陳情民や人権活動家の子が学校へ行けない 「子供の教育を受ける権利」を奪う中国

2023/09/14
更新: 2023/09/14

中国では9月から新学年の新学期が始まった。しかし、人権活動家や当局に対する異見者、さらには地方政府の不正を中央に訴える陳情民を親に持つ子供たちが、まるで「親に連座させられるように」当局から不当な扱いを受けている。そうした子供たちは、役所での戸籍関係の申請が認められず、そのため義務教育の学校へ行けないなどの不条理に直面している。

これは「子供の教育を受ける権利」を当局が奪うことにより、弾圧するターゲット(子供の親)に対して、意図的に圧力をかけるものである。このような方法は、中国各地で横行している。

米国政府系メディア、ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に応じた、米NPO「人道中国(Humanitarian China)」の理事である羅勝春氏は、「そのような方法は非人道的だ」と批判し、国際社会の支援を呼びかけている。

玄関の前に寝転ぶ「精神的虐待」

中国で「国家政権転覆罪」に問われて服役し、出所した人権派弁護士・王全璋氏も今、子供の通学問題に悩まされている。

北京に在住する王氏一家は、現在も当局の監視下に置かれている。王氏の身辺には、常に10~20人の当局者が監視したり尾行したりしている。さらには、居住するアパートの玄関先に公安の要員が常時寝転んでいるなど、もはや嫌がらせを超えた「精神的虐待」と言ってもよい。

王氏一家の3人は、今年4月からの数カ月間で、現地当局による嫌がらせのため十数回も引っ越しを余儀なくされてきた。王氏の息子(10歳)は新たに引っ越した先の近所の学校に通えず、以前に通っていた学校まで、毎日、往復4時間かけての送り迎えを余儀なくされている。

(王全璋氏の妻・李文足さんのツイッター)

王全璋氏の件は、いくつかのメディアが取り上げているが、王氏のほか外部には知られていない同様のケースは中国の至る所にある。そのうちの2例だけ、以下に取り上げて紹介するが、いずれも「氷山の一角」に過ぎない。2例とは、我が子を必死で守りながら当局と闘う、勇敢な母親の事例である。

学校へ行く子供を阻止する「十数人の監視員」

新学期初日の9月1日朝、重慶市の陳情民である鄒群(すうぐん)さんが息子(9歳)を学校に連れて行こうとしたところ、家の前の通路で待ち伏せしていた十数人の監視要員によって阻止された。

9月1日朝、重慶市の陳情民・鄒群さんの息子(9歳)が小学校へ行こうとするのを阻止する監視要員。(動画よりスクリーンショット/大紀元合成)
 

「あんたたち、どこの組織なの?」「なぜ子供を学校に行かせないの?」と黒シャツの監視要員に問い詰めたが、何の答えもない。鄒さんは警察に通報したが、警察は対応しなかった。

鄒さんの支援者もその場に駆け付けて、監視要員へ説得したが、いずれも失敗に終わったという。鄒さんは結局、息子を小学校に送り届けることができなかった。なお今の中国では、子供に一人で通学させることは「行方不明」になる危険性があるため、親としては、なおさら不可能である。

「なぜこの人たちは、警察をも恐れないのか。いったい誰が、これほどの権力(警察以上の権力)を彼らに与えたのか?」と鄒さんは疑問を呈した。

鄒さんは、息子を育てながら、地元政府による土地の強制徴用をめぐって中央(北京)へ陳情しているシングルマザーだ。鄒さんは先月、問題解決のため北京へ陳情しに行ったが、そこで待ち構えていた(重慶の)地元警察によって連れ戻された。それ以来「自宅軟禁」され、日用品を買うための外出すら許されなかったという。

現地市民の何さんは8日、エポックタイムズの取材に対して「その後、1週間にわたる『闘い』の後も、鄒さんの息子は依然として学校へ行けていない。中国は今、腐りきっている」と憤慨した。

同じく現地市民の王さんも、「鄒さんのことは、地元の政府も警察もみんな知っている。しかし、見て見ぬふりをしているんだ。政府は、身元不明な男たちを雇って『法を執行(嫌がらせなど)』させている。そこで何か事故があっても、責任追及はできない」と嘆いた。

陳情民の子供を「戸籍登録しない」政府

河南省鄭州市の陳情民である劉紅霞さんの場合、子供たちの「戸籍問題」のことで当局から嫌がらせを受けている。そのため子供たちは、就学する年齢になっても学校へ行けないでいる。

劉さんには8歳と3歳の娘がいる。現在の「夫」とは、すでに長年別居状態で婚姻届も提出していない。前の夫と暮らしていた家屋が強制立ち退きに遭ったが、政府からの「安置(補償、この場合は代替住宅とみられる)」を受けていないため、戸籍は立ち退き以

上の娘が学校へ行く年齢になり、劉さんは戸籍問題を解決しようと現地の公安局(中国人の戸籍は公安部門が扱う)に手続きを申請した。しかし、嫌がらせで対応してもらえず、子供たちは現地の学校に行けないのだという。

先月(8月)まる1カ月、劉さんは2人の娘を連れて現地の関係部門前で看板を掲げて抗議を行ってきた。しかし、その効果はなく、現地政府は未だに戸籍の手続きに応じていないという。

8月7日、劉紅霞さんは娘2人連れて河南省公安庁の庁舎前で「学校へ行きたい(我要上学)」「戸籍がほしい(我要戶口)」と書かれたプラカードを掲げた。

幼い子供にこのようなプラカードを持たせ、人目につく場所に立たせることは、親として断腸の思いであるに違いない。しかし、こうせざるを得ないほど、子供の正当な権利が奪われる不条理が今の中国には普遍的に存在している。

その実態をリアルに伝えるため、本記事でも、子供の写真をそのまま添付する。言うまでもないが、この子供たちが、中国当局から不当な扱いを受ける理由は全くない。

写真(左)は劉紅霞さんの戸籍問題の申請書類。写真(右)は今年8月7日、現地の公安庁前で抗議のプラカードを掲げる劉さんの子供たち。

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。