中国、地方政府が半導体企業を接収、投資ブームに補助金詐欺多発か

2020/11/19
更新: 2020/11/19

中国メディアによると、2017年11月に設立された半導体メーカー、武漢弘芯半導体製造有限公司(以下、武漢弘芯)はこのほど、地元政府に接収された。創立当時、同社は総投資額1280億元(約2兆286億円)で話題になり、地元経済活性化の起爆剤と期待された。しかし、同社は今、半導体産業における中国当局の「大躍進政策」の失敗例となった。

米政府の中国企業への輸出禁輸措置を受けて、中国当局は国内供給体制を確立するため、昨年から半導体産業の振興政策を次々と打ち出した。同産業へ投資を呼びかけた上、半導体メーカーを補助金や税制優遇措置の対象にし、株式上場や資金調達を優先させた。このため、中国各地で半導体企業への投資ブームが起き、半導体メーカーではない企業まで進出した。

中国企業情報検索サイト「天眼査」などによると、武漢弘芯の90%株式を保有する北京光量藍図科技有限公司(以下、北京光量)は11月10日、武漢光量藍図科技有限公司(以下、武漢光量)に買収された。武漢市東西湖区国有資産監督管理局は、武漢光量の100%株式を保有する。武漢光量は今年9月25日に設立されたばかりだ。

武漢弘芯の10%株式を保有しているのは、東西湖区国有資産監督管理局の別の配下企業であるため、武漢弘芯は完全に東西湖区政府の管理下に置かれた。

中国メディアによれば、武漢弘芯の工場建設プロジェクトはすでに中止された。同社は、業者に3400万元(約5億3886万円)の建設費用を未だに支払っていない。同社は2018年と19年、2年連続で湖北省の重要発展プロジェクトに指定された。しかし、筆頭株主だった北京光量は、中国当局の産業補助金をだまし取るペーパーカンパニーだったと疑われた。

今年9月、中国紙・中国経営報は北京光量に関する調査報道を行った。同紙が、北京光量の法人登録住所を訪ねると、同社と関係ない別の企業があった。また、北京光量の武漢弘芯に対する実質の出資金は「ゼロ」だったという。「天眼査」によると、北京光量の設立日は2017年11月2日で、武漢弘芯の設立日とほぼ同じだ。

北京光量の創業者、曹山氏らはその後、同じ手法で山東省などで半導体企業数社を設立した。

しかし、中国当局は補助金不正受給の疑いで曹氏らを拘束しておらず、捜査についての公表もしていない。

台湾の時事評論家、謝金河氏は中国本土の半導体産業投資ブームについて投稿した。同氏によると、今年上半期、江蘇省や安徽省などの24の都市で、半導体メーカー20社が相次いで創立した。総投資額は1600億元(約2兆5358億円)という。

「これらの企業は、中央政府の補助金を目当てに、まず半導体開発用のビルをたくさん建て、設備も多く購入するのだ。しかし、中央政府から巨額の補助金を受け取った後、補助金を自分の懐に入れるだけで、会社の運営、技術開発、生産などは全く行わない」

中国政府系雑誌「瞭望」は、今年7月20日時点で、中国の半導体関連企業が4万5300社あると示した。今年4~6月期において、新たに4600社が法人登録を行った。昨年同期と比べて207%増で、前期比では130%増だという。北京半導体産業協会の朱晶・副事務局長は、新しい半導体企業のうちの8割は「半導体産業のインフラや生産経験のない」中小都市に集中していると指摘した。

過去1年間、四川省、陝西省、江蘇省など5つの省にある半導体企業6社が経営難に陥った。6社は投資額100億元(約1580億円)以上だったことで、当初メディアに大きく取り上げられた。

(翻訳編集・張哲)

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