内戦で荒廃したシリア南西部ハジャルアスワドで、香港の映画俳優ジャッキー・チェン氏(67)がプロデュースする中国政府のプロパガンダ映画の撮影が今月中旬から始まった。
『ホーム・オペレーション』と題する同作品は、2015年に内戦下のイエメンで中国人を脱出させた中国政府の作戦を讃える内容となっている。李肇星元外相が制作の顧問を務める。
内戦の続くイエメンが危険なため、シリアの首都ダマスカス近郊のハジャルアスワドが撮影場所に選ばれた。
作品は中国とアラブ首長国連邦(UAE)の合作。弾丸の雨の中、作戦を成し遂げた中国共産党の外交官を称賛する同映画は、プロパガンダ色が濃く、中国大使も撮影開始に立ち会った。
ジャッキー・チェン氏が、シリアのアサド大統領に資金援助するためにハジャルアスワドをロケ地にしたと批判されている。撮影のため、シリア政府にいくら支払ったかは不明だという。
シリアの活動家であるアブドゥルカフィ・アルハムド氏は、「なぜ撮影することができるのか。彼らが撮影しているこの瓦礫の下には、まだ多くの遺体が残っているのだ」と疑問を呈した。
シリア人ジャーナリストのFared al-Mahool氏は、「中国企業とジャッキー・チェンは金のことしか考えておらず、家や都市、すべてを失ったシリアの人々を尊敬していない」と批判した。
近年、ジャッキー・チェン氏の親中ぶりが目立っている。
12年、台湾でのイベント出演の際、尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題について触れ、「歴史的にみても、中国のものだ」と中国政府の見解通りの発言を繰り返した。
中国政府が香港の統制を強める目的で2020年6月に施行した「香港国家安全維持法」を支持すると表明した。
21年、中国共産党の中央会議に出席した際、「本当に偉大な共産党に入党したい」と発言し、物議を醸した。
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