2024年度における「コンプライアンス違反」による企業倒産が、過去最多の317件に達した。これは前年の234件から約1.3倍増加しており、初めて300件を超える結果となった。東京商工リサーチ(TSR)の調査によれば、倒産全体に占める割合も3%を超え、企業の法令遵守や社会的責任が改めて問われる状況となっている。
コロナ禍後の急増
コロナ禍以前の2017年度には211件だった「コンプライアンス違反」倒産は、コロナ禍中の資金繰り支援策によって一時的に低水準で推移していた。2020年度には93件、2021年度は107件、2022年度も116件と100件前後で安定していた。しかし、コロナ禍が収束し支援策が終了・縮小された2023年度には234件と急増。この流れを引き継ぎ、2024年度にはさらに増加し317件に達した。
主な違反内容
2024年度の「コンプライアンス違反」倒産の内訳を見ると、「税金関連」が最多で172件(前年比38.7%増)を占めた。公租公課の滞納に対する徴収強化が背景にあるとされる。また、「不正受給」が42件(同75.0%増)、「粉飾決算」が21件(同10.5%増)と、それぞれ大幅な増加が見られた。これらの違反行為は、企業経営の透明性や倫理観が問われる事例として注目されている。
業種別傾向
業種別では、「サービス業」が最も多く、全体の約36%を占めた。「建設業」や「製造業」でも増加傾向が見られ、中堅企業への影響も広がっている。一方で、「運輸業」や「小売業」など一部の業種では減少傾向が確認されている。
負債規模と影響
負債総額は3,738億200万円(同11.2%増)に達した。特に負債額10億円以上の倒産は44件(前年38件)と増加しており、1億円以上5億円未満115件(同81件)と中堅企業への影響拡大が顕著だ。これにより取引先や従業員への波及効果も懸念される。
今後の見通し
専門家は、2025年度以降も「コンプライアンス違反」による倒産が増加する可能性を指摘している。特に経営難を抱える中小企業では、法令遵守や内部統制の強化が急務となる。また、社会的な信用失墜が経営破綻を招くリスクも高まっており、企業側には一層厳格な対応が求められる。
コンプライアンスとは
コンプライアンスとは、企業や個人が法律や規則を守るだけでなく、社会的規範や倫理を遵守することを指す概念である。直訳すると「法令遵守」を意味するが、現在ではその範囲が拡大し、企業活動におけるモラルや社会通念も含む広義の意味で使われている。
コンプライアンスは特に企業経営において重要視されている。これは、不祥事や法令違反が発覚した場合、社会的信用を失い倒産に至るリスクがあるためである。具体例としては、不正会計、個人情報漏洩、産地偽装などが挙げられる。これらの問題を防ぐためには、法令遵守だけでなく、従業員全体でモラルある行動を取る体制を整える必要がある。
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