「上海市民間市長」が語る万博開催地:冒険家の楽園、庶民の地獄(その二)

2010/05/05
更新: 2010/05/05

【大紀元日本5月5日】史上最大規模の万博。「都市は人々の生活を更に美しくさせる」をテーマとする中国当局は、開催地の上海市の美しさを世界に誇る。しかしタイムズ誌4月29日に発表された2010年度「世界で最も影響力ある百人」にリストアップされた上海出身の若手作家・韓寒さんが、万博の開催地を、「中国の恥」「野蛮な近代化都市」「文化の砂漠」などの形容で、ぐさりとえぐり込み、上海市民の心を掴んだ。

「中国のベストセラー、チャンピオン・レーサー、現代中国社会の病を毒舌で批判する最も人気のあるブロガー」としてタイムズ誌はそのプロフィールを紹介している。地元上海では、市民は韓寒さんを上海市の韓正市長の右に置き、上海市の「第二市長」とか「民間市長」と呼んでいる。

そんな韓寒さんが最近、世界最高のアクセス数と言われる自分のブログで上海万博を猛批判。「メディアのインタビューは本当に困ったものだ。万博を賛美したら、良心が穏やかではなくなるだろうし、批判したら、寝食がおぼつかなくなる」と、「万博よ、来い…そして、去れ」でつぶやいている。

地元上海について、中国国内雑誌『天下』の3月号で掲載されたインタビュー記事で、「僕は上海生まれだから、この土地を愛している。しかし、僕の生まれ育った所は今汚染に喘いでいる。もちろん、お金があれば、上海はとてもいい所。ここは冒険家の楽園で、庶民の地獄だ」と語った。

同インタビューを2回に分けて紹介する。5月3日の第1部で紹介された上海市の隠された顔に続き、苦しむ庶民の様相とその国民性の悲しさについて語る。

GDPの苦しみにあえぎながら、GDPを誇る中国の大衆

中国の真実は、手短には表現できません。この問題はきわめて重大です。中国全体にいわゆるGDPが重くのしかかり、苦しんでいるようです。なぜなら、中国は大国で、面子を非常に重んじているからです。したがって、金融危機が起きた時でも、一定の成長率を保たなければなりません。中国のような政府においては、このようなことでも確実に行えるものです。たとえば、不動産の価格を異常につり上げることなどによって、GDP(国内総生産)を一定の水準に保たせるのです。しかし、それによってもたらされた市民生活への圧力はきわめて大きいです。

成長率は8%だと政府は言っているが、国民に与えた圧力は甚大です。成長率が何%というのは、国家統計局の仕事であって、何%といってもかまわないではありませんか。われわれは皆、統計局がインチキをすることを許しています。実際、統計局はインチキをして国民を騙しているのではありませんか。

中国の大都会で、市民たちはみな素晴らしい未来を待ち望んでいます。しかし、市民への圧力はかなり大きなものがあります。長い目で見れば、待ち望まれている素晴らしい未来が本当に訪れるかどうかは、誰も知りません。

中国社会と中国人の社会観もきわめて不思議です。幾人かの億万長者が、苦しむ市民から搾り取っています。そして市民は、自分たちを搾り取る億万長者たちを憎んでいます。しかし、不法経営により億万長者を訴えようとしたところ、その億万長者は急きょ国際モーターショーなどに参加し、きわめて高い車などを買うのです。それで、国際社会は驚き、中国人は金持ちだと思うようになり、よって搾り取られた人びとも、誇りに感じ、これは我が中国人の栄誉だと思うようにもなるのです。今の中国は、皆このような心境です。

人権と尊厳を代価に仕事を得る

中国のネットユーザーたちはネット上において、自由奔放に見えるところがありますが、現実の社会において、彼らは皆まじめです。彼らがそもそもまじめなわけではなく、現実社会の圧力がきわめて大きいだけです。これも、中国政府の政策の賢いところです。

政府は不動産の価格を異常なほどつりあげていますが、可笑しいことに中国人は高ければ高いほど住宅を買うのです。結婚しようとすれば、新しいマンションがないと結婚できないので、ローンを組んで買います。マンションを買った以上、失業してはならないので、このような人たちは社会の様々な悪い現象に呑み込まれざるをえません。

中国には、失業の道はありません。一、二ヶ月失業しただけでローンを返済できなくなり、大変なことになります。したがって、このような人たちは、しだいに弱腰になり、自分の人権と尊厳を代価に仕事を得るのです。少人数なら問題はありませんが、中国の都会では皆、同じ状態ですので、現実社会で不満を言えない彼らは、バーチャル世界で不満やストレスを発散しています。

中国の高成長は誇りに思わない

フリーのわたしは皆さんのために発言する責任があると思い、ずっと話しつづけています。でも、私はしょせん空気入れの玩具でしかなく、私の文章を読んだ皆さんを喜ばせようとするだけです。わたしには何かを変えたいという贅沢な望みはありません。

ここ数年、中国の経済は高成長を維持し、今のような規模に達していますが、しかし、私はこれを誇りに思いません。なぜなら、これほど多くの土地が売れますし、これほど安い労働力が雇えますし、これほどの資源が利用できるからです。こういった条件下において、今の成長は素晴らしいとは言えません。

中国の政府はお金がなくなれば、土地を売ります。土地はみな国のものです。その所に住んでいる人たちをそこから追い出し、住宅を打ち壊し、何百億も儲けた後、住宅を建設し、業界を牽引していく…。

中国人が戦おうとするのは、権利かそれとも権益か

上海は中国の政治、経済をリードしており、上海から中国の未来の発展を見れば非常に面白いと言われますが、実際は必ずしもそうではありません。中国の発展は最高の利益階層によって決められていますが、わたしは彼らを「権力階層」あるいは「指導階層」と言わず、「利益階層」と呼んでいます。

中国の国民たちは、自分の権利を守るというよりも、己の権益を守ろうとしています。現段階では、彼らはもし自分たちの権益が保障されれば、他のことは顧みないでしょう。つまり、彼らは腐敗官僚に反対していますが、皇帝に反対しません。彼らはいつも、上の政策は正しいが、下の官僚たちがその政策を正しく実行しなかったと思っているのです。今でもなおこういった観念です。

こういった状況下では、われわれの指導者たちは幸せに思うはずです。すなわち、このように忠誠的で、虐められてもなお信じて疑わない国民(悪い言い方をすれば、これほど愚かな国民)を有しているからです。

(編集翻訳・小林)