重慶鋼鉄経営陣が自社株買い増し 中国鉄鋼業界に迫る「冬の時代」

2026/07/02
更新: 2026/07/02

中国中西部の大手鉄鋼企業の一つ、重慶鋼鉄股份有限公司は6月28日、会長を含む経営幹部7人が自社のA株を買い増すと発表した。市場の信頼回復を狙った措置だが、専門家からは「焼け石に水」にすぎず、同社の巨額赤字の流れを変えるのは難しいとの見方が出ている。中国の鉄鋼業界全体が「冬の時代」に入り、中国経済の基調も悪化するなか、中国共産党(中共)政権の産業政策の影響が表面化しているとの指摘もある。

株価1元台に低迷 経営陣が買い支えへ

重慶鋼鉄は6月28日夜、今後の成長性と企業価値を評価したとして、王虎祥会長を含む経営幹部7人が、6月30日から6か月以内に自己資金または自ら調達した資金で、同社A株を買い増すと発表した。投資家の信頼を高める狙いがある。

買い増し額は合計で150万元以上、240万元以下。取得価格の上限や下限は設けない。A株は、中国本土市場で取引される人民元建て株式を指す。

中国本土の財経メディアによると、重慶鋼鉄は2022年以降、赤字が続いている。2025年までの4年間で、親会社株主に帰属する当期純利益は累計84億元超の赤字となった。2025年だけでも27億2200万元の純損失を計上し、今年第1四半期も1億9900万元の赤字となった。

さらに注目されるのは、重慶鋼鉄の株価が2022年3月以降、4年以上にわたり1元台に低迷する「1元株」の状態にあることだ。6月26日の終値は1.14元で、同社の過去の水準からみても低位にとどまっている。時価総額は109億5500万元だった。5月初めから6月末までに、株価は約20%下落している。

メディア関係者のMike Li氏は大紀元に対し、「1.14元という株価は、大きく値崩れした水準だ。昨年27億元もの巨額赤字を出した業績を、ある程度反映している」と語った。

同氏は、こうした状況で経営幹部7人が自社株を買い増しても「焼け石に水」であり、同社の事業低迷を根本的に解決することはできないとみている。

重慶鋼鉄、経営安定化へ10億元を調達

経営陣による買い増し発表の数日前、重慶鋼鉄は約10億元の第三者割当増資を完了していた。調達資金は運転資金の補充と銀行借入の返済に充てられる。

6月24日の発表によると、重慶鋼鉄は実質的な支配者である中国宝武鋼鉄集団有限公司の傘下企業、華宝投資に対して株式を発行し、約10億元を調達した。資金はすべて運転資金の補充と銀行借入の返済に使われる。

増資公告の時点で、中国宝武とその共同保有者は重慶鋼鉄株の計29.51%を保有していた。増資完了後、この比率は35.07%に上昇する。

増資計画の公表前、重慶鋼鉄は、鉄鋼業界が低迷局面にあるなか、経営の安定性を高めるには比較的十分な資金が必要だとしていた。

2025年の厳しい業績について、同社は、中国の鉄鋼市場では需給構造の調整が進み、不安定な状況が続いていると説明した。とりわけ不動産向け建材市場の需要は「特に低迷している」としている。

複数の鉄鋼企業が「1元株」に転落 業界全体が冬の時代へ

今年に入り、中国A株市場の鉄鋼セクターでは、多くの鉄鋼企業の株価が大きく下落している。6月26日時点で、武進不銹、沙鋼股份、馬鋼股份の株価は年初来で40%超下落した。首鋼股份、広大特材、華菱鋼鉄も30%超下げている。

重慶鋼鉄のほかにも、1元台に低迷する鉄鋼会社は7社ある。6月26日の終値で見ると、山東鋼鉄は1.23元、酒鋼宏興は1.41元、凌鋼股份は1.64元、安陽鋼鉄は1.65元、鞍鋼股份は1.86元、河鋼股份は1.96元、中南股份は1.96元だった。

Mike Li氏は、これら8社のうち鞍鋼股份は中央企業だが、その他は地方の国有企業だと指摘した。中央企業とは、中国国務院またはその権限を受けた中央機関が直接管理する国有企業を指す。

同氏はさらに、「中共が株式市場を設けた当初の目的は、国有企業を救済することだった」と述べた。

1990年代初め、当時の朱鎔基首相は国有企業の「3年での赤字脱却・経営難解消」を掲げたが、多くの国有企業は破綻寸前、またはすでに破綻状態にあった。大規模な失業が発生し、深刻な社会不安を招いていたため、中共政権はこれらの企業を上場させ、外部資金を取り込むことで延命させたという。

しかし近年、中国本土では不動産市場とインフラ投資が縮小し、需要が大きく減少している。その結果、鉄鋼価格は急落する一方、鉄鉱石などの原材料コストは高止まりし、鉄鋼メーカーの利益は両面から圧迫されている。

同時に、中国の過剰生産による低価格鉄鋼の輸出は、各国から反ダンピング調査や貿易制限の対象となっている。さらに鉄鋼企業への税負担も重く、こうした要因が重なり、中国の鉄鋼企業は厳しい「冬の時代」に入っている。

自力再建を図る鉄鋼企業 中共ハイテク戦略という名の「賭け」

中共当局が資本市場で厳しい上場廃止規則を導入したことにより、A株の終値が一定期間連続して額面価格を下回った場合、企業は強制的に上場廃止となるリスクがある。額面価格は通常1元である。

株価下落と上場廃止への圧力が高まるなか、重慶鋼鉄と同様に、複数の「1元株」鉄鋼企業が相次いで経営幹部による株式買い増し計画や、株主による資本注入計画を発表している。業績や財務体質を立て直し、苦境からの脱却を図る動きだ。

一方、Mike Li氏は、今年上半期のA株市場ではハイテク株の相場が活況を呈し、創業板指数がたびたび過去最高値を更新し、累計上昇率が35%を超えたことに注目している。

個別銘柄で見ると、上半期のA株市場では362銘柄が株価を2倍以上に伸ばした一方で、全体の約7割の銘柄は下落した。うち100銘柄は50%超下落し、1134銘柄は30%超下げた。

同氏は「市場の上昇が一部銘柄に偏る、明らかな二極化が起きている」と指摘した。

金融市場でいう「二八現象」とは、およそ2割の少数の優良株だけが上昇を続け、残りの約8割の銘柄は下落傾向にある状態を指す。経済学で広く知られる「二八の法則」にも通じる考え方である。

Mike Li氏は、ハイテク株が上昇し、その他の銘柄が下落している現象について、「中共政権が進める科学技術重視の戦略を反映している」と分析する。つまり、あらゆる代償を払ってでも産業高度化を続け、「中所得国の罠」から抜け出そうとしているということだ。

同氏によると、中共は米欧諸国と中核技術で競争するため、ハイテク分野を重視する一方、鉄鋼などの伝統産業は後回しにしている。

しかし同氏は、「低迷する株価と巨額の赤字は、現在の中国経済の基調が悪化していることを示している」と指摘する。鉄鋼企業の自力再建の動きだけでは、経済全体の悪化傾向や、中共が進める科学技術重視の戦略に抗することは難しいとの見方を示した。

程雯