ここ数週間、ウクライナのドローン部隊は新たな戦闘領域を切り開き、攻撃範囲を前線からロシアの戦略的後方深部へと拡大させている。攻撃対象には、戦略爆撃機、製油施設、軍需企業、輸送船団、物流拠点や倉庫などが含まれ、これらはロシアの戦争遂行体制全体に対し、継続的かつ拡大する打撃を与えている。
ドローン攻撃がロシア内陸へ、経済分野を標的に
2026年7月24日、ウクライナ無人システム部隊(USF)司令官ロバート・ブロウディ(Robert Brovdi)は、ウクライナ軍がレニングラード州およびクリミアのシンフェロポリにあるロシア最大のEC企業「ワイルドベリーズ(Wildberries)」の物流センター少なくとも3カ所を攻撃し、大規模な操業停止を引き起こしたと明らかにした。
複数の情報源によれば、7月17日から24日にかけて、ウクライナ軍はロシア国内および占領下のウクライナ領内にある「ワイルドベリーズ」の倉庫少なくとも10カ所を攻撃した。この一連の攻撃は、ロシア内陸の防空体制の脆弱性を露呈させただけでなく、戦争が日常生活に及ぼす影響をロシア国民に強く意識させる結果となった。これにより、すでに約22億ドル(約3300億円)の損失が生じたとされる。経済的打撃は、プーチン政権を支持する一部のエリート層にも圧力を与え、資産の国外移転を検討させる可能性がある。
ワイルドベリーズの物流施設への攻撃について、ゼレンスキー大統領は、これらの施設がロシア軍への補給拠点として機能しており、ナビゲーション機器やドローン部品、各種補給物資が保管されていると指摘した。これが標的となった理由の一つであるとみられる。

ロシア国防省は、7月25日未明、防空システムがウクライナのドローン328機を迎撃したと発表した。攻撃はベルゴロド州からウラル地方のエカテリンブルク、さらに西シベリアのチュメニ州の製油所にまで及んだ。モスクワ市長セルゲイ・ソビャーニンは、約200機のドローンがモスクワ周辺に飛来し、防空部隊が迎撃を続けていると述べた。
また、ウクライナ保安庁(SBU)によれば、同庁の長距離ドローンは7月15日から16日にかけて約800キロ飛行し、ロシア・サラトフ州のエンゲリス2空軍基地への攻撃に成功した。公開された商業衛星画像により、同基地でロシアのTu-95MS戦略爆撃機1機が破壊され、機体後部が断裂し修復不能となっていることが確認された。Tu-95MSはKh-101巡航ミサイルを運用する主要爆撃機であり、ウクライナへの長距離攻撃に用いられている。SBUは、この攻撃がロシアの戦略航空戦力に対し、「最も遠隔の基地であっても安全ではない」ことを示したと強調した。
「影の船団」攻撃と海上封鎖戦略
7月21日以降、ドローンによる連続攻撃により、ロシア・ノヴォロシースクのシェスハリス埠頭は稼働停止が続いている。同港は2026年前半の1日平均取扱量が約65万バレルで、ロシアの海上原油輸出の約5分の1を占める重要拠点である。これを受け、ロシアは黒海の航行規制を強化し、関連船舶に対し安全リスクの上昇を警告した。
海上では、ウクライナはドローンと無人艇を組み合わせた新たな作戦を導入し、「動的制裁」と呼ばれる海上封鎖を展開している。7月21日から22日にかけて、制裁回避を図るロシアの「影の船団」に属するタンカー13隻がアゾフ海および黒海で相次いで攻撃を受けた。これまでの累計では、アゾフ海で126隻、黒海で70隻に被害が及んでいる。
こうした攻撃により、西側および中立国の船主がロシア産原油を輸送する際の戦争リスク保険料は大幅に上昇した。ロシアが船主の匿名化や航路の偽装によって輸出を維持しようとする戦略にも、深刻な影響が出ている。
ウクライナはすでにノヴォロシースク港を事実上の封鎖状態に置き、攻撃対象は影の船団にまで広がっている。これにより戦争リスクプレミアムが上昇し、さらに製油所への攻撃と相まって、ロシアのエネルギー供給は一層逼迫すると見られる。長期的な操業停止は、貯蔵施設の逼迫、生産削減、港湾機能の混乱といった連鎖的影響を引き起こす。この事例は、埠頭そのものを破壊しなくとも、ドローンによって日量数十万バレル規模の輸送を遮断できることを示している。7月25日時点でも、同港は稼働停止が続いている。

ドローン攻撃がロシアの戦時経済に影響
ウクライナの攻撃範囲は、ロシアの広大な領土へと拡大している。長距離ドローンの生産能力の増強は、キーウに新たな戦略的選択肢をもたらしている。一方、ロシア国防省はほぼ毎回、ドローンを迎撃したと発表しているが、その主張は独立した検証が困難である。ただし、ドローンが標的上空に到達している事実を示す側面もある。
仮にロシア側の説明が概ね正しいとしても、作戦上の損失を回避することはできない。防空部隊が大半を迎撃したとしても、製油所火災、空港の運用制限、住民の避難、経済活動の停滞、防空資源の消耗、設備やインフラの損傷といった影響は避けられない。
ウクライナにとって、すべてのドローンを目標に到達させる必要はない。大規模な攻撃は、ロシアに対しレーダー稼働や緊急対応部隊の動員、領空閉鎖を強いるとともに、防空資源の再配置を余儀なくさせる。攻撃対象がモスクワや重要インフラに及べば、防空への負担はさらに増大する。現在は、これまで安全と見なされていた遠隔地の施設までもが、重大なリスクに直面し始めている。
ウクライナのドローン攻撃は、すでにロシアの戦時経済の中枢に影響を及ぼしている。ノヴォロシースクの埠頭停止や物流拠点への攻撃は、戦場の圧力が軍事施設にとどまらず、エネルギー輸出や大規模物流網にまで波及していることを示している。
継続的な深部攻撃は、ロシア経済に連鎖的な影響を与えている。ロシア中央銀行は7月24日、政策金利を14%に引き下げたが、エネルギー施設への攻撃による燃料供給の逼迫が価格上昇を招き、それが他の財やサービスにも波及している。結果として家計のインフレ期待が押し上げられ、2026年7月時点で年間インフレ率の見通しは6%から7%へと上方修正された。
ウクライナのドローン部隊、戦局を左右する戦力へ
7月21日、ブロウディ司令官はインタビューで、「ロシアの欧州地域において、ウクライナのドローンが到達できない場所はもはや存在しない。我々の目的は、侵略国の国民に継続的な心理的圧力を与え、戦争が自らに及んでいると認識させることにある」と述べた。
さらに、「クリミアでは燃料供給が極めて困難な状況にある。補給路を遮断することで敵の軍事機構を機能不全に陥らせている。しかもこれは、兵士の犠牲を伴わずに達成された」と強調した。
ウクライナのドローン部隊は、前線と後方の軍事・経済拠点に同時に打撃を加える能力を備えつつあり、戦局を左右し得る統合的打撃戦力へと進化している。
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