「毒入り」のGDP成長:頻発する児童の鉛中毒事件=中国

2010/03/31
更新: 2010/03/31

【大紀元日本3月31日】近年、中国では相次いで起こる児童鉛中毒が問題となっている。06年9月、甘粛省徽県で数百人の子供が鉛中毒にかかっていることが発覚。09年8月に湖南省武岡県と陝西省鳳翔県、今年に入ってからは江蘇省大豊県、四川省隆昌県で、それぞれ同様の被害が報告された。湖南省ちん州では、一昨年と昨年に行われた検査で1万人を超す児童の血液から基準値以上の鉛を検出。最近になって被害の状況を中国メディアが報道し、波紋を広げている。

いずれも利益を追求する地方政府と企業が結託し、地元住民への配慮を怠った結果だ。これらの農村部で頻発する鉛中毒事件について、北京朝陽医院職業病と中毒科主任のカク鳳桐・医師は、「いずれも周辺の環境汚染によるものだ」と指摘。一般的に、児童が被害を受けるケースが多い。様々な要因の絡む都市部の鉛中毒と違い、農村の場合は居住地周辺の汚染企業に原因を特定することができるという。

四川省隆昌県で起きた鉛中毒の場合、住民は四年前に建てられた金属精錬工場に原因があると考えた。住民らは何度も政府の環境保全部門に足を運び、工場の汚染問題について苦情を訴えたが、「すべての基準を満たしている」として訴えは却下された。中毒が明らかになってからも、同県の環境局は「(同企業には)問題がない」の一点張りだった。

同金属精錬工場は、居住地やレストラン、生活用井戸水などの近くにある。工場建設の前には、政府は汚染の可能性を否定していた。しかし、開業直後から工場の排気で農作物が全滅し、強烈な刺激臭があたりに充満し始めた。多少の賠償金が支払われたが、環境局は問題ないと言い続けてきた。

陝西省鳳翔県の場合、汚染源の亜鉛工場に対する環境評価報告書で、周辺千メートル以内は居住に不適切であるとことが明らかとなった。住民らは移転するよう警告されたが、周辺にとどまったままの住民もいる。

湖南省嘉禾県では、300人の児童が鉛中毒であることが分かった。汚染源である企業には政府から閉鎖命令が出されたが、実行されていない。

南京農業大学農業資源と生態環境研究所のハン根興・研究員は、鉛汚染が頻発する理由について、「国の基準が低すぎる」と指摘。しかし、土壌の含鉛量が1キロあたり90マイクログラムというWHOの基準と比べ、中国では1キロあたり300マイクログラムと、かなり容認度の高い基準として設定されており、これ以上基準を引き上げることは、有害な鉛の蔓延を助長するだけだ。工場から出る排気の1日最大許容量は、人間が居住することも考慮に入れて環境の吸収能力に基づいて決められているのに対し、中国ではこのような科学的な分析と計算に基づく基準値はないという。

「発展のためには、汚染もやむを得ない」という政府の「保八政策」(GDPの年成長率8%を維持すること)がこの考えを後押しした。大勢の子どもの健康を代価に得られた「毒入り」GDP成長は、果たしていつまで続けられるのか。

(翻訳編集・高遠)