかもしれないが、これが現実だ。自分の目で確かめることができる」とベル氏は語った。

ベル氏によれば、気候警戒論者が推し進めるもう1つのシナリオは、ハリケーンやその他の気象災害という形で、天候がより激しくなっているというものだ。

「記録を見れば、それだけで気候は悪化していないことがわかる。ハリケーンは30年代の方がずっとひどかった。しかし、死者や被害の増加については、海岸に住んでいる人たちが増えたという事実も見なければならない」と語った。

2022年9月29日、米フロリダ州ボニータスプリングスで発生したハリケーン「イアン」による被害を見ながら歩く人々 (Photo by Sean Rayford/Getty Images)

バスターディ氏は、ベル氏の見解を支持し、ハリケーンの運動エネルギーは減少しており、ACE(累積サイクロンエネルギー)指数からもそれがわかると語った。

「その日暮らしの人たちや仕事に不安を抱えている人たちが、細まかなところまで考えたり調べたりする時間がないことに、気候警戒論者たちは気付き、それを利用しているのだ」

「インフレが一気に進んだために、ハリケーンがフォートマイヤーズやマートルビーチのような場所を襲ったりすると、以前よりもはるかに大きな被害が出ることになる」

気候警戒論者が推し進める現在のシナリオについて、最も懸念していることは何かと訊ねると、ベル氏はこう答えた。

「私は、気候ヒステリー(地球温暖化に対しての環境保護対策にヒステリックに対応すること)や誤った情報がどのように政策を動かしているかに関心がある。こうした政策が、経済的な幸福を左右する基本的な岩盤政策を動かしている。エタノールで海軍を動かすつもりはない。延長コードで空軍を動かすつもりもない。まさに愚かなことだ。人々は気候を科学だと考えている。そうではない。それは政府の大きな影響力だ。大きなグローバリズムだ。そしてそれは米国に有利なものではない」

「気候の恐怖を利用することほど、影響力があり、効果的なものはないだろう」
 

(完)

エポックタイムズ記者。エネルギー政策や政治問題を中心にさまざまなトピックを担当。医療業界における検閲や政府との癒着に関する取材も行う。ジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせる前は、米空軍で軍用機J-STARSの空挺作戦技術者として活躍。