「中国進出を後悔している」。20数年前から中国広東省東莞市で、会社を経営する台湾人実業家の廖金章さんは、米政府系放送局のボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材で「後悔」を3回も口にした。
「共産党の体制がいかに人民を傷つけているかが、身に染みて分かった」という。
廖さんは今年4月、会社をたたみ台湾に戻った。中国撤退を意識し始めたのは、昨年、中国全土で相次いで起きた電力制限や停電がきっかけだという。
今年3月、上海でロックダウン(都市閉鎖)が実施された時、ついに決心がついた。「中国政府はもう救いようがない」と廖さんは嘆いた。
「景気減速がすでに深刻だったのに、上海はロックダウンに踏み切った。港では多くの船が立ち往生し、経済活動は一瞬にして止まってしまった。生活できなくなった人が大勢いた」
1980年代、海外投資に門戸を開いた中国に台湾人が殺到した。
「当時、台湾で労働者1人を雇う人件費で、中国では50人も雇えた。ライバル社がどんどん中国に進出するなか、生き残るため、中国に行くしかなかった」と振り返る。
95年に中国進出を果たした。
広東省東莞市で工場を設立し、靴やサッカーボール、化学製品などの生産を行った。当時の中国はまだ立ち遅れていたため、台湾企業家は優遇をうけていたという。
しかし、近年では状況が一変した。台湾企業の中国離れが進んだ。生産コストの高騰や地政学的な緊張、パンデミック下の厳格な感染対策などが、この「中国離れ」の波を加速させている。
台湾の対中国投資は2010年では全体の84%だったが、20年には33%にまで低下した。
廖さんの会社も5、6年前から経営が厳しくなったという。「中国はいつロックダウンや停電するかが分からない。そんな生産地に発注しようとする人などいない」と廖さんは話す。
7月の実質GDPは前年同期比0.4%増と国家統計局は発表したが、「むしろ20%あるいは30%のマイナス成長ではないか」と不信感をあらわにした。
中国経済は今後、破綻の道を辿ると廖さんは言う。「ソフトランディングするか、ハードランディングするかとの議論はあるが、私に言わせれば着陸する見込みはなく、墜落するしかない」
現在、知り合いの台湾人経営者で中国にとどまっている人は、当初の2割しかないという。
廖さんは「共産党が考えているのは、政権を生き延びさせることのみだ。国の発展や国民の幸福など彼らにとって何の価値もない」と批判した。
「共産党は国民のために何かをしようとする気持ちがひとかけらもない」「共産党の言っていることの99.9%は嘘だ」と切り捨てた。
「共産党の嘘を暴くには真実を伝えれば良い」と考えた廖さんは、中国を離れる数年前から中国のSNS上で、国外の情報を積極的に投稿するようになった。アカウントを何回も削除され、治安当局に呼び出され手厳しく注意されたことが4度もあるという。
黙っていればそこそこの生活はできるが、「共産党が国民をいじめ、弾圧しているのがどうしても我慢ならない」と廖さんは言う。今、ユーチューブやツイッターなどを通じて、共産党の嘘を暴き、自身の考えを伝えている。
批判や脅迫を受けることもあるが、「この人生も残りわずかだ。そろそろ有意義なことをしなければならない。この(台湾の)土地を子どもや孫に残したい」と廖さんは話す。
(翻訳編集・李凌)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。