【寄稿】安倍元首相が蒔いた種、必ずや実を結ばせる 長尾敬

2023/07/08
更新: 2023/07/04

一周忌を前にした7月1日、安倍晋三元総理を慰霊する「留魂碑」の除幕式が行われました。安倍元総理が心から尊敬されていた幕末の思想家、吉田松陰が弟子たちに残した「留魂録」に因んだ名前だけに、心にグッと刺さるものがありました。安倍元総理が亡くなられた直後、私もすぐ留魂録を読みました。今も本棚の一番近いところに置いております。あれから、一年。本当に早いものです。

総理が命を落としたあの場所に慰霊碑を作りたいと実に多くの方々が運動しましたが、それも叶わず、車が通るたびに総理の御魂が踏み付けられているような気がしてならぬ車道になってしまったこと、民主主義を真っ向から否定するテロ行為が行われた凄惨な事件をこの場所に刻むことで、二度とこのようなことが発生せぬよう戒めると同時に、安倍晋三という不世出の政治家がここに遭難したことを後世に残す「証」すら作れていないことを、心からお詫び申し上げたいと思います。本当にお恥ずかしい限りです。

2012年11月7日、私のFacebookに二度目の返り咲き直前の安倍元総理から「長尾さんには民主党は似合いません」とコメントを頂戴し、お礼の電話を差し上げましたところ、開口一番、「自民党の席が空いたから同じ選挙区で大変だと思うけれど自民党に来て一緒にやらないか」と声をかけて頂きました。

その頃大阪では日本維新の会が初声を上げていたのですが、私が三度合間見えた自民党衆議院議員が自民党を離党し、維新に移ったのです。その自民党の席が空いたので、安倍元総理が私に声をかけて下さいました。結果、私は民主党を離党し無所属で立候補しました。ところが選挙の中盤、総理は自民党公認ではない私の応援演説に来てくださったのです。そして突然そこで、「長尾たかしは自民党の公認候補にする」と宣言されたのです。それでも私は維新旋風の前に大敗するのです。

惜敗後私は「一人の自民党員」として下足番から始めました。その間も総理からずっとご指導を頂きながら、2年後の衆議院選挙で自民党候補者として当選し、10年間衆議院議員を務めさせていただきました。内閣府大臣政務官の折には、官邸での会議で毎回ご一緒し、私の左斜め前にいつもお座りになり、激務をこなされる後ろ姿に学んでいました。

令和元年6月12日、「日本の尊厳と国益を護る会」が初声をあげました。一周年を迎え、記念講演をお願いした際、「護る会が自民党の座標軸になってほしい」とおっしゃられたことを深く胸に刻んでおります。今、自民党が、国民の皆様から、保守政党としての信頼を失いつつある中、この時だからこそ内部から自民党を変えていかなければならないと、今、改めて総理の強い信念に学ばせていただいています。

衆議院選挙の応援街頭演説で総理は、「私は長尾たかしほど無鉄砲な男を見たことがない」とおっしゃられました。これは私にとっては最高の褒め言葉だと思っています。「あのウイグル人権決議においても、執行部がなんと言おうとも、恐れずに言うべき事は言う、すごいじゃありませんか皆さん。相手がどんなに影響力を持っていてもたとえ自分の出世に大きなマイナスになろうとも言うべき事は言う、そういう戦う政治家を、男を今日本が必要としているのではないでしょうか、皆さん」、「日本の領海を守るため、尖閣を守るため、拉致被害者を奪還するため、一番頑張った政治家の一人が長尾たかしですよ。がんばった結果、長尾たかしを潰したいと言う人たちもいます!でも負けるわけにはいかないんですよ、皆さん!」

いつも総理の後ろ姿ばかり追いかけていました。私はこれからも無鉄砲に戦い続けます。民主党を離党し無所属で大海を漂っていた私を自民党に拾ってくださったのは総理でした。拾われなければ命尽きていた筈でした。だから、今の私は奇跡的な存在なのです。再び命を与えてくださったのは総理なのです。

だから私には失うものは何もありません。ある意味私は無敵です。

増上寺で営まれた告別式での昭恵夫人の「主人も政治家としてやり残したことはたくさんあったと思うが、本人なりの春夏秋冬を過ごして、最後、冬を迎えた。種をいっぱいまいているので、それが芽吹くことでしょう」という言葉が今も心に刺さっています。 果たして、私はその種の一つかどうかは分かりませんが、「たとえ失敗しても何度でもやり直せる社会」を提唱した総理はその言葉を自ら実践してみせてくださいました。病という思うに任せられない理由で、第一次安倍政権がたったの一年で倒れ、絶望に沈む心で、筆舌し難い人生の悲哀を味わい、どん底の惨めさを知り尽くした総理は、「重圧」や「孤独」と総理が戦いながら、諦めない、失敗を恐れない、何事にも覚悟を持って臨む、 そして戦い続けることこそが、政治家にとって最も大切なことを説得力を持って教えて下さいました。

私たちは総理に頼りすぎていました。自らの足で立ち、自らの意思で判断し、先人に恥じぬ、次世代に胸を張れる日本を継承発展させていかなければなりません。それでもやっぱり総理が生きておられたら、どんな判断をしただろう?そんなことを考えながら空を仰ぎ見てばかりおります。この抑えきれぬ寂しさは永遠に消える事はないでしょう。安倍晋三という不世出の政治家は、これからも私たちは心の中で、とてつもない大きな存在として生き続けるからです。どうかこれからもお見守りください。見ていて下さい。心で繋がっていて下さい。私たち自身が、総理が蒔いた種だという自覚のもと、必ず花を咲かせます、必ず実を結ばせます。

日本は私たちが必ずお守りします。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
長尾敬
前衆議院議員、元内閣府大臣政務官。立命館大学卒業後、明治生命(現・明治安田生命)保険相互会社に入社。平成21年に初当選し、衆議院議員を3期務める。著書に『永田町中国代理人』(産経新聞出版)、『シン・ニッポン2.0 ふたりが教えるヒミツの日本』(三交社、共著)、『マスコミと政治家が隠蔽する中国』(眞人堂)。