中国では、感染症の著名研究者である張文宏氏が7月下旬、新型コロナウイルス(中共ウイルス)の感染防止策として厳しい都市封鎖措置などを実施するのではなく、ウイルスとの「共存」を模索すべきだと主張したことは波紋を広げている。元政府高官らが官製メディアで張氏を非難した一方で、同氏の支持者はネット上で「張文宏氏、引き続き声を上げてください」と声援した。
上海市にある復旦大学付属華山医院の感染科主任を務める張文宏氏は7月29日、SNSの微博(ウェイボー)に投稿し、「世界の大多数のウイルス学者は(2019コロナウイルス感染症、COVID-19)は常在ウイルスになると認識している。このため、世界各国はこのウイルスとの共存を学ばなければならない」とし、「われわれが以前経験したことは最も困難なことではない。さらに困難なことは、ウイルスと長期的に共存する知恵を必要とすることだ」と書き込んだ。
張氏の主張は直ちに批判された。元衛生相の高強氏は今月上旬、共産党機関紙・人民日報に評論記事を掲載し、張氏の名指しは避けたものの、批判を行った。記事は、米英など各国が「ウイルスとの共存」を図っていることで、国際社会の防疫情勢は深刻な悪影響を受けたとし、「われわれは絶対に繰り返すべきではない」とした。
高強氏は、中国当局に対して引き続き、厳格な監視・隔離措置や都市封鎖を実施し、国民のワクチン接種を拡大する必要があると呼びかけ、専門家らに対して「ウイルスとの共存」の考え方を打ち消すべきだと唱えた。
また、北京大学の張頣武教授は、官製メディアの環球日報に、「全面的に防疫対策を続けよ、西側諸国の連環の計にはまってはいけない」との記事を寄稿した。同教授は記事の中で、共存論は「(学校の)劣等生のやり方」で、他の狙いがあるとした。
張教授は「一部の欧米の世論は、中国の防疫対策が目覚ましい成果を上げ、感染者がゼロになり、社会活動が正常化し、経済も急速に回復したことに対して、非常に焦っている。だから、中国国内の一部の地域で感染が再び拡大した時、彼らはすぐに『ウイルスとの共存』を提案した。これは、デルタ変異株が中国で引き続き広がり、制御不能の大流行が起きることを企んでいるからだ」とした。
高強氏と張頣武氏の記事が公開された後、一部の国民はネット上で、張文宏氏を「西側利益集団の代弁者」「米国が飼っている犬」などと中傷した。また、一部のネットユーザーは、官製メディアが高氏らの評論記事を掲載したことは、中国当局が張文宏氏を封じ込めるシグナルだと懸念した。
しかし、ネット上で張文宏氏を支持する人も多くいる。ネットメディア「氷川思想庫」の特別研究員である張明揚氏は、中国医学界の代表格である張文宏氏が今回痛烈で「専門性の欠いた批判」を受けたことによって、ウイルスとの共存を支持する医師や報道関係者は悲観的な気持ちになったと示した。
張明揚氏は、張文宏氏の主張について異議がある場合、医学界の内部で議論すべきで、「イデオロギー的な言い方で攻撃すべきではない」と指摘した。「議論の余地がある専門的な話を政治化しないでほしい」と同氏は強調した。
また、中国の著名な血管外科医師、張強氏は微博に、「(ウイルスと)共存するには理性、科学知識、勇気と知恵が必要だ。人類はこれから長く、ウイルス、噂、『愚かさ』、疫病と共存せざるを得ないだろう」と書き込み、張文宏氏とのツーショット写真をつけて支持を示した。
ネットユーザーの間では、当局が感染症研究の第一人者である張文宏氏の意見を封殺することは、中国にとって「大きな不幸」だと不安視した。
いっぽう、張氏への攻撃はエスカレートしている。同氏の博士論文が他者の記述を剽窃したとの通報があり、出身大学の上海復旦大学は15日、調査を表明した。
(翻訳編集・張哲)
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